「美味しんぼ」言及の「がれき処理焼却場近くに住む1000人」の住まいはどこだろうか

↑ 該当する大阪市環境局舞洲工場周辺。いわゆる工業地帯

小学館発行の週刊少年雑誌ビックコミックスピリッツの連載漫画「美味しんぼ」の内容に関し、福島県の双葉町、福島県に続き、大阪府・大阪市も抗議の声明を発表した。大阪府などが抗議をしたのは、5月12日発売号掲載の内容で、大阪府が処理をした震災がれきに関し、次のような表現があったため(「漫画『美味しんぼ』での本府の災害廃棄物処理に関する記述について(大阪府)」)。

「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む住民1000人ほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、放射線だけの影響と断定はできませんが、眼や呼吸器系の症状が出ています。」

「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える人が約800人もあったのです。」

(大阪府リリースより抜粋。該当誌で内容が正しいことを確認済み)

これは作中に登場した岐阜(県)環境医学研究所所長の松井英介氏の言によるところ。これについて大阪府では該当する焼却工場がある此花区役所、同保健福祉センター、此花区医師会に確認をしたが、処理中においても、その後においても、そのような状況は認めらなかったとし、また安全性についても各種手段を用いて確認をし、安全に処理をしたと説明している。いわく「各過程の空間放射線量率については全て受け入れの前後で値に変化はなく、安全に処理していることを確認しています」とのこと。

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さて、「美味しんぼ」における文言と大阪府のリリースから、「近くに住む1000人のうち800人もの人が鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴えたがれき処理場」を特定できる。大阪市環境局舞洲(まいしま)工場である。処理プロセスは大阪府の公式ページ「岩手県の災害廃棄物の受入れについて」にあるのでそちらで確認してもらうとして(その記述にある通り同焼却場で処理されたのは岩手県の震災がれきである)、該当工場をGoogleマップで確認すると次の通りとなる(「大阪市環境局舞洲工場(Googleマップ)」)。

↑ Googleマップによる大阪市環境局舞洲工場とその周辺
↑ Googleマップによる大阪市環境局舞洲工場とその周辺

いわゆる工業地帯で、住宅地はほとんど周囲には見当たらない。1.5キロから2キロほど南東に行くことでようやく住宅地帯が確認できるが、それより近場には多数の工場、そしてあのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が存在する。

↑ Googleマップによる大阪市環境局舞洲工場(左)とUSJ(右)。USJの方が焼却場に近い
↑ Googleマップによる大阪市環境局舞洲工場(左)とUSJ(右)。USJの方が焼却場に近い

工場地帯で働く人たちやUSJで遊んでいる人達よりも遠い距離に住む人たちを、仮に「焼却場の近くに住む住民」と定義したとする(実データからはそのようにしか判断できない)。そしてその人たちの8割もが「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える」状況にある環境下におかれていたのだとしたら、USJや工場地帯に居る人達は、どのような影響を受けているのだろうか。作品中で暗にほのめかされている、がれき処理によって露呈した放射性物質による影響だとすればもちろん、そうでない場合でも、大きな問題に違いない。

そして今件「美味しんぼ」では実在する人物に語らせ、「放射線だけの影響と断定はできませんが」としながらも、文脈上多分にその可能性(がれき処理で生じた放射性物質が外部に露呈し、その影響で住民たちが症状を発している)を読み手に覚えさせる形で表現している。

大阪府が「焼却工場の存在する此花区役所、同保健福祉センター、此花区医師会に確認をしましたが、処理中においても、その後においても、そのような状況は認められませんでした」とわざわざ太文字で言及するのも理解はできる。実際、そのような状況が発生していれば、とうの昔に大きな騒動となっていなければならない。しかし現実ではそうではない。

引き続き「震災がれきを処理した焼却場の近くに住む、病症を発した800人を有する住民1000人」の居住地域について、正しい情報を求めたいところだ。

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