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子供達が「妖怪ウォッチ」を受け入れた理由(上)…メディアミックス編

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 発売初週は5万本強のセールスを示した「妖怪ウォッチ」

販売初週で「元祖」「本家」合わせて100万本超のセールスを打ち出した「妖怪ウォッチ2」。昨年7月に発売された「妖怪ウォッチ」の続編のタイトルで、今では関連商品も合わせ多くの子供達をとりこにしている。その状況について、ゲーム自身の紹介・解説では無く、一歩引いた視線から考察を行うことにする。まずは「メディアミックス」との観点から、「妖怪ウォッチ」が子供達に受け入れられた理由を考えてみる。

「メディアミックス」とは複数のメディアで同一作品・世界観を共有するものを展開し、相乗効果を狙う手法。異なるメディアで作品を披露することで、多方面の属性からファンのハートをつかみ、「流行っている」「皆が知っている」などの普及感を演出できる。本屋やコンビニで同じテーマを持つ商品を複数見かければ、作品そのものを知らなかった人にも目に留まり、興味関心をいだくきっかけになる。

「妖怪ウォッチ」は元々メディアミックス(開発元のレベルファイブでは「クロスメディアプロジェクト」と呼称している)戦略を前提とし、多方面でのメディア展開を前提としていた。この手法は同社では先行する作品「イナズマイレブン」「ダンボール戦機」などで実行しており、経験則もある。

子供向けであることもあり、2013年7月の「妖怪ウォッチ」発売当時からアニメらしさを前面に押し立て、ハードルの低さ・親しみやすさを演出し、子供達の注目を集めている。

↑ 「妖怪ウォッチ」初代の紹介用映像(公式)。アニメそのもの。

またソフト発売とほぼ同時期に子供向けの漫画誌「別冊コロコロコミックス」で連載がはじまり、世界観の補完を試みている(先行する2013年1月号より「月刊コロコロコミック」で連載が開始されている)。その後、他のソフト同様時間の経過と共にソフトの売れ行きも鎮静化するが、設定の巧みさ、ゲームそのものの内容の奥深さが子供達に受け入れられ(詳しくは後編で解説)、他のソフトと比べて販売本数の落ち方はゆるやかなものとなっている。さらに2013年11月には「コロコロイチバン!」で、年末には女の子向け漫画雑誌「ちゃお」でも連載が始まる。

特に「ちゃお」は50万部を超える発行部数を有している大手雑誌であることに加え、女の子向け雑誌なことから、これまでとは異なる新たな属性へのアプローチに貢献する。このあたりからソフト本体も再びセールスが伸びはじめる。

そして2014年1月には「テレビアニメの放映開始」「ともだちウキウキペディアの展開」「玩具の妖怪メダルの発売」など、一気に複数メディアでのアプローチが始まる。特にテレビアニメの影響は大きく、子供達の話題に登ることとなり、それがソフト本体、同じ世界観を有する各種関連玩具への注目につながり、相乗効果を果たし、人気はさらに高まることとなった。

↑ テレビ東京によるアニメ「妖怪ウォッチ」の作品に関する公式映像

さらには続編「2」の発売決定が後押しし、「2」の予約受付開始までセールスは再び伸び、その後実際の「2」発売まで堅調な売れ行きは続く。発売から1年近い2014年5月には販売本数(出荷では無い)100万本を突破し、真の意味でのミリオンセラーの仲間入りも果たした(出荷ベースでは1か月前の2014年4月に達成している)。

↑ 「妖怪ウォッチ」単週販売本数推移(メディアクリエイトの公式単週発表データを基に独自作成。一部データ欠損のため自動補正部分あり)
↑ 「妖怪ウォッチ」単週販売本数推移(メディアクリエイトの公式単週発表データを基に独自作成。一部データ欠損のため自動補正部分あり)
↑ 「妖怪ウォッチ」累計販売本数推移(メディアクリエイトの公式単週発表データを基に独自作成。一部データ欠損のため自動補正部分あり)
↑ 「妖怪ウォッチ」累計販売本数推移(メディアクリエイトの公式単週発表データを基に独自作成。一部データ欠損のため自動補正部分あり)

ゲームソフト本体以外のメディア展開タイミングを見ると、発売と同時に漫画の掲載開始、年末に向けてさらに2本(うち1本は女の子向け)の連載をはじめ、それと前後してテレビアニメに関する情報を流し、冬休みの子供達に興味関心を引かせる速報を各種提供し、年明け早々にアニメの放映スタート。ゲームの中にも登場するキーアイテムで、さらにゲームとの連動性も有する「妖怪メダル」など各種玩具の発売、ゲーム筐体「ともだちウキウキペディア」の稼動を始める。子供の視線を非常に気にしたタイミングによる盛り上げ方をしているのが分かる。

特にテレビアニメによる「子供達の間」で交わされることを前提とした共通の話題の提供効果、ゲームの世界観を多くの人に知らしめた告知効果は大きい。テレビアニメの成功が、セールスを大きく引上げ、直後に展開された関連玩具の盛況ぶりにも大きく貢献することになった。テレビアニメそのものがゲームの世界観をたっぷりと盛り込み、非常に分かりやすいゲームチュートリアル的な意味合いを果たしたのもポイント。

「子供達の間」の共通の話題としての「妖怪ウォッチ」の実力は、先日バンダイが発表した人気キャラクターの投票結果(バンダイこどもアンケートレポートVol.216「好きなキャラクターに関する意識調査」)からも現れている。不特定多数と接触する機会を持つようになる小学生になると、「もっとも好きなキャラクター」として男子だけでなく女子でも、「妖怪ウォッチ」が登場する。自分一人だけの楽しみとしてより、友達との対話の中での話題として使われていることが分かる。

↑ もっとも好きなキャラクター(2014年)(男子)
↑ もっとも好きなキャラクター(2014年)(男子)
↑ もっとも好きなキャラクター(2014年)(女子)
↑ もっとも好きなキャラクター(2014年)(女子)

ゲームとのタイアップとしてテレビアニメが展開される事例は多い。「妖怪ウォッチ」では優れた内容と絶妙なタイミングによる各種メディアによる展開、特にテレビアニメの投入時期の巧みさが、作品を大いに盛り立てた勝因の一つと判断しても良いだろう。

■一連の記事:

子供達が「妖怪ウォッチ」を受け入れた理由(上)…メディアミックス編

子供達が「妖怪ウォッチ」を受け入れた理由(下)…子供目線での内容と「妖怪」編

子供達が「妖怪ウォッチ」を受け入れた理由(番外編)…関連グッズの需給問題、そして転売話

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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