夫婦別姓論、賛成派4割強・反対派過半数(2014年)
日本国の法律では、結婚をした夫婦は同じ氏(姓)を選択することを義務付けている(民法750条)。一方で夫婦同姓に対する異論は1970年代から唱えられている。夫婦別姓案賛成派は「同姓義務は差別だ」「氏を変えられた側が変わった側の実家に組み入れられるようで不快」「他国がそうだから」、反対派は「別姓制度にしなければならない切実な理由が無い」「家族の絆を弱め社会制度を脆弱化させる」などの意見を上げている。
現在では一つの手法として、戸籍上は法に基づき婚姻時に同じ姓で登録するものの、通称として日常生活の上で別姓を用いる切り口も用いられている。そして法的要件が必要な際には、その別姓は使わない。いわば俗称、ペンネームのような扱いをする次第。
そこで夫婦別姓について、国立社会保障・人口問題研究所が2014年8月に発表した全国家庭調査動向調査の公開値も含め、過去5回分の同調査の回答結果をまとめたのが次のグラフ。今項目の回答者は「夫が居る妻」に限定している。
「別姓であって”も”」良い、つまり選択肢の一つとして別姓を用意するものの、これまで通り同姓を選ぶのも問題は無いとする仮定の状況について、良いか否かを聞いたものだが、賛成派、つまり夫婦別姓の選択肢を法的に認めるべきとの意見は4割強という結果に落ち着いている。一方で反対派、つまり現状維持を望む人は過半数に達している。過去4回分の調査では第3回まで少しずつ賛成派が増加する傾向にあったが、それより後の調査では反対派が増加する動きを示している。
直近2回分の調査結果の動向を確認すると、弱い賛成派が大きく減り、強い反対派・弱い反対派が共にそれなりに増加を示している。1993年から2003年に渡る、スピード感のある別姓賛成派の増加傾向と比べると緩やかではあるが、確実に夫婦別姓反対派が切り替えしの動きを示している。特に弱い反対派は5回の調査の中でも最大の値を示しており、明確な理由、意志のもとでは無く、雰囲気的なレベルでの反対意向を持つ人が増えていることを示唆している。
賛否両論ある中でいずれの主張内容も正しいように思えるものの、それを立証する手立ては無い。世の中の仕組みを大きく、しかも短期的では無く中長期的に、さらに見た目だけでなく心理的な面(大人同士だけでなく子供達においても)でも変え得る「制度の変更」で、4割程度の賛成、反対派が過半数との状況は、十分な下地は整っていない・改正すべきである裏付けが論議されつくされていないと解釈できる。引き続き慎重かつ有意義で、感情論では無い、論理的な議論が必要だろう。
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