五輪ゴルフコースにも影響!?ドナルド・トランプに揺れるゴルフ界
【完成、公開された五輪コース】
来夏、2016年リオ五輪でゴルフが112年ぶりに五輪競技に復活する。その戦いの舞台となるゴルフコースが完成し、先ごろ、関係者に初公開されたのだが、コースの良し悪しはさておき、妙な臭いが漂い始めている。
選手村から3マイル、メインのメディアセンターから4.3マイルの位置にあるゴルフコースは、リオ五輪のゴルフの舞台として、まさにゼロから造り上げられた18ホールの五輪専用コースだ。
敷地面積は240エーカーと広大で、関係者によれば、「フェアウエイはとても狭く、バンカーの数は非常に多く、建物や木々など風や空気の流れを遮るものが何もないオープンな場所ゆえ、風が難敵になるであろうチャレンジングなコース」に仕上がっているという。
草木などは、ある程度、天然の状態のものを活用しているが、コース内の2つの湖は完全なる人口湖。そして、ブラジルの熱帯性気候に耐えうるよう、特別なメンテナンスが施されるそうで、芝刈りは1日に3回から4回、水撒きは48時間ごとに行なうという。
【コース設計者、ギル・ハンスとは?】
ほとんど荒野のような状態だった土地を短期間で18ホールの五輪専用コースへ大変身させたこのコースの設計者の名は、ギル・ハンス。この人物、米ゴルフ界では、かなり知られている。
ハンスが主宰するハンス・ゴルフ・デザインは、米内外ですでに多くの有名ゴルフコースの設計や改修を手がけた実績がある。だからこそ、ゴルフが復活する記念すべきリオ五輪のコース設計者に選ばれたとされている。
だが、ちょっと気になるのは、ハンス・ゴルフ・デザインが、あのドナルド・トランプとゴルフビジネス上、密接な関係にあり、米ツアーのキャデラック選手権の舞台、ドラル・リゾートを2012年にトランプが買収した後、コースの大幅改修を行ったのもハンスだった。
その既成事実そのものには何の問題もない。だが、昨今のトランプによる過激発言に対して世界のゴルフ関係団体が眉をひそめ始めている今、五輪コースや五輪におけるゴルフがトランプと関連づけられ、何かしらのトラブルを招く可能性はなきにしもあらずだ。
【五輪とトランプ!?】
折しも、トランプが2014年に購入したトランプ・ターンベリーが全英オープン開催コースのローテーションから外されることが英国紙「ザ・インディペンデント」によって報じられたばかりだ。
そして、米ツアーもトランプ所有のドラルを2017年からはキャデラック選手権の舞台から外す見込みであることが米「ゴルフドットコム」によって伝えられたばかりだ。
この2つの動きは、米大統領選に名乗りを上げているトランプが、つい最近、口にした「イスラム教徒入国禁止」発言に反応して起こったものだ。
だが、トランプは今年6月にもメキシコからの不法移民に対する差別的発言をしており、その際にすぐさま反応したPGAオブ・アメリカはグランドスラム・オブ・アメリカの舞台だったトランプ・ナショナル・ロサンゼルスを即座に変更した。
今年の全英女子オープンもトランプ・ターンベリーが会場となっていたが、LPGAは時間的に開催コースの変更は難しいということで、同大会はターンベリーで行なわれた。
だが、トランプ・ナショナル・ベッドミンスター(ニュージャージー州)で開催が決まっている2017年の全米女子オープンと2022年の全米プロ、トランプ・ナショナル・ワシントンで開催が決まっている2017年全米シニアプロは、今後、開催地が変更される可能性が濃厚だ。
【大統領か、夢か!?】
ゴルフの主要団体がトランプと距離を置き始めている中、五輪コースとトランプの関係、そして、それに対するゴルフ界の見方や姿勢は、これからどうなっていくのだろうか。
ターンベリーは2020年の全英オープン開催コースになるはずだった。そして「自分のコースで男子のメジャー大会を開催する」ことは、ゴルフ狂と言えるほどゴルフ好きであるトランプの長年の夢だった。
せっかく、夢の実現にリーチをかけておきながら、自らの一連の問題発言によって、その夢を失いかけているトランプ。
米国のある調査結果によれば、発言の是非はさておき、トランプ支持率が40%を超えたという。大統領候補として注目を集めるために過激な発言を繰り返し、結果として夢を諦めることになってしまうのかどうか。
それは、トランプ自身が決めることではあるが、その動向によってゴルフ界が揺らがされるのは困りもの。
リオ五輪終了後、ゴルフコースはパブリックコースとしてリオの地元の人々に親しんでもらう予定になっているのだが、それに対しても「元々、トランプが安値で買い上げる筋書きができている」等々、さまざまな噂や憶測も飛び交っている。
せっかくゴルフが復活する記念すべき五輪。誰もが晴れやかな気持ちで、そして何より安全に競技が行われることを祈るばかりだ。