学校、子供、そして親…ノロウイルス感染ルートを探る
感染性胃腸炎や食中毒の原因となる「ノロウイルス」は、その多くが経口感染(口の中に原因となるウイルスが入ることで感染する様式)で感染していく。牡蠣に代表される二枚貝で汚染されているものを生や十分に加熱調理せずに食する場合だけでなく、感染者が食事を調理するなどで触れた食品経由、さらには人同士の接触する機会が多い場で人から人へと飛沫感染などの直接感染の事例もある。
次以降のグラフは森永乳業が2013年11月に発表した、20代から70代の男女に対して行ったノロウイルスに関する実態調査の結果を基にしたものだが、同調査の調査対象母集団では過去5年間に回答者本人は12.8%、家族は15.6%がノロウイルスへの感染を経験している。
それらの感染経験者に、感染ルートを尋ねた結果が次のグラフ。ケガなどと異なり、ましてや目に見えないウイルスの感染経路ということもあり、具体的な場所が分からない回答者も多いが、それなりに興味深く、そして納得の行く結果が出ている。
把握されている回答者本人の感染事例としては「自分の子供」経由がもっとも多く1/4、次いで子供以外の同居家族からが17.5%、自分の通う学校・職場からが16.9%と続く。回答者自身の場合、感染経由は世間一般的にリスクが高いとされる「人の多い場所」「外食」よりも、子供経由により感染が多発しているのが分かる。
一方、回答者本人では無く、自分の家族の感染経路としては「学校・職場」が最多で31.0%。次いで「自分の子供から」「同居家族(子供以外)」が続いている。この状況からは「子供が学校でノロウイルスに感染」、そして「そのまま気が付かずに家庭で生活し、症状が発生した時には(すでに)自分を含めた家族も二次感染している」、あるいは「子供が具体的な食中毒などの症状を発した時の処理を誤り、自分も感染する」という二次感染の動きが多分にあることが推測できる。
集団生活という点では職場も同じだが、現場で感染者による中毒症状などが確認された時、正しい対処が出来る可能性は高く、その分感染率は低くなると考えられる。見方を変えれば、子供は適切な対応をする知識に欠けるため、学校内で中毒症状の事態が発生した場合、対応した、あるいはその環境周辺に居ただけの子供が二次感染をし、さらにはその子供が帰宅して自宅にまで感染を広めてしまうことが十分にあり得る。
事実、ノロウイルス感染経験者を「子供あり」「子供なし」、つまり自分の子供経由で感染する可能性のあるなしで区分し、回答者自身のノロウイルス感染経験を尋ねると、感染率で実に約3倍もの差が生じているのが分かる。
子供に「(共同生活施設のため感染リスクが高まる)学校に行くな」というのは無理な話。従って、子供の学校経由での感染リスクをゼロにすることは不可能。子供には理解できる範囲で公衆衛生の大切さ、ノロウイルスの特性や手洗いなど外部的予防対策の重要性を教え、おう吐物や風邪の症状がある状況を極力避けると共に、自分自身の体調に異常を感じたらすぐに学校ならば教師に、自宅ならば保護者に伝え、適切な対応をしてもらうことを周知させる必要がある。
さらに保護者側も知識の習得はもちろん、万一子供の感染が確認されたら、可及的速やかに正しい対処法をとれるよう、公的医療機関や厚生労働省のウェブサイトなどを介し日頃から必要最低限の「予習」が求められる。自分自身、そして家族全員、さらには日頃接する機会のある知人にまで係わることなのだから、おろそかにしてはいけない。
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