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実は地域で大きく異なる男女間喫煙率の差

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ たばこの喫煙率は男女間で差異があるが、その比率は全国一律では無く……

喫煙率は一般的に女性よりも男性の方が高いことで知られている。しかしながらその違いは押し並べて同じ割合では無い。そこで男女の喫煙率の差の違いについて、都道府県別に男女の喫煙率の差を、厚生労働省の定点観測的調査「国民生活基礎調査」の公開資料を基に確認していく。

次に示すのは、「男女別」の都道府県別喫煙率。喫煙状況について20歳以上の人に「毎日吸っている」「時々吸う日がある」「以前は吸っていたが1か月以上吸っていない」「吸わない」「不詳」のいずれかを尋ね、その回答のうち「毎日吸っている」「時々吸う日がある」を喫煙者とし、全体に占める比率を算出したもの。例えば女性・大阪府の値は12.9%と出ているので、大阪府に住む成人女性の喫煙率は12.9%となる。男女別の喫煙率は全体値がJTなどから発表されているが、都道府県別のものは珍しく、初めて見る人もいることだろう。

↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2013年)(都道府県別)(男性)
↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2013年)(都道府県別)(男性)
↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2013年)(都道府県別)(女性)
↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2013年)(都道府県別)(女性)

男性の方が女性よりも喫煙率は高い傾向はすべての都道府県で変わらない。グラフの横軸で男女で区切り値が異なるのもそれが原因。他方、都道府県別の並びは男女で揃えてあるので把握できるが、男性の喫煙率は地域による差がさほど出ない(福島県や奈良県の低さがやや目立つ程度)なのに対し、女性では地域別の差異が結構大きな形で出ているのが分かる(無論、%ポイントの差では男性の方が大きいが、全体に占める比率では見た目で判断できる)。

例えば全体では喫煙率トップの北海道だが、男性に限れば青森県よりも低い。しかし女性では群を抜いてトップについている。絶対値は男性の方が高いのだが、女性の高率度合いが全体値を大きく押し上げていることになる。「男性は他地域とさほど変わらないが、女性の際立った高さが全体を引き上げる」事例としては、他に大阪府などが該当する。これらの地域には女性の喫煙率を押し上げる、何か特殊要因でもあるのだろうか。

男女差の動向を別の切り口から見たのが次のグラフ。男性の喫煙率が女性の何倍かを算出し、その値をまとめたもの。この値が高い方が、男女の喫煙率の差が(比率的に)大きい。%ポイントでの差ではないことに注意。

↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2013年)(男性の喫煙率は女性の何倍か)
↑ 喫煙率(国民生活基礎調査、2013年)(男性の喫煙率は女性の何倍か)

「女性の喫煙率が他地域よりも高く、全体値を引き上げている」事例の北海道、大阪府では倍率が2倍台に留まっており、男女の差がさほど無いことが分かる。似たような値は青森県、福島県や埼玉県、そして東京都でも確認できる。女性のみの喫煙率を見直すと、確かにいずれも他地域よりは(多少ながらも)高めの値が出ている。

女性の喫煙率が他地域より高い値が出る都道府県とたばこ関連の動向を調べたものの、特定の社会現象や地域環境、法的制限の類は確認できない。東京都と大阪府だけなら「企業が集約している」「女性の社会進出が進んでいるため、それと共に喫煙率が上昇しうる」との仮説も成り立つが、他に該当する地域も合わせると、その仮説も正当性に欠ける。

ともあれ、男性の喫煙率が女性よりも高いのは全国共通に違いないが、その差異は地域によって千差万別であることには、留意をしておくべきだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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