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子ども服をまとめて送るだけ!増加する働く母向けビジネス

藤村美里TVディレクター、ライター
出品数は約9000、取引数は約5000 在庫管理しなくて良いのも助かるところだ

“働く母”“ワーママ”という見出しの記事を見ない日はないというほど、大きなマーケティング対象となった、共働きの母たち。

お金よりも貴重なものは時間、時短という言葉に弱く、コストパフォーマンスが良いものには喜んで対価を支払う…という彼女達をターゲットにした新しいビジネスは増える一方だ。

そのひとつ、子ども服のリサイクルサイトとして、2014年にスタートしたキャリーオン

すぐに着られなくなる子ども服、でも時間は掛けられない。そんな現状に注目し、忙しい母達が求めていたサービスを展開している。

段ボールに詰めて送るだけ。シミ抜きやほつれも代行業務に

仕事をしている母親たちは、とにかく時間がない。着られなくなった子ども服、いつかオークションやフリマで売ろうと思いつつ、手がつけられずに放置されたまま…という人も少なくないのではないだろうか。

乳幼児のサイズが圧倒的に多いが、140センチくらいまでは揃えられている
乳幼児のサイズが圧倒的に多いが、140センチくらいまでは揃えられている

日々の生活で精一杯。「余裕がある日にやろう。」と思ったまま、その余裕がある日は半年以上なかったりする。

自身も5歳の男の子がいるキャリーオン代表の長森真希さんは、この働く母たちのニーズを分かっていた。

「キャリーオンの事業をスタートしてから特に感じたのは、古くなった子ども服を送るだけ…という手軽さが求められているということでした。当初は選択制にしていたのですが、自分で撮影してアップするよりも、すべてお任せという代行業務を選択する人が圧倒的に多かった。今は、どの会員さんも“段ボールに詰めて着払いで送るだけ”というシステムに一本化しました。」

キャリーオンでは、送られてきた子ども服の写真撮影からサイトへのアップまで全てを代行するサービスを展開している。ほつれなども出来るだけ直すというのだから、本当にありがたい。残念ながら、子どもの古着に対してそこまでするパワーは残っていないのだ。

また、『右胸のあたりに薄いシミあり』『手首によごれあり』などと、古着の状態が第三者のコメント付きで掲載されているのは、むしろ自分でアップするサイトよりも信用できると感じた。

対象は、高級ブランドからファストファッションブランドまで

ここまでお任せできるなら、大人用も是非やってもらいたいと思ってリクエストしてみたところ、それはちょっと難しいという。

「大人の洋服と大きく違うのは、どんなにお気に入りの服でも子どもは必ず着られなくなる日が来るということ。そして、デザインなども大人ほど流行に左右されないということもあって、子ども服の方がリサイクルしやすいというメリットがあります。(長森真希さん)」

また、多くの人が子どもに着せたいと思うブランド服やデザイン性のある服に限定している点も大きい。成長に伴い、数回で着れなくなることもあり、新品に近い状態で取引されているものもある。

その一方で、GAPやZARAなどの定番ブランドも取引されているので、敷居は決して高くない。こちらは保育園や幼稚園のお着替え用として購入できるのではないだろうか。働く母にとっては、かなり効率が良い方法だ。

エコを意識するソーシャルクローゼットという考え方

そして、働く母だけではなく、意識が高い母親たちが気にするのはエコであるという視点だろう。昔のように近所の人にあげる文化はなくても、まだ着られる服を捨てるのはもったいないと感じるものだ。どうせなら、必要としている人の手に渡ってほしい。

キャリーオンのサイトでは、販売した洋服の代金はポイントとなり、現金化することはできない。

だが、この方法ならば、古着を販売した分のポイントを予算として、子ども自らが好きな洋服を選び、購入することもできる。おこずかいを自分の裁量で使うのと同じ。自分の洋服を知らない誰かが着てくれていることを喜びつつ、新しい服が手に入るのも嬉しいだろう。

アプリもあり、手軽にアクセスできるというのは働く母向けビジネスの鉄則
アプリもあり、手軽にアクセスできるというのは働く母向けビジネスの鉄則

慶応大学を卒業後、北欧で外資系起業に就職。そこでの暮らしも今に繋がっているという長森さん。

「成熟してきた、これからの日本社会にマッチする仕組みなのではないでしょうか。キャリーオンが商標登録を持つ“ソーシャルクローゼット”という言葉、このメッセージも広めていきたい、そう思っています。」

家事代行やベビーシッターなど直接的なものだけではなく、間接的に働く母たちを助けるサービス。今までとは少し違う、かゆいところに手が届くような事業が求められている。

TVディレクター、ライター

早稲田大学卒業後、テレビ局入社。報道情報番組やドキュメンタリー番組でディレクターを務める。2008年に第一子出産後、児童虐待・保育問題・周産期医療・不妊医療などを母親の視点で報道。2013年より海外在住。海外育児や国際バカロレア教育についても、東京と海外を行き来しながら取材を続ける。テレビ番組や東洋経済オンラインなどの媒体で取材・執筆するほか、日経DUALにて「働くママ1000人インタビュー」などを連載中。働く母たちが集まる場「Workingmama party」「Women’s Lounge」 主宰。Global Moms Network コアメンバー。

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