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BLACK CATSから継承するDNA、青野美沙稀 2016年に舞い降りた進化するロカビリー・ガール

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
青野美沙稀

ロカビリー・サウンドを、“2016年のいまの視点”で表現

モデルとして活躍している青野美沙稀が、11月23日に初の全国流通ミニ・アルバム『1959 ~Magical Rockabilly Night~』をリリースした。日本を代表するロカビリー・バンド BLACK CATS、MAGICのドラマー、久米浩司のDNAを受け継ぐロカビリー・シンガーだ。デビュー作では布袋寅泰の「バンビーナ」、レベッカの「フレンズ」をキュートな歌声でカバーしていることにも注目したい。布袋ソングを女性がカバーすると、また角度の違うポップな魅力を感じられるからおもしろい。前日に原宿のライブハウスで行われたリリース・パーティーも超満員の熱気のなか、ソールドアウトしていたことを付け加えておこう。

青野美沙稀『1959 ~Magical Rockabilly Night~』
青野美沙稀『1959 ~Magical Rockabilly Night~』

〜青野美沙稀『1959 ~Magical Rockabilly Night~』〜

シャッフル・ビートなロカビリー・サウンドを、“2016年のいまの視点”で表現した結果、フレッシュに弾けるきらびやかな作品集『1959 ~Magical Rockabilly Night~』が誕生した。

本作は全6曲を通じて、1959年を舞台にしたコンセプチュアルな物語が展開されていく。路地裏で誘われた1959年、ロカビリーの時代へのタイムトリップ(1曲目)、チャーミングな“バンビーナ”に恋が芽生え(2曲目)、デートの準備をして(3曲目)、ドライブ・デートで描かれる二人の淡い距離感と恋心(4曲目)、恋を経験して初めて知る切なさ(5曲目)、両親の恋にも想いを馳せながら、永遠の愛に想いを馳せる(6曲目)。

青野美沙稀による、ネオンカラーのような輝きを放つ甘いカクテルのような歌声の魅力と、胸踊る骨太な最新型ロカビリー・サウンドの融合。50’sから現代、時間軸を行き交う、魔法めいたポップセンスに注目してほしい。

〜青野美沙稀がアイデンティティにロカビリーを選択した理由〜

流行は巡る。50年代〜80年代〜10年代、ファッションも音楽も30年周期で世の中を動かすムーヴメントは螺旋階段を登るようにアップデートされていく。モデルとして活躍していた青野美沙稀が音楽活動をはじめたきっかけは父の存在だった。80年代を駆け抜けた伝説のロカビリー・バンド、BLACK CATSのドラマー・久米浩司のDNAを受け継ぐ彼女は、デビュー作品のアイデンティティにロカビリーを選択した。なぜ“いま”ロカビリーなのかを聞いてみた。

「ロカビリーは、3歳のころから家の中で流れていたので自然なカルチャーでした。部屋が爆音ですごかった記憶があります(笑)。そんなこともあり、聴いていると落ち着くぐらい好きです。音楽が身近な環境だったので、小さい頃からシンガーを夢見ていました。ロカビリー以外では、宇多田ヒカルさんのデビュー・アルバム『First Love』にも大きな影響を受けました。それこそ、いまの中高校生の子たちに、ファッショナブルで跳ねるビートが気持ち良いロカビリー的な世界観を認知してもらえるように、新しいロカビリー象を提案していきたいと思っています。」(青野美沙稀)

〜30年周期リバイバル、ロカビリーとファッションの関係性〜

そもそもロカビリーとは、1950年代初期のアメリカ南部、メンフィスにて黒人音楽のブルースと白人音楽のヒルビリー&カントリーが融合して生まれたロックンロールだ。アメ車やアトミックデザインな家具、雑貨にこだわるなどライフスタイル全般を含む。代表的なファッションとして、男性はリーゼントヘア、テッズジャケット、ラバーソール・シューズ、女性はバンダナ、ポニーテール、フレアなワンピース、ボーリングシャツ、ギンガムチェックなどに、大きな影響を与えている。

「家に親が曲を作る部屋があるんですけど、ランプやテーブルなど50’sなデザインでいっぱいでした。こういった小物や家具は、「バンビーナ」のMVにも登場します。ロカビリーはファッションと音楽の融合というか、ライフスタイルとしてつながっている文化なのが面白いですよね。ロカビリーのネオン使いの派手な色合いが好きなんです。ファッション的にも、取り入れやすいバンダナというアイテムもありますし、丈の長いポップなカラーのスカートはいまのセンスでも可愛いですよね。子どもの頃から親の影響もあったのか、服が決まらないと機嫌が悪くなる子でした(笑)。」(青野美沙稀)

〜ロカビリー・サウンドが解き放つ時代を越えていく魅力〜

1981年に山崎眞行が主宰する原宿のロカビリーショップ「クリームソーダ」で働いていたスタッフによってバンド、BLACK CATSは結成された。時代を彩るファッション・アイコンとして、コントラバスをスラップする斬新な音楽的スタイルはメインストリームへも大きなインパクトを与え、コカコーラのCMにも登場した。海外展開では、西海岸のガールズ・バンド、ゴーゴーズの全米ツアーへ同行するなど、まさに日本を代表するロカビリー・バンドだ。

「ロカビリーは、シャッフルで跳ねるリズムが強めなサウンドが好きですね。派手目なドラムのビートと、ウッドベースのサウンドが大きな魅力だと思います。あと派手なダンスもね。父がやっていたバンドBLACK CATSのベスト・アルバムのタイトルが『Cat’s Street』なんです。“キャッツ”と呼ばれるファンの方がたむろしていた流れから、渋谷と原宿の間の通りはキャットストリートって呼ばれるようになりました。いまも名前が残っていますよね。当時は、ほんとにネコがいっぱいいたらしいですよ。ぜんぶ、お父さんに教えてもらいました(苦笑)。」(青野美沙稀)

〜BLACK CATSから継承されるロカビリーDNA〜

ロカビリーの息吹は、BLACK CATS 以降も受け継がれていった。90年代には系譜でもあるMAGICはもちろん、時代を代表するレジェンダリーなロックバンドとなったBLANKEY JET CITYや、1996年には布袋寅泰がロカビリー・チューンを披露した5thアルバム『King & Queen』からも、ロカビリーの影響がうかがえる。ジャンルとして、ネオロカビリー、ガレージパンクと融合したサイコビリーなど派生ジャンルが進化したことも特徴だ。振り返るとロカビリーと言えば、男らしさ溢れる魅力を解き放つムーヴメントだったのかもしれない。しかし、そこに21世紀的なガールパワーが炸裂する、青野美沙稀によるキュートかつキャッチーでファッショナブルな最新型のポップセンスに注目したい。

青野美沙稀による『1959 ~Magical Rockabilly Night~』“セルフライナー・コメント”

1.「Midnight of trip」

ロカビリーらしい雰囲気からはじまる、オトナっぽい新鮮なサウンドで一番のお気に入りですね。“「好き」のカードの出し合いと ケンカの「ごめん」は一緒だね”のフレーズが好きです。“パパを見つけたい”ってところも可愛いですね。作詞の坂詰美紗子さんともいろいろ話し合いました。共感出来るフレーズでいっぱいなんです。

2.「バンビーナ」

疾走感あるキュートなナンバーですよね。早口で難しいと思ったんですけど、歌っていくうちに、勢いあるテンションの波長が自分の性格的にもぴったりだってことに気がつきました。小悪魔な世界観が可愛くて好きですね。布袋さんは、ギターを持ってかっこよく暴れているイメージでした(笑)。カバーさせていただけて嬉しかったです。

3.「ガールズ狂想曲」

トラックだけを聴いたときだと完全に強いクールでセクシーな女をイメージしていたんです。でも、歌詞が良い意味でギャップ感あるなって。リアルな女の子の気持ちの歌詞で、いつもこんな感じなので一番自分っぽいかな。なかなか洋服が決まらないとか、そういうフレーズは共感できますね。女の子はみんなこうだと思うので。

4.「sweet drive」

聞いていると楽しくなってくるナンバーですね。この曲は、ちょっとぶりっ子な女の子をイメージして歌いました。“好きが 好きが 好きが邪魔する、嫌いとかじゃないの ないない!”ていうフレーズが可愛いかったんです。車をイメージした曲なんですけど、私はまわりに運転をとめられていて(苦笑)。性格的に危ないって(笑)。

5.「フレンズ」

せつないメロディーがすごく大好きな曲で、カラオケでいつも歌っていました。“他人よりも 遠く見えて”というフレーズとか、意味をいろんな風に考えられるなと思って深いですよね。レコーディングでは一番苦戦しました。せつなすぎてもいけないし、バランスにこだわりました。自分でも歌詞を書いてみたいなって勉強になった曲ですね。

6.「Love Forever」

ふだん、あまり歌わないので実はバラードなタイプの曲が一番新鮮でした。私にとって珍しいタイプの曲なんです。“映画のワンシーンに見えるほどよ”、“永遠に憧れて永遠を知りたかったけど きっともっと先にあるのね”というフレーズが好きです。ひとつひとつ物語がつながっていく、すごくお気に入りのミニ・アルバムとなりました。

青野美沙稀 オフィシャルサイト

http://misaki-aono.com/

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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