Yahoo!ニュース

いわゆる「未婚の母」による出生率の現状、日本と諸外国と

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 社会様式によって大きく異なる「未婚の母」という状況の存在比率だが……

日本では約2%の非嫡出子率

アメリカなどの欧米諸国の一部で出生率が高い原因の一つに、「結婚していない女性により出生した子供(婚外子、非嫡出子)」の増加がある。それでは同じ先進国で、欧米諸国よりもはるかに低い出生率に留まっている日本ではどのような状況なのだろうか。「日本における婚外子の比率」などに関し、厚生労働省の「人口動態調査」から確認をしていく。

次のデータは「人口動態調査」から非嫡出子に該当する「嫡出でない子」について原数値を抽出し、その上で各年における「出生総数に占める、嫡出でない子の割合」を算出した結果。公開されているもっとも古い1947年では3.79%、最新値の2012年分では2.23%(嫡出子101万4093人、嫡出でない子は2万3138人)という結果が出た。

↑ 出生総数に占める嫡出でない子の割合(-2012年)
↑ 出生総数に占める嫡出でない子の割合(-2012年)

データ収録開始直後の1947年からしばらくは戦後の混乱期という事情から、嫡出でない子の比率は(日本としては)極めて高く4%近くに達している。その後1975年から1980年の高度成長期までは低下を続け、その後再び増加を見せる。このタイミングは「1950年の20代後半男性未婚率は3割強・世代別未婚率の推移をグラフ化してみる」「30代前半でも男性未婚率は約半数・世代別未婚率の推移をグラフ化してみる(2010年国勢調査反映版)」などでも触れているように、高度成長期であると共に日本の人口関連の動向におけるターニングポイントでもあり、非常に興味深い動きといえる。

諸外国の状況を探る

出生率の増減のカギを握る、出生全体における「嫡出でない子」の比率は、日本では極めて小さい。他方アメリカでは特に、ヒスパニック系の人たちをはじめとした非白人の割合が高いことが知られている。

↑ アメリカの主要人種別「婚外子出生率」
↑ アメリカの主要人種別「婚外子出生率」

これはアメリカ(をはじめとした諸外国)では「結婚しないまま子供を出産する」(非嫡出子)事象が社会的・文化的に容認されつつあること、国や社会全体が支援する仕組みを構築しつつある(あるいは個人の「何とかなるだろう」という楽観的な考え方、「そうせざるを得ない」という悲観的状況の増加など)が要因。この非嫡出子の増加が出生率そのものを押し上げている。

それでは日本とアメリカ以外の状況はどうなのだろうか。アメリカの疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)内の検証レポート「Changing Patterns of Nonmarital Childbearing in the United States」内では、多少古い値ではあるが、日本・アメリカを含む諸外国の動向(しかも1980年当時のデータも併記される形で)取得することができる。

↑ 主要国の「婚外子出生率」率(1980年と2007年、CDCから)
↑ 主要国の「婚外子出生率」率(1980年と2007年、CDCから)

グラフから見れば分かるように、これらの国の多くは日本より婚姻率が低いにも関わらず、出生率は高く、その要因として嫡出でない子の存在が挙げられる。またアメリカだけに限らず諸外国でも、年と共に嫡出でない子供の割合が増加している。

国の経済的な発展(先進国化)と少子化との関係は、いわば「先進国病」的なものとして常に連動して発生する。「少子化社会白書・平成16年版」の中で「世界的にみれば、ほとんどの先進国が少子化社会となっているが、北部ヨーロッパのアイスランド、アイルランド、西部ヨーロッパのフランス、北アメリカのアメリカが、比較的高い合計特殊出生率の水準を維持している」と解説されているが、それらの国は押し並べて「嫡出でない子」の比率が高く、それらが深い関係にあることが分かる。

また第一生命が以前に発表したレポート「日本における「結婚」へのこだわりと婚外子(PDF)」でも興味深く納得のいく解説がなされている。いわく、日本は婚姻内での出生にこだわる社会文化があり、これがいわゆる「できちゃった婚」の増加の一因であると推定すると共に、上記に挙げた出生率の高い先進諸国では「婚姻率の相対的な低さを事実婚や同棲の一般化が補っている部分があり、非婚カップルに生まれる婚外子出生率の高さが、全体の出生率低下に歯止めをかけていると指摘されている」と言及している。これも納得のいく解説といえよう。また同レポートでは同時に、スウェーデンにおける婚外子へのサポートの厚さをはじめ、社会制度の柔軟さにも注目すべきであるとしている。

これらの事例を見る限り、半ば先進国病ともいえる出生率の低下と、それを補うような形で浸透している「嫡出でない子」の増加。これが出生率の維持・増加のカギであるのは間違いない。そして日本(に限らずアジア全般)では社会文化などから、これらの値が低く、それがアジア諸国において先進化すると出生率が急速に低下する要因とも考えられよう。

※2014.07.21.19:05 追記

今件記事で言及されている状態「未婚の母」に関しては社会通念、当事者や関係者の意志、文化的背景、環境整備、その他多数の問題、要因をはらんでおります。一概に肯定・否定できるものではありません。また主旨・方法論として「出生率の上昇には「嫡出でない子」の増加を図るのみ」というものでも無いことを書き加えておきます。

■関連記事:

理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる…(下)理想数まで子供を持たない理由(2010年分反映版)

「結婚すべき・した方がいい」日本では6割強、では世界では…? 諸外国の若年層での結婚観

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事