Yahoo!ニュース

ノロウイルス対策・高い関心と誤情報の浸透

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 手洗いは有効な予防手段の一つではあるが…

冬場になると衛生面で話題に登るのがインフルエンザとノロウイルス。ノロウイルスは感染性胃腸炎や食中毒の原因となるウイルスで、冬季になると多数の発生事例が認められている。

↑ 月次事件数年次推移。厚生労働省・ノロウイルスに関するQ&Aから抜粋
↑ 月次事件数年次推移。厚生労働省・ノロウイルスに関するQ&Aから抜粋

感染・発症した場合、体力のある人は軽症で回復に向かうものの、体力に劣る人は重症化する場合が多々ある。その一方で現時点では抗ウイルス剤が無く、治療は対処療法に限られる(要は「この注射を打てばすぐに回復できる」というものが無い)のも重要なポイント。

発症起因となりやすい牡蠣の旬であることも合わせ、この時期になると報道で感染事例も多数報じられることもあり、ノロウイルスへの関心は高い。中でも「感染した時の対処法」にもっとも多く向けられており、55.8%の人が興味関心を抱いている(以後のグラフは森永乳業が2013年11月に発表した、ノロウイルスに関する調査結果から作成)。

↑ ノロウイルスについて関心の高い事項(複数回答)
↑ ノロウイルスについて関心の高い事項(複数回答)

「対処法」とほぼ同率で「予防法」が挙げられており、「感染は極力避けたい」「感染が確認されても正しい対処法を行い、被害を最小限に留めたい」との積極的な防疫姿勢が見られる。

ところがすでに実施している予防策、そして知識として知っている「有効な対策」を見ると、やや不安を覚える結果が出ている。

↑ ノロウイルスの予防法として実施していること、有効だと思うこと(複数回答)
↑ ノロウイルスの予防法として実施していること、有効だと思うこと(複数回答)

ノロウイルスによる感染は経口感染によるものがほとんど。それを起因とした食中毒の予防法としては「体の抵抗力をつける」「食品の十分な加熱による殺菌」「調理器具や食品取扱者からの二次感染の防止」「十分な手洗い(石けんやアルコールそのものには失活化効果は無いが、ウイルスそのものを患部からはがしやすくする効果が期待できる)」「感染起因となりやすい吐物などへの接触を防ぐ」などが挙げられる。つまりウイルスそのものを極力取りこまない、取り込んでも対抗できる体力をつけるという、対抗手段のみが有効とされる。

その観点では石けんでの手洗い(手の脂肪などの汚れを落とすことで、ウイルスを手指からはがれやすくする効果がある)やうがい、食材の加熱処理(食品の中心温度85度以上で1分以上の加熱実施により、感染性は無くなるとされている)は有効な手段ではあるものの、加熱処理以外には失活化の効果は望めない(「ノロウイルスに関するQ&A」(厚生労働省))。ところが昨今では「アルコール消毒をすれば確実に予防できる」との認識が一部で広まっており、高い「有効だと思う」の回答率が表れている。この誤認識が油断を生み、感染・発症に結びつくこともあり得るため、十分な注意が必要となる。

アルコール消毒は一部で認知されているような特効薬的、絶大な効果は無い。公的機関のサイトや医療機関が提供するパンフレットなどを基に、正しい知識でノロウイルスに臨みたいものだ。

■関連記事:

ノロウイルス感染経験者1割強、20代に限れば4人に1人

学校で子供、子供から自分へと二次感染…ノロウイルス感染ルートを探る

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事