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妊娠女性の継続勤務には何が必要か、そしてその整備実態は

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 出産後の女性の就業復帰には保育園が使えるか否かも大きなポイントとなる

女性の就職、さらには就業期間の長期化に対する最大のハードルは、女性の妊娠、出産、そして育児に至る間、長期間の休業を余儀なくされてしまうことにある。法的には育児休業が一定期間認められているものの、その長さでは不十分という意見もある一方、休業中の金銭的なやりくり、復職してもサポート体制が整っていないため業務に対応できなくなるなど、さまざまな問題が山積している。また、出産という事情があるにしても、長期の休業に反発をする雰囲気を持つ職場もあり、女性側としては立場が厳しい。企業側も体制の整備や長期間の業務ラインの空白が生じることに難色を示すこともある。

そこで、実際に「妊娠時に被雇用者として就業中」だった、回答時点で6歳未満の子供と同居中の女性(就業の有無は問わない)に対し行った、「世間一般的には出産後も継続して就業するためには、どのような環境整備が必要になるか」そして「その環境は自分が出産した時、職場に整備されていたか否か」を聞いた結果が次のグラフ(内閣府男女共同参画局が2013年12月に発表した「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」から作成)。

↑ 出産後も働き続けるのには一般的にはどのようなことが必要か/その回答のうち、回答者自身が第一子出産時に当てはまっていたものは(第一子が1歳の時に就労していた女性限定)
↑ 出産後も働き続けるのには一般的にはどのようなことが必要か/その回答のうち、回答者自身が第一子出産時に当てはまっていたものは(第一子が1歳の時に就労していた女性限定)

最上位項目は「認可保育園・認証保育園などに子供を預けられること」で88.3%。出産後も就業し続けるためには、就業中に幼子を預けられる場所が必要になるという次第。祖父母や夫に育児を任せることが出来れば保育園は不必要だが、祖父母と同居している世帯は現在ではごく少数で、夫も就業している場合が多く、女性が就業するには「保育園」などの第三者に育児を任せる場が必要になる。ほとんどの女性が、出産後の就業継続には保育園の存在が欠かせないと考えているのも理解は出来る。

それに続くのは「配偶者の積極的なサポート」。保育園への育児依頼も時間は限定されてしまう。育児には多数の時間を取られるが、それに加えてこれまでの日常における家事もこなす必要がある。夫の手助けが必要という意見も、極めて道理にかなうもの。

また育児休業をはじめとした「休職が取りやすい職場であること」、「短時間労働など、職場に育児との両立支援制度があること」のような、子育ての女性への配慮がなされた仕組み・環境を職場に求める声は大きい。

ところがこれら「望ましい施策・条件」の導入傾向(回答者自身の実体験)を見ると、「配偶者のサポート」や「職場の休職・両立支援制度」の点で、求める声に比べてやや低めの値が出ている。また「職場における妊娠や育児に関する嫌がらせへの対処姿勢」でも、値が低めなのが目に留まる。

これについては日本の就業事情も多分にあるが、諸外国と比べて日本の男性における家事時間は少ないとの結果が出ている(少子化社会対策白書(旧少子化社会白書)から)。見方を変えればより多くの「手助け」が求められており、今件調査結果の裏付けにもなる。妊娠・育児の労苦への理解不足によるところもあり、個々の男性において善処が求められる。

↑ 6歳未満児をもつ夫の家事・育児時間(1日当たり)(2013年時点の最新データ)(時間:分)
↑ 6歳未満児をもつ夫の家事・育児時間(1日当たり)(2013年時点の最新データ)(時間:分)

企業側の姿勢では、育児・出産に対する企業全体としての理解認識不足がその理由だと考えられる。

組織としての支援の仕組み・制度を創り上げ、それを利用しやすいような雰囲気作りをするのには、大企業はともかく中小企業では正直難しい。だが可能な範囲で整えることで、環境は確実に改善されていく。企業の負担は間違いなく増えるが、女性就業者の定着率の上昇が果たされれば、中長期的には企業自身にもプラスとなるに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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