日本のホームレス数は6,541人と厚生労働省が発表!ーホームレスの定義と調査手法の課題ー

ホームレス生活をする河川敷

厚生労働省が2015年4月28日に毎年1回おこなっている、ホームレス数を発表した。

それによれば、日本のホームレス数は、6,541名であるという。

調査の概要は以下の通りである。

全国各地の福祉事務所職員らが昼間、管内を巡回し、ホームレスか否かを”主観”で判断して計測している。

1.調査目的

ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成14 年法律第105 号。以下「法」という。)及びホームレスの自立の支援等に関する基本方針(平成25 年7月厚生労働省・国土交通省告示第1号)に基づき実施される施策の効果を継続的に把握することを目的とする。

2.調査客体

法第2条に規定する「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」

3.調査方法

市区町村による巡回での目視調査

4.調査実施時期

平成27年1月

5.調査事項

男女別ホームレス数

場所別ホームレス数(都市公園、河川、道路、駅舎、その他施設の5区分に分類)

出典:厚生労働省

この調査には多くの問題がある。

わたしは多くのホームレス生活をしている人々の相談を受けてきたが、ホームレスを目視で判断することは極めて難しい。

身なりが綺麗で、スーツを着ている人もいるし、ヒゲも剃れているし、車を持っている人もいる。

日雇い派遣などの短期間の仕事を一時的に得ることができる環境も広がった。

それらの給料でも利用できる宿泊先として、カプセルホテル、ネットカフェやマンガ喫茶、ビデオボックスなどが全国各地に普及している。

その中で、シャワーも浴びられるし、ヒゲを剃ることもできる。

要するに、もはやホームレスであることに誰も気づかないし、見分けなどつきにくい。

'''目視ではホームレス数など把握できない。

'''

厚生労働省が調査を始めた当時(2003年:ホームレス数 25,296人)は、ホームレスへの支援が不足していた。

そのため、公園などで生活していたホームレスは見た目で明らかに支援の要否が判断できた。

身なりが不衛生で、ヒゲも伸び放題で、何日も入浴していない、段ボールを敷いて寝ており、衣服や靴はボロボロであるなど、発見しやすかった。

しかし、そのようなホームレスは現在では少数派であるといえる。

調査手法やアプローチ方法を変えなければ、調査自体の意味をなさなくなってきている。

一応、調査によれば、ホームレス数が最も多かったのは、大阪府1,657 人であり、次いで多かったのは東京都1,498 人、神奈川県1,204 人であったそうだ。

各都道府県や政令指定都市、中核市などのホームレス数も掲載しているので、厚生労働省のホームページをご確認いただきたい。

全国で6,541人というホームレス数をどう思うだろうか。

「そんなに多いの?」「そんなに少ないの?」と議論がありそうだ。

わたしの感想は、「そんな少ないわけないだろ!」のひとことである。

ここで大事なのは、日本のホームレスの定義である。何をもってホームレスというのか。

ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法では、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」 と位置付けている。

要するに、外で寝起きをしている人々である。

いまだに、先ほど書いた旧来のホームレスのイメージを持ちながら、福祉事務所ではホームレスの人数を計測している。

ここには、ネットカフェで暮らす人々、友人宅や知人宅を転々とする人々などの不安定居住者は含まれない。

また、原則として昼間に調査を実施しているため、夜間に移動しながらホームレス生活をしている者は発見されない。

わたしは夜間、弁護士や司法書士らとともに、主要な駅を巡回したり、河川敷を巡回して声掛けしている。

そうすると、簡単に調査数を超える人々が寝起きしている事実が明らかになる。

実はこのホームレスの定義、調査手法に問題があるというのは、支援団体のあいだでは常識になっている。

ヨーロッパなど海外では、日本のように、いいかげんなホームレスの定義や調査手法での把握をしない。

例えば、イギリスでは、ホームレスの定義を以下のようにしている。

1 占有することができる住居を持っていない状態にある世帯の一員

2 家があってもそこに立ち入れない場合、そこが住むことが許されない車両、船である場合

3 そこが継続的に占有する理由をもっていない場合

4 28日以内にホームレスになる可能性がある場合

これらの視点から調査をしてみると、家賃滞納をしている者やネットカフェ生活をしている者、車上生活者などを幅広く含んで、調査対象や支援対象としていることが理解できる。

そうしなければ、調査をしても予防対策を講じることができないからだ。

日本のホームレス概数調査は何をしたいのか、もはや分からなくなってきている。

調査そのものの意味を失っていると言わざるを得ない。

このような労力があるならば、現在のホームレス、生活困窮者がどこに居住しているのか、実態に迫る調査こそしてほしいものである。

はっきりと断言できるのは、このような厚生労働省のホームレス調査で浮かび上がる数字は極々一部であるということ。

イギリスの定義に照らせば、膨大な人々が住居を失い、ホームレスとなっていることだろう。

まさに”膨大”といえる。

今後、ホームレスの定義を変えることも必要である。

日本の貧困と格差は広がり続けており、家を失うリスクは身近に迫っている。

これまでのホームレス政策から、多くの人を含む次代のホームレス政策を構想し、実効性ある政策を打ち出すためにも、調査を丁寧に実施してほしい。

現在の調査では、住まいの貧困やホームレスの実像など何も浮かび上がってこないといえる。

そろそろ時代遅れの調査手法から脱却を図り、真剣に取り組んでほしいものだ。