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動画の「慣れ」でトラブるダマシのテクニック

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 衝撃的な動画のURLとそのサムネイルのように見えるが……

YouTubeをはじめとした動画共有サイトの普及、スマートフォンの利用率拡大に伴う動画コンテンツの投稿数の累乗的な増加、浸透、そして動画の需給拡大に伴うウェブサービスへの転用の仕組みの実装で、ブログやソーシャルメディア上に動画を披露する機会が増えている。ブログには気軽にブログパーツを用いて動画を貼りつけることができ、Facebookやツイッターで動画URLを発言すれば、その動画のサムネイルが表示される。しかしそれら動画のネットコミュニケーション上への浸透と共に、その仕組みによる慣れを悪用する事例も見受けられるようになった。

以前「僕がツイッターの面白系botをRTしないワケ」で紹介した「盗用コンテンツを用いて集客を行うツイッターアカウント」と連動する形で、この動画掲載の仕組みを用いた「ダマシのテクニック」による問題がツイッター上で発生したので、注意喚起も合わせて解説を行う。

動画のURLがツイート内にあると、その動画のサムネイルが表示されることは皆が知っている。

↑ 動画のURLが貼られると、その動画のサムネイルが表示される
↑ 動画のURLが貼られると、その動画のサムネイルが表示される

何度もこのパターンを目に留めているので、そしてツイッターのツイートはじっくりと読み解くタイプではないこともあり、「動画の説明的なテキスト」「動画のURLっぽいURL」「サムネイル(的な画像)」が視界に収まると、それらがすべて連動した一連のコンテンツだと認識してしまう。

今回問題となったのは、この認識、慣れを使ってワナをしかけたもの。3要素のうち「サムネイル」の部分を、別途それらしく見える画像で用意。さらに「動画のURLっぽいURL」を、圧縮した上でおおもとのURLが分からないようにして警戒感を薄れさせ、一連のコンテンツであると誤認させるものだった。

↑ 「動画の説明的なテキスト」「動画のURLっぽいURL」「画像」が表示されると、「画像」を動画のサムネイルと誤認してしまう
↑ 「動画の説明的なテキスト」「動画のURLっぽいURL」「画像」が表示されると、「画像」を動画のサムネイルと誤認してしまう

一連のパターンに見慣れていることから、第一印象で、さらにインパクトのあるテキストや画像に意識が集中してしまう。実は動画のサムネイルのような画像は動画のサムネイルでは無く、「動画のサムネイルと思わせる画像URL」の画像であるにも関わらず、それには気が付かずに、「該当動画と誤認させるURL(実はトラップ先のスクリプト)」をクリックしてしまうことになる。ちなみに今件の場合、該当URLをクリックすると認証画面が現れ、それを了承すると同様のツイートを勝手に投稿して拡散するようになり、さらに特定のツイッターアカウント(盗用コンテンツを用いて集客を行うツイッターアカウント)を自動的にフォローしてしまうなどの問題点が発生する。

↑ 黄色い部分にのみ注目してしまい、つい動画指定のようなURLをクリックしてしまう
↑ 黄色い部分にのみ注目してしまい、つい動画指定のようなURLをクリックしてしまう

また、実際には動画を観ずに、サムネイルのような画像とテキストのインパクトだけで、中身の確認もせずに公式RTをしてしまうこともある。これも仕掛けた側の思うつぼ。それだけ多くの人がワナにかかる可能性が増えるからだ。

今件はツイッター上での話だが、類似事例として「Mステ出演禁止歌手一覧」などが確認されている。そして仕掛け側の手元に仕組み(トラップとなるスクリプト)があれば、トレンドの注目事象のテキストと画像を用意するだけで、いくらでも同じワナを仕掛ける事が出来ることは間違いない。

恐らくは似たような手口で、再び同様のワナが仕掛けられ、ダマシを行う可能性は高い。先の「盗用コンテンツを用いて集客を行う面白系bot」同様、くれぐれも注意してほしい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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