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「取りたい」「でも取れない」有職男性育児休業の悩み

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 男性が育児休業を取得を申請しても却下されることも少なくない

「妻の安静」「育児の手助け」男性の育児休業希望理由

子育て促進の社会的気運の高まり、兼業世帯の増加に伴い、男性も育児休業を積極的に取得すべきとの考えが広まり、男性自身も取得を願う人が増えている。一方で男性による育児休業取得状況はあまり思わしくない。

連合が2014年1月23日付で発表した、有職男性に対して行ったパタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査によれば、育児休業取得を希望した(取得できた・できないを問わず)有職男性は64.2%。それらの人になぜ育児休業を取りたいと思ったのかについて尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 育児休業を取った・取りたいと思う理由(複数回答)(育児休業取得者も含む、育児休業取得の希望があった・ある人)(男性)
↑ 育児休業を取った・取りたいと思う理由(複数回答)(育児休業取得者も含む、育児休業取得の希望があった・ある人)(男性)

上位の理由は「産後の妻の安静を確保したい」「妻だけで育児をするのは大変(なので手助けしたい)」でほぼ6割。出産後の妻を気づかい、自分も積極的に手を差し出さねばとの想いから、それを実現するための育児休業取得を望んでいる・望んだことになる。

「子供と向き合う時間が欲しい」がそれに続く51.6%の値を示している。定時に帰ることができれば夜に、そして休日はそれなりに子供と時間を共有できる。しかし実際には残業が多くなかなか対面できない事例も多い(他調査(内閣府)でも「残業の問題が無ければ育児をもっと積極的にできる」との結果が出ている。「男性の家事・育児の手伝いを積極化させるには?」)。さらに仕事に従事している時間すら惜しく、子供に接していたいとのも想いも理解は出来る。

育児休業を取りたい、でも取れない。その理由は?

しかしながらこのような想いを抱き、育児休業を取得しようと申請した・しようとしたができなかった人も少なくない。また取得したいが無理だろうと考えている人もいる。それらの人にとって、何が取得のハードルとなっているのだろうか。

↑ 育児休業を取得したかったができなかった・取得したいができないと思う理由(複数回答)(男性)(育児休業を取得したかったができなかった人・取得したいができないと思う人)
↑ 育児休業を取得したかったができなかった・取得したいができないと思う理由(複数回答)(男性)(育児休業を取得したかったができなかった人・取得したいができないと思う人)

唯一過半数の回答となったのは「仕事の代替要員が居ない」。制度は整備されている、同僚や上司の理解もある・あったかもしれないが、自分が休業すると仕事そのもののラインに穴が開いてしまうので、取得が叶わない。中小企業でよくある事例だが、このような状況であることが分かると、周囲も首を縦に振りにくく、申請した本人も取り下げてしまわざるを得なくなる。「仕方ないね」というパターンである。

次いで多い理由は「育休中は(無給のため)経済的に負担」。働き頭の夫の収入が減るのは家庭にとって負担が大きい。育児休業給付が雇用保険の制度として整備されており、男性でも取得可能だが、就労時の給与の満額が保障されているわけではない。収入はがっつりと減る。

以下、「上司に理解が無い」「仕事から離れると元の職場に戻れるか分からない」「昇進・昇給への悪影響が懸念される」「同僚に理解が無い」など、職場における環境の整備不足(による不安)を原因とする回答が続いている。

男性の育児を妨げるもっとも大きな要因は残業をはじめとした「仕事による時間不足」。育児休業取得の場合は「周辺の無理解」「制度の不整備(代替人員含む)」「経済的な不安」「復帰後の職務上の不安」が加わる。日本では男性の育児関与そのものが少数派的な状態だっため、理解も薄く制度も不十分なのはある程度仕方がない面もある。

無論社会的需要が生じ、増加しているのなら、環境を整え、意識を変え、臨機応変に対応させていかねばなるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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