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いつから復帰?全米プロも欠場が濃厚になったローリー・マキロイの今後

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
全英欠場に続き、全米プロ出場も危ういローリー・マキロイ(写真/平岡純)

【手術は不要だが、、、】

7月4日に友人たちとサッカーに興じて左足首を痛め、全英オープンを欠場した世界ランキング1位のローリー・マキロイ。どうやら、8月6日から始まる世界選手権シリーズのブリヂストン招待も、その翌週に開催される今季最後のメジャー、全米プロも出場は危うそうな気配だ。

先の全英オープンウィークにセント・アンドリュースで開催された現地のゴルフ記者協会のパーティーの席上。マキロイと同郷のダレン・クラークが、マキロイが試合の場に姿を見せるのは「年明けの1月だ」という言葉を口にした。クラークは「ジョークのつもりだった」そうだが、翌日からは、その真偽のほどが取り沙汰される事態へ。そして、その後、マキロイのマネージャーのショーン・オフラティ氏がマキロイの故障の状態をある程度、明かした。

手術になる可能性もあるのかと問われたマネージャー氏。「それは無い」ときっぱり否定。しかし、復帰までに、どのぐらい時間がかかりそうなのかと問われると、こんな返答になった。

「私は医者ではないから明言はできないが、とにかく時間がかかりそうだ。断裂した靭帯は、切れたゴムバンドみたいなもので、元に戻せるものじゃない。切れたものは切れたもの。(切れたのは)3本の靭帯のうちの1本で、それは無きゃ無いでいいわけだし、それを治したところで、また切れるからね」

マネージャー氏の言葉を解読するため、医師に確認したところ、足関節の靭帯は「内側に1本、外側に3本。そして外側の3本の中で重要なのは1本。損傷した靭帯が他の2本であれば、特に中央の1本であれば、手術はしないことが多い」とのこと。つまり、マネージャー氏が言った「3本のうちの1本」は、外側の3本のうちの1本で、しかも最も重要な1本ではない他の2本のうちの1本を指していると思われる。

だから手術は不要ということであれば、マキロイにとっては不幸中の幸いだ。が、逆に手術をしないとなると、どの時点から回復したとみなされるのか、どの時点からツアーに復帰できるのか、果たしてブリヂストン招待や全米プロには出られるのか。「それはローリーが一番知りたがっているが、今のところ、医師からはこれ以上の情報はもらえていない。いつから球が打てるのか?1か月後?6週間後?3か月後?それは今はわからない」。

マキロイのファンが全米プロのチケットを買っても大丈夫だろうか。そう問われると、マネージャー氏は欧州ツアーのシーズンエンドの「レース・トゥ・ドバイのチケットなら買っても大丈夫。今、私に言えるのは、そこまでです」と答えた。

欠場でもマキロイの写真を飾っていた聖地のショップのウインドウ(写真/舩越園子)
欠場でもマキロイの写真を飾っていた聖地のショップのウインドウ(写真/舩越園子)

【スピースに抜かれるのは時間の問題。デイの言葉は、耳が痛い?】

全英オープンに続き、ブリヂストン招待も全米プロも欠場となれば、マキロイは昨年3連勝したビッグ大会すべてにおいて、ディフェンディングチャンピオンの役割と責任を果たせなくなる。

先の全英オープン取材に赴いた際、エジンバラ空港からセント・アンドリュースへ向かったタクシーの運転手は「ローリーには本当に頭に来たよ。全英オープンを控えた大事な時期に友達とサッカー遊びしてケガして欠場なんて、とんでもない話だ。せっかく前売りチケットだって苦労して買ったのに……」と、たいそう、ご立腹だった。

多くのメディアが宿舎として利用したセント・アンドリュース大学の寮。その管理を担っていたスタッフたちは「ここ、セント・アンドリュースの全英オープンでは、やっぱり英国人に勝って欲しい。現実的に優勝を期待できる英国人の筆頭はローリー。それなのに直前で欠場なんて……」と落胆しきりだった。

「マキロイはサッカーをゴルフのトレーニングの一部として採用していたのではないか?」と、そう思った方もいるようだが、このケースに限って言えば、そうではない。マキロイが友達とサッカー遊びをしていて故障したことは、すでにマキロイ側から明かされている事実だ。

「プロゴルファーがサッカーをしてはいけないのか?」「息抜きのために他のスポーツをしてはいけないのか?」そんな意見や反応も、ほんの一部には、あったようだ。

「いけない」なんてきまりは、どこにもない。サッカーをしようが、サーフィンをしようが、誰がいつ何をしようが、すべては自由。だが、いつ、どんな状況で、何をどのぐらい、どんなふうに行なうか。その判断には、プロフェッショナルとしての意識が反映されて然るべき。

その判断を誤り、昨年出場3連勝を果たした全英オープン、ブリヂストン招待、全米プロのビッグ大会を前に、サッカーに興じて故障したマキロイ。結局、全英会場には姿を現すことすら叶わず、優勝トロフィーのクラレットジャグはマキロイに代わってマネージャー氏が返還。マキロイは関係者が集まるパーティーにも出席できず、サインをもらうのを楽しみに待っていた子供たちや素晴らしいプレーを心待ちにしていた世界中のゴルフファンの期待を裏切る形になった。

来たる2つのビッグ大会でスピースが王座に就く可能性は大だ(写真/平岡純)
来たる2つのビッグ大会でスピースが王座に就く可能性は大だ(写真/平岡純)

ジョーダン・スピースが全英オープンで、あと一歩で勝利を逃したおかげで、マキロイの世界ランキング1位の座は今なお保たれている。だが、全米プロまで欠場が続けば、スピースに抜かれるのは、もはや時間の問題だ。

全米オープンで病いに倒れたからこそ健康管理に厳しい目を向けるデイ(写真/平岡純)
全米オープンで病いに倒れたからこそ健康管理に厳しい目を向けるデイ(写真/平岡純)

全米オープンでは持病のめまいに襲われて実力発揮ができずに惜敗し、全英オープンでも惜敗に終わったジェイソン・デイは、すぐさま翌週のカナディアンオープンで優勝を遂げ、こう言った。

「ケガを防ぎ、健康を保ち、ファンにいいプレーを見せる。それが僕らの務めだ」

マキロイには耳が痛い言葉だったに違いない。今はマキロイの少しでも早い回復と復帰を願うばかりだ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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