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10年で半数に…たばこ販売店と自販機は減少中

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ タスポ導入や震災後の節電要請など荒波にもまれ続けるたばこの自動販売機だが…

現在27万店…たばこ販売許可店は減少中

かつては「未成年者でもたばこを調達しうる機会を与える」と問題点を指摘され、そしてそれを解消すべく導入された「タスポ」に絡んだ問題で、2011年以降は震災を経ての節電対策の矢面に立たされる形で、その上健康志向の高まりによるたばこそのものの売上減退を受け、たばこ自動販売機やたばこ販売店の現状は、世間一般からイメージされているほど盛況では無い。今世紀に入ってからは両者とも漸減傾向にある。その実情を確認していくことにする。

まずはたばこ販売許可店。誰もが自由にたばこを売れるわけではなく、許可申請をして「許可店」の許しを得て、はじめて業者としての販売が可能になる。

↑ たばこ販売の仕組み。実線は商品の流れ、破線は申請・許認可等(JTサイトより)
↑ たばこ販売の仕組み。実線は商品の流れ、破線は申請・許認可等(JTサイトより)

その販売許可店の数は、今世紀初頭がピーク。その後は漸減状態。

↑ たばこ販売許可店数推移(各3月31日時点)(万店)
↑ たばこ販売許可店数推移(各3月31日時点)(万店)

特に直近5年ほどの間は、減少幅が大きくなっている。これは「併設の自動販売機の撤去で店舗全体としてのたばこ販売全体としての採算が取れなくなった(販売店横に配した自販機に稼いでもらい、店頭販売そのものは趣味として商売を行うスタイルが成り立たなくなった)」「店主の高齢化による引退、店舗の閉鎖」「たばこ需要の減退に伴う売上の減少で利益が出なくなった」など、複数の要因が重なったもの。採算ラインぎりぎりにあった店舗がたばこ需要の減退で売上を減らし、損益分岐点にも届かなくなって閉店していることになる。

たばこ自販機はタスポと震災のダブルパンチ

一方、たばこの自動販売機数は店舗数以上に急激な減少傾向を示している。

↑ たばこ自動販売機数推移(各12月31日時点)(万台)
↑ たばこ自動販売機数推移(各12月31日時点)(万台)

たばこ自販機は条件さえ整えば、無料で貸与を受けることもできる(電気代などの諸経費は必要。月額平均3000円程度)。このたばこ自動販売機を「JT貸与機」と呼んでいる。この「JT貸与機」は2013年3月末時点で8.6万台、全たばこ自動販売機の3割ほど。1999年から2000年に大きく台数が伸びているが、これは「JT貸与機」の大幅な伸びが起因(1999年3月末時点で14.6万台だったものが2000年3月末には19.3万台、そして2001年3月末には22.0万台にまで増加している)。

その後自販機数はほぼ横ばい状態にあったが、貸与機に関する契約内容の変更、そしてタスポの導入施策(リース料は上記の通り無料だが、タスポ導入費用は設置側持ち)により、自販機の設置継続を断念するところが増える。さらに導入しても自販機での購入には手間がかかるので利用者が減少し、売上も減退し、採算が取れなくなる事例も出てくる。結果として台数は急激に減少してしまう。またこの「自販機での売上低迷化」が、上記のたばこ販売許可店の減少の一因を担っている。

2012年末時点でたばこ自動販売機台数は30.4万台。先の震災による直接の被害以外に、その後の生産調整に伴う入荷数・種類の減少、節電対策としての販売機自身の一時停止など、タスポ導入以降もマイナス要素が畳みかけるように発生しているため、減少度合いに歯止めはかからない。ピーク時の2001年-2002年における62万9000台と比べれば、ほぼ半分にまで減少している。

たばこ自販機の中にはいまだに主要照明を落としたままのものも多く、さらには節電のために停止したのち、本体そのものが撤去されてしまった事例も少なくない。たばこ販売本数そのものも減少傾向にあることを合わせて考えれば、今後も数を減らしていくに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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