縮小するビデオソフト市場の「なぜ?」を探る
市場規模も購入・レンタル体験者も減少中
趣味趣向の多様化や新しい受信メディアの登場に伴い、物理メディアとして提供されるDVD・BD(ブレーレイディスク)による映像ソフトの市場規模は年々減少を続けている。次に示すのは日本映像ソフト協会が2014年4月に発表した白書「映像ソフト市場規模及びユーザー動向調査」によるデータを基にしたものだが、それによれば全般的にはセル(販売)・レンタル(貸出)共に縮小傾向にある。2013年からは白書上の総売り上げデータに「有料動画配信市場」(「定額見放題サービス」「都度課金サービス」「有料動画購入サービス」など)を計上したため合計額は増加しているものの、物理メディアのみに限れば縮小を継続していることに変わりはない。
このうち物理メディア、DVDとBDによるソフトの購入・レンタルに関して、該当年1年間で購入やレンタル経験が調査回答者自身にあったか否かを尋ねた結果が次のグラフ。
グラフ右端の「購入・レンタル共になし」の回答率が漸増し、ビデオソフトを購入、あるいはレンタルする人が減っていることが分かる。特に2009年から2010年への減少度合いが著しい。
直近の2013年では「購入・レンタル共に無し」以外、つまり1枚でもビデオソフトを購入したかレンタルした人が4割強にまで落ち込み、各区分が前年2012年より減っているのが分かる。コンテンツ購入者の減少云々は別として(今件では有料動画配信のみの購入者は含まれていない)、物理メディアによる利用者は確実に減少している。
それでは購入者に限れば、いかなる購入性向の変化が生じているのか。それぞれの年において、該当年だけでなくそれ以前年においてもビデオソフトを購入したことがある人に、該当年とその前年を比べた上で購入枚数の変化を聞いたのが次のグラフ。
一部イレギュラーな動きはあるが、概して購入しなくなった人は増え、購入枚数が増えた人は減っている。購入しない人の増加だけでなく、購入者における「大量購入者」比率が減っていることがうかがえる。
ちなみに2013年のビデオソフト購入者における平均購入枚数はDVDが3.2枚(前年比プラスマイナスゼロ枚)、BDが3.4枚(前年比プラス0.6枚)となっている。購入対象者数が減少している一方で、購入者内の一部層(いわゆるコア層)の購入枚数が増加しており、結果として購入層内の平均枚数が増加する現象が起きている。
ビデオソフト離れの原因は……
ではなぜビデオソフト離れが起きているのか。その理由を探るため、「増えた人」「減った人(ゼロ枚に減った、つまり「買わなくなった人」含む)」に、その理由を聞いた結果のうち上位5位ずつを抽出したのが次のグラフ。
増えた人の理由の上位は「特定のソフトが欲しい」「ネット経由で気軽に買えるようになった」「魅力的特典のついたソフトが増えた」など、特定コア層の事由によるもの、そして環境の変化によるところが大きい。一方、減った理由の上位には、購入対象ソフトの減少や金銭的な余裕が無くなったことなど、「熱が醒めた」様子がうかがえる。また購入しなくても同様の楽しみを実感できる選択肢、例えばテレビ録画やインターネットの無料動画視聴が上位に入っており、ビデオソフト購入の相対的な意義・有益性が減っていることが示唆されている。
要は、「好きな人」は一層買い増しをするようになり、一部は環境整備の恩恵で購入を決意する。「醒めた人」「コアで無い人」、あるいは画質などにこだわりを持たない人は他のテレビ録画やネットなどの選択肢で満足し、あるいは買わなくなる。上記項目の選択肢には無いが、市場規模を見れば有料動画配信にコンテンツ視聴のスタイルをシフトした人(これまではDVDなどの物理メディアを購入して映画やアニメを楽しんでいたが、今後は有料動画配信で視聴するというパターン)もいるのだろう。それらを含め、購入層の二極化が進んでいると見ると、道理が通る。
市場規模の維持、さらには拡大のために欠かせないのが「広く浅く」の施策。しかしそれを行うための対象となる、いわゆる「ライトユーザー」の少なからずが、ソフト購入以上にハードルの低い、インターネット関連サービスやテレビ録画に流れている。よほどビデオソフト業界としては工夫をしないと、状況の改善は難しい。
あるいは「コンテンツを販売すれば良い」との広義の解釈を行い、有料動画配信市場を物理メディアからのシフト市場としてとらえ、積極的に推し進める施策も考えられる。収益性の問題もあるが、試行錯誤をする価値は十分にある。何しろすでに2013年の時点で、有料動画配信市場は600億円近い市場規模を確保しているのだから。
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