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減災ルネッサンス

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

減災ルネッサンスとは

減災ルネッサンス、耳慣れない言葉ですね。減災ルネッサンス、何の関係があるのでしょうか。

東日本大震災で、自然の猛威を見せつけられ、ハード対策のみで災害を防ぐことの限界が明らかとなり、ソフト対策も含めて可能な限り災害を減らそうという減災の考え方がクローズアップされるようになりました。

減災の真の目的は、災害を克服できる社会を作ることにあります。私は、これを克災と呼びたいと思います。克災のためには、災害危険度の高い場所を避けた土地利用や、便利さや見栄えよりも安全を大事にした家造り、災害時に互いに助け合う心など、現代社会とは異なる価値観の社会を創る必要があります。

この価値観の変革により、自然と折り合いをつけた持続可能な自律・分散型の地域社会を皆で創っていくことができます。これを、減災を通した新たな地方創生と考え、減災ルネッサンスと呼びたいと思います。

切迫する巨大地震

今世紀前半に高い確率で遭遇する南海トラフ地震、国難とも言える事態を引き起こすと、政府が予想しています。最悪、30万人を超える犠牲者、200兆円を超える経済被害が予想されており、我が国の存立が危ぶまれます。南海トラフ地震の予想被災地に居住する人は、東日本大震災の被災地の10倍、地震が起きる場所は直下、揺れは強く、津波はすぐに来ます。被災地では、70年間強い揺れに見舞われておらず、古い家屋が残り、沖積低地に街が広がっています。予想被害量には幅があるとしても、万が一、東北地方太平洋沖地震と同規模の地震が南海トラフで発生すれば、大変なことになることは間違いありません。

減災の基本

災害を減らす基本は単純です。1)危険を避ける、2)抵抗力をつける、3)対応力をつける、4)回復力をつける、です。土地利用、耐震化、災害情報、生きる力、に対応します。

減災の砦・減災館

名古屋大学減災館の外観
名古屋大学減災館の外観
楽しんで学べる減災ギャラリー
楽しんで学べる減災ギャラリー

私が居住する名古屋は、被災地の中心に位置します。そこにある基幹大学・名古屋大学で私は防災・減災の教育・研究に携わっています。このため、あらゆる手立てを講じて、災害被害の軽減を図りたいと思っています。

そこで、地域社会が連携・結束して減災を実現する減災連携研究センターを創設し、地域社会の防災・減災行動を誘発する減災館を建設しました。センターは地域シンクタンク、減災館は地域アゴラの地域博物館を目指しています。

うれしいことに、この1年半の間に2万人くらいの市民が来館下さいました。

日本を救う3×JAPAn

今、大切なのは、3つのJAPAnだと考えています。3つの=自由な発想+地道さ+地元愛、3つの=頭+汗+愛、3つの=Player+Plan+Product、3つのAn=Antenna+Analysis+Answerです。

日本の三男坊・名古屋にある三角形の建物・減災館の中で、名古屋の地元っ子が、自然災害から日本(Japan)を救う作戦を立て、実践をしています。

これから、減災館で考えた防災・減災のあれこれを、お届けします。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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