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イベント成功の秘策はラウンドガール?

藤村幸代フリーライター
前田憲作K-1プロデューサーを囲む個性豊かな2016K-1ガールズの面々

K-1にとって必要不可欠な存在

2年連続でキャプテンを務める柳いろは(C)M-1 Sports Media
2年連続でキャプテンを務める柳いろは(C)M-1 Sports Media
足利尊氏の末裔、足利美弥は「武尊選手が好き」(C)M-1Sports Media
足利尊氏の末裔、足利美弥は「武尊選手が好き」(C)M-1Sports Media

格闘技イベント『K-1』のリングを彩るラウンドガールの新メンバー「2016K-1ガールズ」が18日、東京・新宿区のGSPメディアセンターで発表された。

「書類による一次審査を経て、11月下旬には約60名でオーディションを行いました。自信を持って打ち出せる、選りすぐりのメンバーです」

大会を運営するグッドルーザーの宮田充代表も太鼓判を押すように、2年連続選出となったキャプテンの柳いろは(24)、足利尊氏の末裔こと足利美弥(26)ら新メンバー6名は、会見でもビジュアルと個性を存分にアピールしていた。

「格闘技イベントで観たいのは試合だけ。ラウンドガールはいらない」

格闘技ファンのなかには、そんな声もある。だが、宮田代表は「K-1にとって彼女たちは必要不可欠な存在」と語る。

「K-1というイベントは、華やかなメジャー感を楽しめるエンターテインメントでもある。試合が素晴らしくても、演出がチープではイベントの満足度は下がります。その意味では、K-1ガールズ含めての“K-1の世界観”なのです」

多様なラウンドガール活用法

小柳歩は「大きなお尻がチャームポイントです」(C)M-1Sports Media
小柳歩は「大きなお尻がチャームポイントです」(C)M-1Sports Media
「K-1は選手全員が輝いている」と早瀬あや(C)M-1 Sports Media
「K-1は選手全員が輝いている」と早瀬あや(C)M-1 Sports Media

K-1のみならず、最近ではさまざまな格闘技団体・イベントが、ラウンドガールの選出や打ち出しに力を入れている。

今年9月、さいたまスーパーアリーナで開催された『UFC FIGHT NIGHT JAPAN 2015』では、読売ジャイアンツ、マイルズ・マイコラス投手の“美しすぎる妻”、ローレン・マイコラスさんがラウンドガールとして登場し、話題となった。

また、総合格闘技団体のパンクラスでは、現役女子プロレスラー・木村響子の娘、HANA(はな)さん、キックイベントを運営するREBELS(レベルス)では「2013日本レースクイーン大賞」グランプリ受賞の佐野真彩さんらをそれぞれ起用。老舗団体シュートボクシングでは高級ランジェリーブランドとコラボした、エレガントかつセクシーなコスチューム姿のラウンドガールが、ビッグマッチを彩った。

さらに、キック団体J-NETWORKでは“業界初のイメージガールユニット”として「JKG」を誕生させ、リングでファン参加の公開オーディションを行うなど、ラウンドガールの選出自体をイベント化している。

20年前のK-1ガールが語ったこと

話題の人を起用することで高い宣伝効果が見込める、彼女たちのファンが会場に足を運ぶことで、格闘技ファンの新規開拓も期待できるなど、ラウンドガールを起用する側の思惑はさまざまだろう。

だが、主催者がここまでラウンドガールに注力するようになったのは、じつは彼女たちが一番身近な「格闘技を観たことのない女の子」だと気づいたからではないか。ある女性の言葉をきっかけに、そう思った。

その女性とは、正木純子さん。 K-1ヘビー級全盛期にK-1ガールを経験した、いわばラウンドガールの大先輩だ。彼女に、ラウンドガールを経験してよかったことを尋ねたところ、「格闘技の面白さが1年かけて理解できたこと」との答えが返ってきた。

「始めた頃は興味も何もない状態だったので、K-1なるモノにこんなに大量のお客さんが来ることすら理解できなかった。開始当初は、退屈で1ラウンドの3分すら居眠りしていました。それが、年末になる頃には、ハイレグ水着で大股を広げて、リングサイドでガッツリ観るファンになっていました(笑)」

ハマりにハマった正木さんは2003年、ついにキックボクサーとしてプロデビュー。現在も理学療法士として勤めるかたわら、トライアスロンと並行して格闘技を続けている。

「華を添えればいい」では生き残れない

22歳の近藤みやびはダンス歴17年 (C)M-1 Sports Media
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「卜部兄弟を応援していきたい」と語る橘沙奈(C)M-1 Sports Media
「卜部兄弟を応援していきたい」と語る橘沙奈(C)M-1 Sports Media

格闘家となった正木さんは特例かもしれないが、格闘技初心者の彼女たちがリングを見つめる目はピュアで、それは格闘技に興味のない世の人々の目と重なる。

彼女たちが何を面白がり、どの選手に惹かれていったか。ラウンドガールの感性を定点観測することで、主催者は市場マーケティングができ、興行に反映させていくことができる。特に、格闘技界にとって女性ファン開拓は長年の課題だ。彼女たちの言動や感性は貴重なマーケティング資料として、今後ますます重要視されることだろう。

正木さんがK-1ガールを務めたのは、ピーター・アーツがGP連覇を果たした1995年のことだ。

「バブルの絶頂期だけにギャラはよかったけれど、昔はラウンドガールの地位が今より低かったと思います」(正木さん)

たしかに、前出の宮田代表も「彼女たちはお披露目となる来年3月4日の『K-1ワールドGP』に向け、厳しいトレーニングを積むことになる。闘って強くなる選手同様、舞台を1年経験することで磨かれていく、K-1ガールズの成長にも注目してほしい」と、期待を込めて語っていた。

華を添えればいいという考えでは、イベントもラウンドガールも生き残れない。今はそんな時代なのかもしれない。

フリーライター

神奈川ニュース映画協会、サムライTV、映像制作会社でディレクターを務め、2002年よりフリーライターに。格闘技、スポーツ、フィットネス、生き方などを取材・執筆。【著書】『ママダス!闘う娘と語る母』(情報センター出版局)、【構成】『私は居場所を見つけたい~ファイティングウーマン ライカの挑戦~』(新潮社)『負けないで!』(創出版)『走れ!助産師ボクサー』(NTT出版)『Smile!田中理恵自伝』『光と影 誰も知らない本当の武尊』『下剋上トレーナー』(以上、ベースボール・マガジン社)『へやトレ』(主婦の友社)他。横須賀市出身、三浦市在住。

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