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増加する「政治家に一任は良くない」と若者の投票意欲の回復

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 若者は投票行為そのものを避ける傾向があるというが……

昨今では若年層の投票率の低迷ぶりなど、政治からの逃避の動きが懸念されている。政治・選挙に対する意欲はどのような現状にあり、いかなる変化を示しているのだろうか。統計数理研究所による定点観測的調査「日本人の国民性」から確認していく。

まずは複数の設問から政治意向に対する項目を抽出し、賛成意見比率を集約した結果が次のグラフ。

↑ 政治意向に関する問題(該当項目から抽出、賛成意見回答率)
↑ 政治意向に関する問題(該当項目から抽出、賛成意見回答率)

浮動票の源ともいえる「支持政党なし」、いわゆる「無支持派層」の動向が気になるが、公開データは1998年以降の4回分しかない。これは結果発表サイトの「支持政党」項目は回答時の政党分布毎に仕切り直しがされており、直近数回分のみの公開に留まっているため。2008年の前回調査結果発表時には「結果のポイント」ページで1953年以降のデータが反映されたグラフが掲載されており、それによると1953~1958年は20%台、1973年以降30%強に上昇し、1993年には40%台、そして1998年には上記グラフ上の57%にまで急上昇している。

↑ 政治をめぐる意識の変化(「結果のポイント」2008年当時の解説ページから取得)
↑ 政治をめぐる意識の変化(「結果のポイント」2008年当時の解説ページから取得)

この動きは政党区分での政治への無関心度の高まりを示していると解釈できる。しかし直近の2013年ではやや低下している点に注目したい。また、「支持政党なし」と連動する形で漸減を続けていた「何をおいても投票する」比率だが、1988年の34%を底値に、それ以降は40%内外の横ばいへと動きを変えている。選挙への無関心派や投票への忌避感の増加は、前世紀末でストップがかかったように見える。

「社会に不満がある時でも何もしない」率が減ると共に、「いくら良さそうに見える政治家でも、一任は良くない。国民同士の論議が必要」「不満なら選挙で考慮する」意見が増加している。投票行動で政治を、社会を良い方向にかじ取りしようといった積極姿勢の高まりが見えている。

とりわけ注目したいのが、若年層の意向変化。衆議院総選挙の時の投票意向で見ると、世間一般に言われている「若年層の投票離れ」がひと目で分かる結果となっている。

↑ 衆議院総選挙時の投票意向(「何をおいても投票する」回答率)
↑ 衆議院総選挙時の投票意向(「何をおいても投票する」回答率)

若年層と呼び得る年齢層、40代は少々厳しいが一応入れて20~40代について太い線・率の表記を行ったが(20代は二重線)、若い世代ほど投票意向が小さい。最も回答率が低いのは1998年~2003年で、20代は10%・30代は17~23%しか「衆議院総選挙の際には、何をおいても投票する」との回答者が居ない。70代以上の6割前後、60代の5割内外と比べれば大きな違い。

しかしながら今世紀に入ってから、40代は減少傾向が続くものの、20代から30代には反転の流れが確認できる。30代はさすがに2008年の伸び方が急だったこともあり直近の2013年には再び減少したが、それでも2003年と比べれば5%ポイントの増加。40代との差はわずか4%ポイントに縮まっている。さらに20代にいたっては2008年比で9%ポイント増の21%にまで増加している。意識の変化以外に単なる底打ち、との見方もできるが、ともあれ若年層における投票意欲の増加の動きが見られるのには違いなく、今後の動向に注目したいところではある。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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