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電子出版を加えると出版物の売上動向はどのような状況なのだろうか(2014年発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 猫も杓子もタブレットで読書…ではないが電子書籍の浸透ぶりは無視できない

印刷物業界の動向を探ることができる、日販による『出版物販売額の実態』では紙媒体による印刷物の動向を取り扱っており、「電子書籍」、そして「電子雑誌」も合わせた「電子出版」は反映されていない。「インターネットルート」の項目は「インターネット専業店を経由して販売された(紙媒体による)出版物推定販売額」で、電子出版物は該当しない。

他方日本国内における電子出版の規模だが、いくつかの統計・調査結果はあるものの、定期公知しているものとしては、インプレスグループのメディア事業会社インプレスビジネスメディアが毎年発行している「電子書籍ビジネス調査報告書」が挙げられ、これによると2013年度では1013億円(電子書籍936億円、電子雑誌77億円)との値が出ている。

↑ 日本国内電子出版市場規模(億円)(インプレス総合研究所)
↑ 日本国内電子出版市場規模(億円)(インプレス総合研究所)

これらの値を基に、紙・電子双方の印刷物の動向をざっとまとめたのが次以降のグラフなどの話。調査機関が異なる値を一つに絡めるのはやや無理があるが、業界・市場全体の概要的把握の範ちゅうならばさほど問題は無い。

まずは販売ルート別推定出版物販売額。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009-2013度年)(億円)(電子出版追加版)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009-2013度年)(億円)(電子出版追加版)

金額ベースでは「電子出版」は「生協ルート」を超えて第4位の立ち位置にある。ほぼ同一ツールを使う点では「インターネットルート」と競合、あるいは相乗効果を生み出す点もあり、今後両者の関係が気になる。電子出版物は多分に紙媒体と連動し、誘引する役割も果たしているからだ。

続いてこれを比率グラフにしたもの。「電子出版」の立ち位置が分かりやすいように、項目の並びを一番右にしてある。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009-2013年度)(比率)(電子出版追加版)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009-2013年度)(比率)(電子出版追加版)

金額はそれなりに大きいが、シェアは「その他大勢」程度。ただし「インターネットルート」同様、確実にそのシェアを伸ばしている。「インターネットルート」と「電子出版ルート」を合わせると、すでに「コンビニルート」を抜いている。

最後は経年データによる積上げグラフ。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)(電子出版追加版)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)(電子出版追加版)

直近年の2013年度では総額を示す赤い数字の直下にあるのが電子出版。総額が減る中でインターネット同様に増加傾向を示す数少ない項目であると共に、全体に占める割合は微細なのが改めて認識できる。まるで音楽業界におけるインターネット経由での楽曲販売額の立ち位置のよう。

一方、「インターネットルート」が間もなく単独で「コンビニルート」を抜きそうな立ち位置であることが分かる。さすがに来年度は難しいだろうが、このままいけば早くて2015年度ぐらいには両者順位は逆転しそう。

世間一般には電子出版の普及は、紙媒体の出版物のシェアを奪い取るようなイメージが強い。しかし例えば「絶版マンガ図書館」や「アルファポリス」のように、電子出版から紙媒体の出版物への呼び水となるアプローチを積極的に行うところも見受けられる。販売額という実数値の上で、紙と電子の競合、そして相乗効果がどのような結果をもたらしているのか、今後も逐次確認をしていきたいところだ。

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※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください

(C)日販 営業推進室 書店経営支援チーム「2014 出版物販売額の実態」

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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