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夏休み明けの熱中症搬送者比率、学生が高くなる不思議

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「屋内だから」と油断すると体育館での練習でも熱中症を発することは多分にある

2013年9月18日付で総務省消防庁が発表した、9月9日から15日までの熱中症搬送人数は1134人(速報値)となり、前週から1.7倍の増加を示した。とはいえピーク時の1万人超/週と比べれば減少傾向にあり、夏の暑さもピークを越したように見える。

↑ 熱中症による救急搬送状況(週単位・速報値・2013年・人)
↑ 熱中症による救急搬送状況(週単位・速報値・2013年・人)

一方、9月に入ってからの傾向として、少年(年齢区分で7歳から18歳、男女を問わず)の搬送者率が上昇する動きが見られる。

↑ 熱中症による救急搬送状況(年齢区分)(2013年)
↑ 熱中症による救急搬送状況(年齢区分)(2013年)

昨年の状況を確認したが、やはり9月に入ると少年区分の搬送者比率は増加している。単なるイレギュラー的な動きではなさそう。

↑ 熱中症による救急搬送状況(年齢区分)(2012年)
↑ 熱中症による救急搬送状況(年齢区分)(2012年)

搬送者の絶対数そのものは8月の夏真っ盛りの時期と比べれば減っているが、それにしてもこの比率の増加は少々気になるところ。

そこで調べてみると、該当時期の熱中症による搬送事例には、多分に体育祭や運動会の練習に伴うものが含まれていることが分かった。9月9日から15日に限っても、複数の事例が確認できる。

鹿児島県薩摩川内市内の中学校で11日、体育大会の練習をしていた生徒32人が熱中症の症状を訴え病院に運ばれたことを受け、県は「こまめな水分と塩分の補給を心掛けてほしい」と注意を呼び掛けている。

出典:西日本新聞

12日午後4時10分ごろ、横浜市保土ケ谷区川島町の「横浜FC・LEOCトレーニングセンター」で、11人が熱中症とみられる症状を訴え、うち10代の女性3人と20代の女性1人の計4人が病院に搬送され、10代の3人は軽症と診断された。

出典:ヤフーニュース

9月に入ると各学校で本格的に二学期が始まる。そして秋の体育祭や運動会をひかえ、各種練習や準備に励む機会が増える。屋外にせよ体育館の中にせよ、皆が皆、気合いを入れての練習になるため、体力も消耗しやすく水分も奪われやすい。

さらに体調不良や水分不足を感じても、途中で場を抜ければ周囲に迷惑をかけてしまうとのことから、つい無理に練習を続けてしまい、体調管理が二の次となる。練習している内容はその多くが集団競技であるのも、場抜けがしにくい理由である。

結果として、気が付くと少なからぬ人が臨界点を越え、熱中症の症状を覚えてしまう事例が発生する。また「9月に入ったので、熱中症も無いだろう」という油断が、生徒、そして教師などの指導側にもあるかもしれない。

体育祭・運動会に向けて練習をする際には、屋内外を問わず体調管理、水分や塩分の補充を欠かさないよう、生徒自身はもちろん、指導サイドも注意してほしい。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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