あともうチョイだけど4万円に届かず、サラリーマンのこづかい事情
前年比幾分増加、なお4万円には届かないサラリーマンのおこづかい
日本の就労者の就業職種のうち多分な割合を占めるサラリーマンの生活様式は、それらの人々自身だけでなく、日本の社会全体の状況を推し量る一つの指標となる。新生銀行では毎年1回、このサラリーマン(など)の日常生活に関する調査「サラリーマンのお小遣い調査」を行い、その結果を公開している。今回はその最新版にあたる、2014年6月に発表した「2014年サラリーマンのお小遣い調査」の結果を元に、直近、そして近年におけるサラリーマンの小遣い事情を確認していく。
年齢階層別のおこづかい推移は次の通りとなる。2014年のものだけでなく、直近6年分のをまとめている。
全体としては前年の減少傾向から転じて増額、プラス1115円の3万9572円。1980年の3万9600円にほぼ等しい値となった。金融危機が勃発する前には当たり前だった4万円台に、今年も届かない状態。
金額自身は50代がもっとも大きく4万2110円、次いで40代の4万1170円、20代の3万7865円、30代の3万7145円が続く。去年からの増減額では40代が最大の約4200円のプラス、次いで50代が約800円のプラス。20代は逆に600円強のマイナス。前年比マイナスは20代のみで、2014年のお小遣い事情は歳を経るほどほくほく顔状態。なお世代別で見るとこの6年間では唯一20代のみが毎年小遣い額を減らしており、若年層のお財布事情が大いに懸念される。
一方、今年だけでなく数年来続いている傾向だが、20代から50代のサラリーマンでは、給与が一番少ないはずの20代ではなく、30代から40代の中堅層が一番、おこづかいの額面では小さな値を示している。付き合いも増え半ば強制的な出費もかさむこの世代には、冬の時代が継続中といえる。
この状況の一因として考えられるのが育児費用による圧迫。「子供あり」の世帯では40代位になると子供が成長することで出費もかさみ、家計が厳しくなる状況を反映していると仮定すれば理解はしやすくなる。グラフ化は略するが、全体のうち子供が居る世帯の平均値は3万4963円・居ない世帯は3万7617円となり、小さからぬ差異が生じていることからも、その推論は裏付けられる。
昇給機会はやや回復基調
次のグラフは今年も含めた直近4年における、各世代の昇給の有無を尋ね、「あり」の人の割合を示したもの。
2014年は2013年から転じて昇給があった人の割合は幾分増加。これは主に20代と50代の増加によるところが大きい。元々の給与額は若年層の方が低いだけに、昇給機会が多くないと生活に余裕が出来ず、こづかい増額の期待も薄くなる。それゆえ、今年2014年の20代における昇給率の増加は喜ばしい話ではある。他方、30代はこの4年間、連続して昇給割合が減少中。40代も増加幅はわずかなもので、小遣い額そのものと共に、悲哀を多分に覚える中堅層の感はある。
さらに公開されているデータを元に、毎年のサラリーマンの小遣い状況の推移と、日経平均株価(年末の値、2014年は6月27日終値)をかぶせると次のようなグラフが完成する。
1991年以降のバブル崩壊後においては、こづかい額は日経平均株価に1年から2年遅行する形で連動する動きを示している。これはまさに景気対策・政策の実行と、その成果が民間ベースにまで浸透するタイミングと近いもので、興味深い傾向でもある。
2014年では前年と比べて株価はわずかに上昇した(時系列上では500円ほどのプラス)、つまり経済そのものが回復あるいはその見通しが見えてきたと受け止められる。今年のこづかい額上昇は2年ほど前からの株価の上昇がようやく影響を与え始めたところだろうか。こづかい額の上下に大きな影響を与える「昇給有」の率が前年比でプラスに転じたのも、理解の助けとなる。このまま株価動向・景況感の回復が続けば、来年も引き続き小遣い額は増加を続け、4万円台の回復も期待できる。
一部からは「金融商品への投資には無縁なので、株価は自分には関係ない」という声も聞かれる。しかし「株価の上下が(間接的に、相関関係として)こづかいの上下にも連動する」との事実を知れば、経済全体や株価への見る目も変わるに違いない。
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