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世界主要国のエネルギー源の種類と量、その違いを探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 発電用ではないが水車も原理的には水力発電と同じ

一次エネルギー利用トップはアメリカでは無く中国

世界各国のエネルギー政策・事情を知るため必要となる観点の一つが、エネルギーの源としていかなる一次エネルギー(石油や石炭など)を利用しているか、その動向。今回はイギリスに本拠地を構える国際石油資本BP社のエネルギー白書「Statistical Review of World Energy」を元に、状況を推し量ることにした。

「一次エネルギー」とは自然界に存在するそのままの形を用い、エネルギー源に使われているものを指す。化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)、ウラン、そして水力、火力、さらには太陽熱・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーが該当する。ちなみに「二次エネルギー」とは電気やガソリンなど、一次エネルギーを加工して得られるエネルギーなどが対象。今回は「一次エネルギー」を対象にしているため、「国内外を問わず、どのような自然の恵みをどれだけ用い、エネルギーを取得しているか」を知ることになる。

まずは消費量動向。

↑ 主要国一次エネルギー消費量(石油換算・億トン)(2012-2013年)
↑ 主要国一次エネルギー消費量(石油換算・億トン)(2012-2013年)

多くの国でエネルギー消費量は増加を示している。これは景気の回復により、エネルギー消費量が増加したことを意味する。景気だけがエネルギー消費を左右するわけではないが、大きな要素であることには違いない。中国は前年比で4.4%、ブラジルは2.9%、インドは3.8%の増加となり、新興国の伸び具合が大いに注目される。とりわけ中国は今資料の限りでは世界最大の一次エネルギー消費量を示し、さらに大きな増加の動きを止めていない。ちなみに米中間の順位はすでに2010年時点で逆転している。

数字の上では中国、アメリカから大きく差をつけられる形だが、ロシアとインドが続き、そして日本が入ってくる。日本は今回上位入りした10か国の中では、唯一前年比でマイナスの値(マイナス1.0%)。これは元々日本が省エネ型のエネルギー消費スタイルなのに加え、震災の影響に伴う発電エネルギーバランスのひずみによるところが大きい。

全世界では石油・石炭で2/3

次に示すのは各国の一次エネルギー源分布。石油や天然ガスなどに区分し、どの一次エネルギーをどの程度の割合で用いているかを示している。「再生可能」項目は太陽光や風力その他をすべてまとめたもの。こちらも総消費量上位10位の国のものについてまとめてある。

↑ 主要国の一次エネルギー消費量(エネルギー供給元別)(2013年)
↑ 主要国の一次エネルギー消費量(エネルギー供給元別)(2013年)

・中国は2/3が石炭

・ロシアは5割強が天然ガス

・フランスは原子力が4割近くと主要国中最大の割合

・インドは中国に次いで石炭使用率が高い

・日本は2013年時点で原子力が1%のみ

・イランやサウジアラビアでは石油と天然ガスでほぼすべてがまかなわれている

紫色が目立つフランスだが、エネルギー面でも独立独歩的な政策を現実のものとするため、そして電力の他国への販売をビジネス化しているため、他国に関与されにくい原発を促進している。一時的に大きな方針転換が行われる可能性が出てきたが、現在ではその動きも沈静化している。

中国は7割が石炭を一次エネルギー源としている。石炭は安価で経済性に優れているものの、「適切」で比較的「高い技術力」による処理をしないと、二酸化炭素の排出量など環境面での負担も大きい。中国の二酸化炭素排出量がアメリカを超えて世界一となっているのも、石炭によるエネルギー確保がメインの構造が大きな要因と考えて問題無い。

↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2011年時点、IEA調べ)
↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(2011年時点、IEA調べ)

日本は石油への依存度が主要国の中でも一番高い。しかもそのほぼすべてを輸入に頼っており、エネルギー戦略上決して好ましい状況では無い。さらに2011年の震災を経て、エネルギー政策上多種多様なハードルが積み重なった関係で、昨今の情勢はひずみが生じている。

↑ 日本の一次エネルギー消費量(石油換算・億トン)(2011-2013年)
↑ 日本の一次エネルギー消費量(石油換算・億トン)(2011-2013年)

問題点の多い石油を用いる火力発電がセーブされていることもあり、増加は最小限に抑えられているが、天然ガス、そして石炭は高い水準にあり、いびつなバランス関係がさらに進行している。再生可能エネルギーも漸増しているものの、状況の変化に追いつかない。

各国共に国民の生活を支えるエネルギーは、それぞれの国共に、国が有する事情を考慮した上で、その国々にもっとも適切で、他国の動向に振り回されることの無い、中長期的かつ正しい戦略の構築が必要不可欠となる。その場しのぎで無い、安心して日々が過ごせる、バランスのとれたエネルギー戦略の実現を願いたい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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