Yahoo!ニュース

子供にとって「ゲーム端末」とは「ゲーム機」なのか「スマートフォン」なのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
スマートフォンを操作する子供

高校生でほぼ同率、大学生以上はスマートフォンがメインのゲーム機

総務省・情報通信政策研究所が2013年7月5日に発表した「青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査」には、青少年とインターネットとの関係の実態を多彩な切り口で知ることができるデータが盛り込まれている。今回はその中の「ゲーム用として普段もっとも利用する情報通信機器」に関する結果を中心に、子供にとって「(デジタル系)ゲーム端末」は何を指しているのかについて見ていくことにする。

↑ 「ゲーム」に普段もっとも利用する手段や機器(2013年7月)
↑ 「ゲーム」に普段もっとも利用する手段や機器(2013年7月)

このグラフは「ゲーム用として普段もっとも利用する情報通信機器」を「携帯電話(一般携帯電話、スマートフォンの双方を含む)」「パソコン」「ゲーム機(据え置き型、携帯型)」「その他」「利用しない」の中から一つ選んでもらった結果のうち、「携帯電話」「パソコン」「ゲーム機」のみを抽出したもの。

学校区分別に見ると、小学生はきわめて「ゲーム機」が多く過半数に達している。「携帯電話」「パソコン」は少数派で、これはそれらの機器を保有する・利用する機会そのものが少ないのが最大の原因。歳を重ね学校が上になるに連れて、「携帯電話」「パソコン」が増え、「ゲーム機」が減っていく。

興味深いのは高校生までは「パソコン」が「携帯電話」を上回るのに対し、高校生でほぼ横並び、大学生以降は「パソコン」そのものの比率が減り、「携帯電話」がもっともゲームで遊ぶ際に使われる端末となること。生活の上で忙しさを増し、固定された場所でしか遊べない「パソコン」より、いつでもどこででも遊べる「携帯電話」の方が便宜性の高さを認識するようになるのだろう。見方を変えれば「大学生以上にとって『ゲーム端末』とは携帯電話」と見ることができる。

次のグラフは2年ほど前に、NHN Japanによって行われた調査結果(20~30代を対象にしている)。携帯電話の保有機種別における、ゲーム機の種類別まで区分された上で、「ゲーム用として普段もっとも利用するツール」の回答が示されている。

↑ あなたが普段ゲームをする機会が最も多いツールは?(2011年4月)
↑ あなたが普段ゲームをする機会が最も多いツールは?(2011年4月)

当時は現在と比べてスマートフォンの普及率が低かったが、そして30代まで含めた結果ではあるが、すでに「携帯端末」に限っても、スマートフォンユーザーの場合は「任天堂の携帯ゲーム機DSシリーズより、スマートフォンの方がゲーム機として良く使われている」という結果が出ている。

携帯ゲーム機は原則ゲーム機の役割しか果たさないが、スマートフォンなら他にも多種多様な使い方ができる。また若年層にとっては多分に電話としても用いることになるので、スマートフォンは肌身離さず持ち歩く必要がある。その上さらに携帯ゲーム機を持ち運ぶのは、正直面倒であるし、荷物が増えるばかり。スマートフォンをゲーム機として使うのならば、それ単独だけで済む。

ゲームソフトの調達面でもスマートフォンは有利

またゲームそのものの入手の上でも、スマートフォンは有利に見える。可処分所得が限られる若年層にとって、数千円もするソフトを購入するのは、非常に勇気がいる行動となる。万一「ハズレ」に手を出してしまった時のダメージは非常に大きい。一方でスマートフォン用のゲームアプリなら(課金や通信費を考慮しなければ)数百円で手に入る。「ハズレ」の際のリスクも小さい。

さらに高校生までを対象とした調査の結果(無料か有料か…小中高校生のスマートフォンでのアプリ利用実態を探る(2012年度・青少年のインターネット利用環境実態調査版)より)からも分かるように、(ゲームに限らずだが)子供達の多くは無料のアプリケーションを利用している。スマートフォンでは数多くの無料ゲームも遊べるのである。

↑ アプリをダウンロードする際は有料・無料どちらを入手しているか(スマホ限定)
↑ アプリをダウンロードする際は有料・無料どちらを入手しているか(スマホ限定)

持ち運びに便利で金銭上のリスクも小さいとなれば、ゲーム機よりもスマートフォンを子供たちが選ぶのも道理にかなった行動といえる。

今後ますます増えるスマートフォン利用者、そして

そしてこの1、2年の間に、子供達におけるスマートフォンの保有率は急激に上昇している(「2012年度・青少年のインターネット利用環境実態調査版)」から)。

↑ パソコン・携帯などの使用・保有率推移(小~高校生対象、全体)
↑ パソコン・携帯などの使用・保有率推移(小~高校生対象、全体)

今後さらに子供達の間にもスマートフォンが普及していくことは容易に想像できる。それに従い、さらにゲーム端末、特に携帯用ゲーム端末のメインが、携帯ゲーム機からスマートフォンにシフトしていくことは誰の目にも明らかだ。

そしてその動きは子供の間に限った話ではない。上記グラフの「社会人」の項目でもすでに「スマートフォンが一番よく使うゲーム機」との結果が出ている。「一番よく使う」であり、他の機種を100%使わないわけではないが、そして(操作性や画像表示などの機能がスマートフォンよりも高い)パソコンの利用率が高いため子供ほどではないが、スマートフォンの普及率がさらに高まるにつれて、大人たちの間にも、シフト化は進んでいくに違いない。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事