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続発する災害! 被害を未然に防ぐために1年間を振り返ってみましょう

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
(写真:ロイター/アフロ)

災害は忘れた頃にやってくると言います。この1年を振り返ってみると、災害は忘れないうちにもやってきそうです。

この数日間、茨城・栃木・宮城での豪雨で、一級河川の鬼怒川決壊を始め、甚大な水害・土砂災害を経験しました。土地利用や治水の大切さを実感します。翌朝には、首都直下でマグニチュード5.2の地震が発生し、首都圏の多くが震度4の揺れに見舞われました。交通機関の混乱をはじめ、都市の脆弱性を改めて感じます。

谷の造成地を襲った広島豪雨

1年前の2014年8月20日には、広島市で、豪雨による大規模土砂崩れが発生し、74名もの方が犠牲になりました。この地区は、かつて蛇落地と呼ばれていたようです。今は上楽地と呼ばれています。谷筋の怖さ、地名の大切さが改めて分かります。

最悪の時間に噴火した御嶽山

9月27日には、御嶽山で水蒸気噴火が起きました。紅葉が美しい晴天の土曜の11時52分、一年で最も登山者が多い時間でした。小規模な噴火だったにもかかわらず、死者行方不明者63名という戦後最悪の火山災害となりました。災害は時間を選びません。

気になる場所で起きた神城断層地震

11月22日には、神城断層でマグニチュード6.7の直下地震が発生しました。幸い犠牲者はありませんでしたが、断層周辺では、地盤が軟弱な場所を中心に家屋被害がありました。神城断層は、活動度が最も高い糸魚川-静岡構造線断層の北端部にあります。周辺では、2004年中越地震や2011年長野県北部地震などが発生しています。また、糸魚川-静岡構造線断層の南端は、東海地震の震源域の駿河トラフにつながっています。

全島避難した口之永良部島噴火

本年に入って5月29日には、口之永良部島でマグマ水蒸気噴火が発生しました。火山島に暮らす住民の的確な避難行動によって、犠牲者は出ませんでしたが、全島避難が続いています。霧島火山帯では、新燃岳、阿蘇山、桜島、口之永良部島と噴火が続いています。これらの火山は、開聞岳も含めて見事に一直線上に並んでいます。

口之永良部島の近く、鬼界カルデラでは、7300年前に破局的噴火が起きています。縄文時代の人口が東日本に偏っている理由がここにあるようです。25000年前にも桜島周辺の姶良カルデラで破局的噴火があったとのことです。

首都がよく揺れた小笠原西方沖地震

口之永良部島噴火の翌日5月30日には、小笠原の地下約700kmで、マグニチュード8.1の地震が発生しました。この地震では、とくに首都圏の揺れが際立って大きかったように感じます。また、地震観測史上はじめて、すべての都道府県で震度1以上の揺れ観測しました。この地震の震源の真上では、今、西之島が活発に噴火しています。

観光地・箱根山での噴火

1ヶ月後の6月30日には、箱根の大涌谷周辺で小規模な噴火が発生しました。箱根はカルデラ噴火によって作られた外輪山や芦ノ湖から形成されています。美しい風景や温泉は火山活動の恵みでもあります。伊豆半島周辺にはたくさんの火山があります。3500万人も居住する首都圏の西側に、沢山の火山があることを忘れないでおきたいと思います。

この1年を振り返るだけでも、たくさんの自然災害がありました。各地で起きる災害をわがことと感じ、自然への畏れを忘れることなく、災害を未然に防ぐ日頃の生活態度が改めて問われています。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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