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サラリーマンのこづかい防衛作戦2014

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 手のひらからこぼれ落ちていくようなおこづかい。その防衛策とは!?

三大節約方法「昼食代削減」「衝動買い防止」「弁当持参」

こづかいは多くのサラリーマンにとって身近で、大きな直接的影響を自分に与える金銭問題。そのこづかいが自分の望む額でない場合、多種多様な工夫を凝らし、節約をする必要に迫られる。その実情について、新生銀行が定点調査をしている、サラリーマンのおこづかい事情を調査した報告書「サラリーマンのお小遣い調査」を元に「こづかい防衛作戦」の実態を見ていくことにする。

サラリーマンの直近における平均こづかい額は約3万9572円となり、昨年と比べて1000円強のアップが確認されている。

↑ サラリーマンの平均月額こづかい(単位・円)(-2014年)
↑ サラリーマンの平均月額こづかい(単位・円)(-2014年)

この額では不足する人も多い。必要経費に近い昼食代、携帯電話代などを差し引くと、自分の自由意思を反映できる余剰資金にどれだけ残せるかを考えれば、誰もが納得できる。

「おこづかいが足りない、首が回らない」。その事態が発生した際、どのような工夫・節約で「こづかい防衛」を果たしているのだろうか。上位項目を世代別に区分し、グラフ化したのが次の図。全体、そして各世代でも「昼食代(を削る)」がもっとも多く3割近くとなった。

↑ こづかい面における自衛策(対処する項目、一部、世代別)(2014年)
↑ こづかい面における自衛策(対処する項目、一部、世代別)(2014年)

具体的には外食のグレードを下げたり、購入弁当では追加の惣菜やデザートをあきらめるというアクションだろう。特に2014年においてこづかい額が世代別ではもっとも低い30代で最多回答を占めており、切迫感を覚える。

続く回答は「衝動買い」。ちょっとしたもののはずみ、勢いに任せてサービスを受けたり商品を購入してしまう行動を、出来るだけセーブする。普段衝動買いの機会が多い人ほど、それをひかえることでこづかい防衛の効果が出ることを考えれば、若年層ほど高い値が出るのも道理は通る。

「弁当持参」は全体で16.7%。こちらも若年層ほど高い値。中堅層以降で値が低くなる(40代が空白なのは公開値の第5位以内に無いため)のは、気恥ずかしさや見栄があるのかもしれない。

「少しでも歩く」は全体で16.3%。若年層が高めだが、中堅層以降でもそこそこの値を示している。駅と自宅との間をバスなどを使わずに徒歩で通勤、乗車区間=電車賃を節約できるのなら、最寄駅では無く少々離れた駅まで歩いて利用するなどが想定される。健康増進という観点でもこの選択を行う人も多いことだろう。

どうしても足りない時にはどうすべきか

出費がかさむ、あるいは支出したいものがある、しかし節約しただけではどうしても足りない。その場合、その資金をねん出するのにはどのような手段を用いるのか。もっとも多くのサラリーマンが同意した回答は、「使わずに我慢」だった。歳を経るほど値が落ちるが、大体7割程度の人が「こつがいが足りない時は我慢して使わない」と答えている。

↑ こづかい不足の際のねん出方法(複数回答)(2014年)
↑ こづかい不足の際のねん出方法(複数回答)(2014年)

「使わずに我慢」はこの数年増加する傾向にある。こづかい面では「サラリーマン」ならぬ「ガマ(ン)リーマン」的な状況。

次いで多いのは「預貯金の取り崩し」「家計からねん出」。不足理由次第だが、一時的な出費、突発事項による不足の場合(例えば友達の結婚式へのお呼ばれ)ならば、納得はできる。

2013年調査分から項目に加わった「副収入」(ポイントサイト、株式投資、アルバイト、FXやネットオークションなど)は10.4%。これらの手段はその内容次第で必ずしも「収入」が手に入るとは限らない。にも関わらず「ねん出できる」という点では関心させられる。むしろさらにこづかいが減る可能性も十分にあるのだが。

このねん出方法の上位陣、気になる項目を、経年変化を見たのが次のグラフ。

↑ こづかい不足の際のねん出方法(サラリーマン、上位5位変移、複数回答)(-2014年)
↑ こづかい不足の際のねん出方法(サラリーマン、上位5位変移、複数回答)(-2014年)

「預貯金の取り崩し」「家計からねん出」「クレカ利用」といった、他方面から融通する方法は中期的に減少している。一方で「使わずに我慢」はこの数年大きな上昇を示している。この項目が上昇を始めた2011年は、こづかい額が大きく減少した2010年の翌年にあたる。このことから、こづかい実額の大削減に伴い、サラリーマンに心境の大きな変化が生じた結果が数字となって表れたように思える。具体的には「やりくりしてもどうにかなる額ではないので、あきらめよう」というところ。その傾向は直近の2014年でも継続している。

出費上の我慢は浪費を防げる。しかし同時に当事者のストレスは溜まる。浪費を奨励するわけではないが、7割前後が「足りなかったら我慢する」との状況は、健全とは言い難い。見方を変えればこの値が、2010年当時の50%台にまで低下すれば、サラリーマンのこづかい事情も改善の兆しが見えてくる、と見ることもできよう。あるいはサラリーマンの心情そのものに大きな変化が生じ、この値は上値のまま半固定されてしまう可能性も否定できないが。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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