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会話や近所付き合いから見た独り身男性シニアの「ぼっち」状態

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「咳をしても一人」は尾崎放哉の有名な句だが…

以前今後も増える「ぼっち世帯」、2050年には4割超・うち過半数がシニアぼっちとの試算もで解説したように、先進諸国の中でも異例なスピードで高齢化が進んでいる日本において、シニア層の一人身世帯による孤立化が問題視されている。概して不健康な状態に追い込まれることとなり、さらに緊急事態が起きても他人の助けを得られず、手遅れになる場合が多々生じるからだ。コミュニケーション豊かな人ならば他人との接触機会も多く、何かイレギュラーなことがあればすぐに気が付いてもらえるが、交友関係が薄ければそれもかなわない。

それでは高齢者の対外的なコミュニケーションはいかなる状況なのか。内閣府が今年6月に発表した最新版の「高齢社会白書」などのデータを基に現状を探っていく。

まずは60歳以上を対象にした、会話の頻度。この会話には直接の口頭によるやりとり以外に電話、さらには電子メールを含めたもの。グラフ上では「毎日」「分からない」以外の、頻度が低めな人達の回答率をまとめている。この値が高いほど、会話の上で孤立感が強い。

↑ 会話の頻度(電話、電子メール含む)(60歳以上)
↑ 会話の頻度(電話、電子メール含む)(60歳以上)

夫婦のみ、その他の世帯も合わせ、全般的に男性の方が値が大きい。つまり、高齢者における他人との会話頻度は男性の方が低い。高齢者全体では「毎日他人と言葉を交わしてはいない」人は1割も居ないが、男性一人暮らしに限るとその割合は3割近くにまで増える。しかも7.5%は一週間に一度も会話をしていない。じっと黙っているか、あるいはテレビに話しかけているか、新聞を読みながら独り言を繰り返しているか、だろうか。

近所づきあいの観点でも、男性シニアの「ぼっち」状態が確認できる。

↑ 近所付き合いの程度(60歳以上対象)
↑ 近所付き合いの程度(60歳以上対象)

一人暮らし、中でも男性一人暮らし世帯の「近所付き合いの希薄さ」が目に留まる。一方で女性は一人暮らし世帯の方が、夫婦世帯やその他世帯よりも近所づきあいを上手く行っている。女性の世渡り上手さ、歳を経て一人身になったあとの身軽感がすけて見える。そしてこの行動性向が「会話の頻度」における男女間の差異にも表れていると考えれば、納得は行く。

近所づきあいが少なく、会話の機会もあまり無い。地域社会から半ば孤立したような状態となれば、当然何か困った時に頼れる人がいる確率も低くなる。案の定、男性シニアの一人身世帯では5人に1人が「頼れる人が居ない」と回答している。

↑ 困った時に頼れる人がいない人の割合(60歳以上対象)
↑ 困った時に頼れる人がいない人の割合(60歳以上対象)

同じ一人暮らしでもコミュニケーションの上で男女で大きな差が生じ、それが「ぼっち」状態となるか否かの大きな分かれ目となっている感はある。女性は高齢者に限らず対外コミュニケーションを好み、長ける傾向があり、これが功を奏している可能性は高い。そして他人と積極的に交わり、時間を過ごすことを大切にする心構え(あるいは本能)が、「ぼっち」状態から脱し、結果として、あるいは間接的に、女性が男性と比べて長生きする秘訣となっているのかもしれない。他人との交流を経た社会生活は、健康的な人生を営むには欠かせないという次第である。

男性、特にシニアの一人身世帯においては、孤独感を楽しむばかりではなく、趣味趣向を持ち、半ば意図的にでもかまわないのでコミュニケーションをたしなみ、自分は自分「独り」では無く、社会の中の「一人」であるよう、心がけてほしいものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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