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米ゴルフ界の2016年総括と2017年の展望。 「多彩な主役」から「松山主役」へ!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
5戦4勝で注目と話題を独占。「主役」として2016年を終えようとしている松山英樹(写真:ロイター/アフロ)

【目まぐるしい1年】

2016年の米ゴルフ界、世界のゴルフ界を振り返ってみると、そのときどきで実にいろいろな選手が主人公になった1年だった。

今年のマスターズを制したのは英国のダニー・ウイレットだった。全米オープンでは米国のダスティン・ジョンソン、全英オープンではスウエーデンのヘンリック・ステンソン、全米プロでは米国のジミー・ウォーカーが勝利を収めた。メジャー覇者が4人ともメジャー初優勝者。底力のある選手たちが努力と忍耐の末に達成した悲願のメジャー初勝利。

ルールの珍事を乗り越え、全米オープンでメジャー初優勝したダスティン・ジョンソン
ルールの珍事を乗り越え、全米オープンでメジャー初優勝したダスティン・ジョンソン

そんな彼らの成功物語は、スポットライトを浴びることができぬまま鍛錬を積んでいる大勢の選手たちに勇気と希望をもたらした。

今年のメジャー4大会のもう1つの特徴は、全米オープン、全英オープン、全米プロの3つが6月7月の2か月間のうちに駆け足で開催されたこと。メジャーの開催日程が変更された理由は、8月にリオ五輪が控えていたからだった。

ゴルフの112年ぶりの五輪競技への復活はゴルフヒストリーにおける大きな節目になった。金メダルに輝いたジャスティン・ローズ(英国)、銀メダルのステンソン、銅メダルのマット・クーチャー(米国)が笑顔で表彰台に立った姿は、大勢のゴルファーたちの羨望の的になった。

五輪終了後の8月末から9月に行われた米ツアーのプレーオフ4試合を経て、年間王者に輝いたのは、北アイルランドのローリー・マキロイ。

今年3月の「A・パーマー招待」の表彰式で披露した挨拶が生涯最後のスピーチになった
今年3月の「A・パーマー招待」の表彰式で披露した挨拶が生涯最後のスピーチになった

最終戦となったツアー選手権の最終日の夜、マキロイの優勝と入れ替わるようにゴルフ界のキング、アーノルド・パーマーが87歳で逝去。

米ツアーの2016年シーズンは登場人物と主人公が次々に変わる目まぐるしい展開だったが、そのエピローグは静かなものとなった。

【主役の座に躍り出た松山英樹】

その翌週。米欧対抗戦のライダーカップでは、米国チームが8年ぶりの勝利を挙げ、大いなる盛り上がりを見せた。

10月半ばからは米ツアーの2017年シーズンが早くも始まり、開幕戦となったセイフウエイ・オープンでは、昨秋の腰の手術以降、戦線離脱していたタイガー・ウッズの1年2か月ぶりの復帰に期待が集まっていた。

だが、ウッズは開幕3日前にまさかのドタキャン。せっかくの開幕戦は、人々の落胆と失望、不安と心配が入り混じる残念な幕開けになった。

その沈みかけたムードをたった一人で盛り上げるかのように、一躍、世界のゴルフ界の主役の座に躍り出たのが、松山英樹だった。

日本オープン優勝を皮切りに、上海ではHSBCチャンピオンズで米ツアー通算3勝目を挙げ、アジア人初の世界選手権シリーズ制覇。日本に戻るとVISA太平洋マスターズでも勝利を挙げ、すぐさまバハマへ移動して“ウッズの大会”、ヒーロー・ワールド・チャレンジでも勝利。その大会で戦線復帰を果たしたウッズと並び、笑顔で表彰式に臨んだ松山は、話題を独占するはずのウッズを凌ぐ主役になっていた。

10月からのほぼ2か月間で5戦4勝の快進撃に世界のゴルフ界が目を見張り、欧米メディアも「この地球上で最もホットな選手はヒデキ・マツヤマ」と絶賛した。

2017年は松山英樹の闊歩が楽しみだ(写真/舩越園子)
2017年は松山英樹の闊歩が楽しみだ(写真/舩越園子)

【2017年こそが本戦に挑む年】

主人公が目まぐるしく入れ替わっていったゴルフ界のこの1年。松山はその最後の最後に堂々の主人公になり、10月以降の3か月間、その座に“君臨”する形で2016年を終えようとしている。

5戦4勝の快進撃により、世界ランキングは6位へ浮上。米ツアーのフェデックスカップランキングは現在1位と飛び抜けているが、いまなお松山は夢の達成のための旅の途上にある。

「メジャーで勝つのが夢です」

「マスターズで優勝したい」

米ツアー昨季は目標へ向かうためのウォーミングアップ。今季開幕とほぼ同時に始まった日本、上海、バハマにおける5戦4勝は、世界を驚かせた快進撃ではあったが、彼にとっては、これも前哨戦。

2017年こそは、松山が夢の実現のための本戦に挑む1年になる。その松山を本気で阻もうとしてくるのは、2016年を盛り上げた多彩な主人公たち。

来年の今ごろ、1年の最後に笑っている主人公は松山か、それとも他の選手か。これから迎え来る新たな365日に、ゴルフファンの夢も膨らむばかりだ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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