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今や5000億円割れ・縮小続く家庭用ゲーム機市場

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 家庭内のゲームを一手に担い、成長を続けた家庭用ゲーム機だったが…

縮小続ける家庭用ゲーム機の出荷額

社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)では毎年1回、夏頃に「CESAゲーム白書」を発行している。その発行の際にプレスリリースとして概況の公開を行っているが、その中に日本国内の家庭用ゲーム機市場の動向が推し量れる値が盛り込まれている。

次に示すグラフは、その値を随時抽出して精査したもの。入手可能な2004年以降における、日本国内の家庭用ゲーム機(ソフト・ハード合計)の総出荷額の推移を示したものだが、青色が国内向け、赤色が海外向けの金額を指している。

↑ 2004~2012年における家庭用ゲーム総出荷額(ソフト・ハード合計)
↑ 2004~2012年における家庭用ゲーム総出荷額(ソフト・ハード合計)
↑ 2004~2012年における家庭用ゲーム総出荷額比率(ソフト・ハード合計)
↑ 2004~2012年における家庭用ゲーム総出荷額比率(ソフト・ハード合計)

日本国内・国外を問わず、据え置き型の家庭用ゲーム機Wiiやプレイステーション3が登場した2007年が天井となり、2009年以降は急速に縮小傾向にある。直近2012年では国内市場が3958億円、国外市場は8376億円にまで落ち込んでいる。

特に海外市場の縮小ぶりは顕著で、最盛期の2007年と直近2012年を比較した場合、国内は33%の減少に留まっているのに対し、海外は64%もの減少を見せている。この動きに伴い、国内外シェアも少しずつ国内が増加しており、2012年では32.1%という値を示している。もっともこれは双方とも金額を落とした上での結果であり、喜ばしい話ではない(為替レートの動きが一因ではあるが……)。

国内に比べて海外の縮小ぶりが著しいのは、一つに「日本のゲームが以前と比べて海外に受け入れられなくなったから」。相変わらず任天堂の主要タイトルはベストセラーを続けているが、他社タイトルは以前のような勢いは感じられない。

そしてもう一つは日本国内にも影響が生じている「スマートフォン」の普及による家庭用ゲーム機離れ。子供にとって「ゲーム端末」とは「ゲーム機」なのか「スマートフォン」なのかで詳しく解説した通り、ゲーム機としても十分以上の機能を発揮する、しかも「便利」「低リスク」「安価」なスマートフォンが、ゲーム専用機でしかない家庭用ゲーム機を凌駕しつつある。2年前の話になるが、アメリカで行われた「クリスマスプレゼントに欲しい電子機器」として上位にiPadやiPod Touch、iPhoneが挙がり、ゲーム機は6位にようやくニンテンドー3DSが顔を見せるという状況だった。現時点ではさらにこの傾向が顕著なものとなっているに違いない(「クリスマスはiPadネ」米の子供達が年末年始に欲しい電子機器は?)。

↑ 今後半年内に買って欲しい「電子機器」(米、6-12歳、2011年10月)
↑ 今後半年内に買って欲しい「電子機器」(米、6-12歳、2011年10月)

国内の市場規模は今や5000億円割れ

なお上記額は「出荷額」であり、小売価格では無い。市場規模を示す場合は小売価格をベースにする場合が多い。そこで国内に限るが、家庭用ゲーム機の「市場規模推移」を示したのが次のグラフ。

↑ 2004~2012年における家庭用ゲーム国内市場規模(推測、億円)
↑ 2004~2012年における家庭用ゲーム国内市場規模(推測、億円)

2004年以降では新ハードが続々登場した2007年をピークとし、以降2012年まで減少し続けている。かつてゲーム業界は国内だけで周辺産業も合わせ「1兆円市場」とも呼ばれていたが、今や規模としてはその半分程度。

家庭用ゲーム機の一番のお得意様となる子供たちの間ですら、「欲しいもの」として以前ほどゲーム機の引き合いは無く、むしろスマートフォンをはじめとした携帯電話への需要が高まっている。大学生以上になれば、ゲーム用端末としてもっとも用いられているのはゲーム機ではなくスマートフォンであるという結果も出ているほど。

新型機が登場しても、かつてのように市場が底上げ・活性化されるという気配も見せなくなった家庭用ゲーム機市場。市場そのものが消失することは無いが、今しばらくは縮小の一途をたどることになるだろう。何しろ競合相手のスマートフォンは、今後もさらに普及率を高めていくのは間違いないのだから。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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