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自転車事故は本当に増えているのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自転車のみの転倒ならまだよいのだが……

かねてからのエコブーム、ガソリン代の節約、さらには健康志向を反映し、自転車の利用が持てはやされている。さらにリスク分散的な移動手段としても注目を集めるようになり、自転車の利用は特に震災以降増加したといわれている。それと共に、自転車利用中のトラブルも増え、事故は増加し、結果として自転車関連の交通規制の強化も実施されている(一例:「警察庁、自転車の歩道通行への対応見直しを通知」)……と言われている。

公的機関による自転車への規制・取り締まり強化は事実。しかし「自転車事故の増加」も事実なのだろうか。そこで警察庁が今年の2月に発表した報告書「平成25年中の交通事故の発生状況」などをもとに、自転車事故の動向を調べることにした。

今件資料、及びそれに先行する形で発表されている「交通事故死者数について」によれば、2013年の日本国内における交通事故全体(自転車のみに非ず)の発生件数は62万9021件(前年比-5.4%)、死者数は4373人(-0.9%)だった。

↑ 1946年-2013年の交通事故発生件数・負傷者数・死者数(人)
↑ 1946年-2013年の交通事故発生件数・負傷者数・死者数(人)

この「交通事故全体の件数」と、「自転車乗用者(第1・2当事者)の法令違反別死傷者数の推移(各年12月末)」を合わせ、「自転車による事故が交通事故全体においてどのような位置づけ・比率にあるか」を示したのが次のグラフ。

事故件数は自転車が第1当事者(最初に交通事故に関与した車両の該当者のうち、過失の重い側)・第2当事者(最初に交通事故に関与した車両該当者のうち、第1当事者以外の人)となった件数。自転車同士の場合は重複を避けるため1件として数えている。

↑ 交通事故全体件数と自転車事故件数、およびその比率(-2013年)
↑ 交通事故全体件数と自転車事故件数、およびその比率(-2013年)

交通事故件数全体数と同じく、自転車による事故件数も「第二次交通戦争」(1988年)以降減少を続けている。しかし自動車ほど啓蒙活動や安全対策が徹底しておらず、運転免許も要らずに運転できること、そして自転車の高リスク利用者(若年層、お年寄り)が増加したことなど複数の要因から、減少率はゆるかやなレベルに留まっている(減少していることに違いはない)。

結果として「交通事故全体」に占める、「自転車事故の件数」比率は増加の傾向にあった。昨今では啓蒙活動などが功を奏したこともあり、ようやく減少傾向に転じている。2012年では6年ぶりに、交通事故全体に占める比率が2割を切り、比率上の減少は2013年でも継続、2003年以来の18%台となった。

この流れは交通事故全体ではなく「死者数」に限定した場合でも、大体同じような状況。ただし2013年に限ると、前年から再び上昇の動きを示しているのが気になるところ。

↑ 交通事故全体死者数と自転車事故死者数、およびその比率(-2013年)
↑ 交通事故全体死者数と自転車事故死者数、およびその比率(-2013年)
↑ 2010-2013年における自転車乗用中の年齢層別死者数比率
↑ 2010-2013年における自転車乗用中の年齢層別死者数比率

さらに高齢者の死亡比率が高く、60歳以上で7割を超えていること、直近数年では増加の兆しすら見えている点も要注意(各世代の人口比率をはるかに超え、高齢者が多い)。

結果として、警察に届けられる自転車の事故件数は減少傾向にあり、増加云々という話はイメージ的なものでしかなかったことが分かる。もちろんゼロでない以上、さらなる事故防止の啓蒙努力が求められる。また今件はあくまでも届け出られた件数に過ぎず、警察沙汰にはならなかった事故、事故になりかけたヒヤリハット的な事例は含まれていない。これはそもそも数字としてカウントできるものでは無いため、過去との比較は難しいが、自転車そのものの利用増加に伴い増加している可能性は十分にある。

自動車やバイクと異なり、自転車では事故の際の当事者の保護装置(シートベルトやエアバッグ)も無く、利用者の多くが十分な保険に加入していない。自転車に乗る際にヘルメットはともかく、バイクに乗る時のような専用のライダースーツを着用し、肘・ひざ当てを付ける人は(ロードバイクのような専用の自転車を駆る人以外は)滅多に見られない。そして自転車事故でも十分以上に、相手にも大きな被害を与え得る。自転車だからと気軽に考えることなく、自動車同様に安全運転を心掛けてほしいものである。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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