第2子出産を遠ざける待機児童問題 第1子よりも高い壁の理由は
一昔前には存在しなかった”保活”という言葉もすっかり定着し、待機児童問題は深刻化してきている。政府や自治体が何もしていないわけではないのだが、それ以上に共働き夫婦が増え、保育園を必要とする子どもの数も増え続けている。
今年に入ってからは『保育園落ちた』という現状を訴えるブログが国会でも取り上げられ、多くのお母さんたちが声を上げる様子が報道された。以前は「一部の共働き夫婦の問題に過ぎない」と言われ、ニュースバリューは大きくないとされていたことも、社会の雰囲気が大きく変わったことで注目されるようになっている。
だが、それはつまり、大都市圏での待機児童問題が一向に改善しないということでもあるのだろう。
首都圏を中心に厳しさを増している2人目の”保活”
8年前、私が初めて”保活”をした時は、都内の激戦区でも今ほどではなかった。
育児休業明けの満1歳で認可保育園(認可園)に入るのは当時でも難しかったが、0歳児から認証保育園や小規模園に入れて”保育が欠ける状態”だとして申請すれば、認可園にも入園許可がもらえる可能性が高かった。
フルタイムでバリバリ働きたい人は0歳で小規模園に入れてから職場復帰、子どもは1歳から区立の認可園へ。一方、できるだけ子どもと長くいたい人は、きっちり満1歳まで育休を取って、1歳の時点では認証保育園からのスタート。少しずつ空きが出る3歳頃から、認可園に移るという流れが出来ていたように思う。
2人目も、むしろ上の子と同じ保育園に入れるように優先される自治体が多く、先輩ママたちからは「上の子が保育園にいるうちに授かった方がいい」というアドバイスを受けた。実際、娘が1歳で第一希望の区立認可保育園に移ることができた時、同じクラスの半分以上は3歳児〜5歳児クラスに上の子がいる園児だった。
2人目を出産したママたちによると「あの頃はまだ良かった。今は違う。」と口を揃えるのだが、今はどうなっているのか。
そんな中、こんな記事を見つけた。厳しさを増す”保活”が2人目の壁になっているという調査が出ている。
第二子が保育園に入れない場合、せっかく復帰した職場を離れることになるかもしれない。気合いを入れて育休から復帰し、なんとか両立しているという人たちは、あまりにも厳しい選択だ。ただでさえ、職場に「また育休を取るの?」と言われることが心苦しくて、簡単には2人目に踏み切れないという状況なのに、そこに”保活”という問題が追い打ちを掛けている。
待機児童数は高止まり 第2子が優先されない区も
首都圏では最近、子どもたちが同じ保育園を入れなかったという人の話を聞くことが増えた。
自転車やバス、時には電車も使って、朝早くから2人の子どもを別々の保育園に送り届けるという。雨の日も風の日も、会社に行くためには、始業時間に間に合うように子ども2人を送っていくしかないのだ。もちろん、これは母親だけの仕事ではないので、半分ずつにするなど夫婦で分担している人が多いのだが、それでも簡単なことではない。
また、以前は多くの自治体で見られた『第2子は優先的に上の子と同じ保育園に入れるシステム』が無くなる自治体も出ている。上の子が保育園にいても、ポイントが加算されることはない。その結果、兄弟が別々の保育園に通うケースが増えているというわけだ。しかも、2人の保育園が同じ駅にあるわけではない。同じ区内というだけで、歩いたら30分ほどかかるという人もいる…。
今年12月の職場復帰を目指して、認証保育園を探しているAさんは、深刻な現状を話してくれた。
「現在、3人目の保活中ですが、年々厳しくなってるのを肌で感じます。今回は、兄弟ポイントだけではボーダーの点数に達せず、加算を得るために預けようと思った認証保育園も満員のところばかり。来年4月に認可保育園に入れるために、加算がつく12月には認可外でもいいから保育園に入れて復職したいと思っています。でも、肝心の保育園が見つからなくて…区をまたいで探し回っているところです。子供がたくさんいて幸せなはずなのに、何の闘いをしているんでしょう…と考えてしまいます。品川区という都内では恵まれている区なのにこの状況なので、都内全域が厳しい状況なのでしょう。
4月に上の子たちと同じ保育園に入れないと、小学校と保育園2つで、朝から3箇所に送迎することになってしまいます。それはさすがに仕事にも支障が出そうで…。ママ友の中には、出産した直後から認可外にお金を払い続けて、入園枠を確保している人もいたり…ニュースで報じられている以上の闘いになっています。」
例え兄弟がいることで加点が付いても、今のような大激戦だと入園許可をもらえるボーダーの点数が上がるために、別々の保育園になることも少なくないという。
この問題は、10年前から言われている待機児童問題が一向に解決されないことに起因している。待機児童の数が高止まりしている今、自治体が新しい保育園をいくつか作った程度では簡単には追いつかない。
だが、出生率を上げるためには、この待機児童問題を避けては通れないのではないか。
自民党は「待機児童問題等緊急対策特命チーム」を作り、総理に提言の申し入れをしていたが、その内容はあくまでも一時的なもの。もっと予算を回して、本腰を入れた対策に乗り出す必要があるだろう。これだけ少子化だと騒がれていても、使われる予算は微々たるものなのだから。
子育て世代の政策が少しでも進むよう、当事者である私たちも声を上げていかなければならない。