前年同月比で約45%減、2014年8月の熱中症による救急搬送者数は1万5183人
8月搬送者数は1万5183人、前年同月比1万2449人減
総務省消防庁は2014年9月19日、同年8月の熱中症を起因とした全国の救急搬送の状況(確定値)を発表した。同年8月における熱中症による救急搬送者は全部で1万5183人となり、前年同月の2万7632人と比べ、1万2449人減少(45.1%減)している。これは消防庁が熱中症の搬送者数を公開し始めた2008年以降では3番目、直近では猛暑として知られた2010年の2万8448人や昨年2013年の2万7632人と比べると4割強の減少となる。また今年の先月7月の値1万8407人と比較しても2割ほどの減少である。このように少なめに推移した理由として消防庁では、全国的に猛暑日(最高気温が35度以上の日)を観測した地域が少なかったことを理由として挙げている。
「気象庁の分析レポート「8月の天候」」にもある通り、前線や台風上陸の影響を受け、農作物の成長度合いの懸念がなされるほどの、日照時間の短さが西日本では観測されている。具体的には降水量は西日本でかなり多く、17観測地点では史上最大を記録、日照時間では東西日本で少なく、29観測地点で史上最短を記録している。このような気象動向が、搬送者数が低めに収まった理由として考えられる。
昨年と比べるとすべての年齢区分で人数は大きく減少。特に新生児から乳幼児と高齢者層の区分で減少率が著しい(それぞれ51%、47%の減少)。今年の熱中症搬送者数の減少理由は、主に天候不順が起因であることから、天候の悪化により外出をひかえがちな高齢者、あるいは乳幼児を持つ保護者が、自宅に留まるケースが多くなったことから、熱中症のリスクが低減したものと考えられる。無論室内でも熱中症リスクはあるが、元々天候悪化で気温も低めなことから、晴れの日と比べればリスクは低い。
搬送時の傷病程度別動向を確認
搬送時の初診傷病程度は次の通り。2010年以降は漸減傾向にあった中等症以降の重い病症率が昨年2013年ではやや増加したが、2014年では再び減少している(軽症比率が増加)。天候悪化をで高齢者の発症リスクが減り、高齢者、特に一人身世帯において生じやすい「発見時に容体悪化が進んでいた状況」が減ったのが要因と考えられる。一方で、中等症以上(入院が必要な状態)で搬送される事例が今なお3割以上あることは、憂慮すべき事態に違いない。
過去の事例では9月に入ると夏の暑さのピークは過ぎ、8月と比べれば搬送者数は減少する。しかしゼロでない以上、全国各地で熱中症により救急搬送される人がカウントされることになる。さらに今回発表の消防庁のレポートでも「9月は全国的に気温が平年並みか高いとの予測」「9月に入ってからも真夏日(一日の最高気温が30度以上)が観測される日がある」など、熱中症への警戒が引き続き必要であると警告している。次のグラフにあるように、昨年も9月に入ってからも毎週数百人の単位で搬送者が確認されている。
今年は気温や熱中症搬送者などの動向の限りでは、昨年よりは過ごしやすい気温状況にある。しかし暑い日がぶり返す可能性は多分にある。少なくとも節電要請期間が終了する9月末までは、熱中症への警戒を怠りなく、水分補充や体調管理などには十分配慮してほしいものである。
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