年収でパソコンの保有率に違いは生じるのか
昨今ではインターネットの窓口としてパソコン同様、多くの人がスマートフォンやタブレット型端末を使うようになった。若年層では最初に触れるインターネット端末がスマートフォンとなり、そのまま常用を続け、パソコンへの接触機会が学校の授業など最小限に留まることで、キーボードを使う場面が減っているのではないかとの話もある。またそれに関連する話として、年収が少ない世帯では金銭的な観点でパソコンを整備できず、代わりにスマートフォンを用いているとの意見も少なくない。今回はその話の実情を確認するため、内閣府の消費動向調査を基に、世帯年収とパソコン普及率の関係を見ていくことにする。
今回は一般世帯(二人以上世帯)のみを検証対象とする。単身世帯(一人身世帯)と一般世帯では年収の意味合いが大きく異なるのに加え、主に若年層のパソコンやスマートフォンの利用機会に関する動向を確認するのが目的であり、単身世帯で未成年者のケースは想定しにくいのが、一般世帯に的を絞った理由。
次に示すのは直近の2014年3月末時点における、世帯年収別パソコン、スマートフォン、タブレット型端末の普及率。一世帯に何台保有していても100%を超えることは無い。
全ハードとも大よそ高年収ほど高普及率。一方でパソコンは550万円、スマートフォンは750万円で普及率がほぼ頭打ちになるが、タブレット型端末は一様に上昇を続けている。これはひとえにタブレット型端末の普及率そのものがまだ低めなため。パソコンとスマートフォンの高年収における普及率は、上限に近付いたために頭打ち状態になったものと考えられる。見方を変えるとパソコンの世帯普及率は9割強、スマートフォンは8割強が、世帯普及率の上限と見て良い。
上限値はあるものの、世帯年収によるパソコンやスマートフォンの普及率に違いは確実に存在する。もっともパソコンとスマートフォンの普及世帯がだぶっていることは多分にあるため、「スマートフォンがパソコンの代替として用いられている」「スマートフォンがパソコンを取得できない世帯の代用品的立ち位置として存在する」などの立証は、今件データからは出来ない。そもそも消費動向調査でスマートフォン単独の調査項目が登場したのは、2014年3月末の年次調査が初めてで、それまでは単に「携帯電話」との表記のみで、従来型携帯電話とスマートフォンをまとめて集計していた。
「保有世帯」における平均保有台数を確認すると、保有率とは異なり、年収が上になるほど一様に台数が増加しているのが分かる。
この2つの動きから、「年収と共に上昇する普及率は一定額で頭打ちになるが、それより上の年収でも世帯内で複数持ちの人が増え、平均保有台数は増えていく」ことが分かる。パソコン保有世帯に絞っても、300万円未満では1.37台なのに対し、1200万円以上では2.35台となり、ほぼ1台分の差が出ている。世帯人数までの仕切り分けはしておらず精査は不可能だが、世帯台数が多ければ各世帯構成員がパソコンに触れる機会は増え、子供専用のパソコンが用意されている可能性も高くなる。
これらの数字を見るに、「パソコン、さらにはスマートフォンやタブレット型端末は世帯年収が高額になるほど普及率は高く、保有世帯における保有台数も多くなる」ことは確定事項と見なして良い。一方で「パソコンを持てない低所得世帯が、その代替端末としてスマートフォンを取得するようになった」との仮説を裏付けるまでには至らない。
もちろん、これまでパソコンを所有していなかった世帯が、スマートフォンの所有ではじめてインターネットへのアクセス機会を得る事例は多分に考えられる。何しろ世帯年収区分で最低額の仕切りの層でも3割超えの世帯がスマートフォンを有しているのだから。
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