Yahoo!ニュース

中東以外ではそれなりの評価・米オバマ大統領の外交手腕

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「チェンジ」を語った米オバマ大統領。その外交姿勢の評価は?

自国民からの評価も微妙な米オバマ大統領の外交姿勢

国家間の外交施策は多分にそれぞれの国の国民感情にも左右される。二期目を勤め間もなく任期切れを迎えるアメリカのオバマ大統領の外交姿勢は、諸外国の国民からはどのような評価を受けているのだろうか。アメリカを中心とした諸国の外交戦略とその手法に関する周辺各国の反応などを調査した報告書「Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America’s Image」から、その実態を確認していく。

次に示すのは調査各国の「各国民の意見」として、アメリカ合衆国のオバマ大統領が手掛けている外交姿勢について、国際情勢の観点で正しい行動をしていると、評価できるか否かを確認したもの。「大いに評価」「評価」の賛成・肯定派、「評価しない」「全く評価しない」の反対・否定派、そして「分からない・無回答」の計5選択肢の中からの選択となる。要は今のアメリカの外交施策全般を支持するか否か、賛成か反対か。

↑ アメリカのオバマ大統領について、国際情勢に鑑み正しい行動をしているとして評価するか(2014年春)
↑ アメリカのオバマ大統領について、国際情勢に鑑み正しい行動をしているとして評価するか(2014年春)

賛成派を青系統、反対派を赤系統で着色した。アメリカ国内におけるオバマ大統領の外交施策への賛成派は58%。反対派は41%。すでに二期目に入り、任期切れ(2016年)まで間近なのも一因だが、賛成派は少ない。

欧州地域、アジア地域、アフリカ地域での賛成派の多さ、中南米諸国での賛成・反対両派の競り合い、そして中東諸国での反対派の多さが大まかな印象。オバマ大統領に限らずだが、アメリカの中期的な外交スタンスとその結果生じた各地域の国民感情の状況が、大よそつかみ取れる。

周辺地域の動向とはイレギュラー的な形で反発が強く見えるのは、ロシア、ギリシャ、パキスタン。ロシアは米露二大大国として利害関係なども合わせ対立することが多く、直近ではウクライナ問題での対立も要素として大きい。ギリシャは隣国のトルコとの仲が歴史的な関係もあり悪く、そしてトルコはアメリカと密接な関係にあることから、当然反発心が強い。さらに債務問題でアメリカも含めた欧米諸国からのプレッシャーへの反発、同時に経済的アプローチが著しい中国との対比も要素としてあるのだろう。パキスタンも事情としてはギリシャのそれに近く、国の成立の上での歴史的観点からインドと仲が悪く、中国とは友好関係にある。それが多分に影響している。

中東地域は赤系統が強く、「全く評価しない」の値が40%から50%が連続して出ている。同地域でアメリカがどのように評価されているのかが分かる。

経年でたどると……

アメリカの大統領に限らずどの国のトップも、任期が長くなればなるほど人気は落ちていく。特に任期後半では単に飽きられる、失敗面がクローズアップされる、さらには新しいトップとの入れ替えが予定されているため、実質的な権限が無いものとして対外的に扱われる場合も多く、外交評価面では不評を集めることが多くなる。

次のグラフはオバマ大統領の外交施策評価の経年データ。

↑ アメリカのオバマ大統領について、国際情勢に鑑み正しい行動をしているとして評価するか(評価派合計、経年)
↑ アメリカのオバマ大統領について、国際情勢に鑑み正しい行動をしているとして評価するか(評価派合計、経年)

諸国が低下、特にエジプトとロシアの下げ方は「失望した」レベルに達している。一方中国は2014年に大きく値を持ち直しているが、これは経済施策によるところが大きい。

もっともアメリカ国内外で、同国の経済的な影響力の低下と中国の発言力の強化が指摘されていることから(今報告書でも大きく領域を割いて説明されている)、この状況がさらに進み、それをアメリカ国内が認めないとの事態になれば、外交施策も大きく変化し、それに伴い今件値も変わってくるものと思われる。もっとも現大統領のオバマ氏の任期中に、そのような動きがあるとは考えにくいのだが……。

■関連記事:

安倍外交をアジア・アメリカはおおむね評価、反発するは中韓のみ

アメリカへの親近感83%、中国は「親しみを感じない」が45%に

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事