男女平等の考え方はどこまで浸透しているか・世界各国の女性観を探る
身体的な性質、生物学上の役割における相違以外に、歴史的背景や宗教的観念などの影響で、男性と女性の間には性の上で区別・差別が生じることがある。自国の常識論が他国では通用しない、物差しが全く異なることも少なくない。今回は世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」の回答結果を基に、男女の違いをもとにした社会的観念について、いくつかの観点で国ごとの違いを確認していく。
まずは「妻が夫より稼ぐとトラブルが生じやすい」。賛意はプラス1、反意はマイナス1として平均値を求めた結果が次のグラフ。マイナス幅が大きいほど「妻が夫より稼いでも全然問題は無く、トラブルなど発生するはずが無い」ことになる。次以降の項目も合わせ、回答者における考え方を述べてもらっていることに注意。
夫よりも妻が稼いでも特に問題は無いとの意見が多勢を占めている。特に男女平等感の強い欧米でその傾向が強い。日本はギリギリでマイナス圏、問題は無いとする派だが、やや値の伸びが弱い。これは他の国際調査でも良く見られる傾向、「どちらともいえない」の回答率が極めて高く(46.3%)、明確な意見そのものがあまり多くないのが原因。
プラス、つまり妻の稼ぎが多いとトラブルになりうるとする意見は、エジプト、コロンビア、チリ、メキシコの4か国。エジプトは宗教的な問題もあり、大きな値となるのも仕方がないのかもしれない。
続いて子育てにも関する話。母親が働きに出ると、子供は不幸になることが多いとする意見に対する賛否。今件と次の項目は、強い賛成・賛成・反対・強い反対の4選択肢が原則的に用意され、加重の上で値を算出している。今項目の場合、プラスが大きいほど同意、マイナスが大きいほど反意を意味する。
賛意派の解釈は「母親が働きに出ると当然子供との時間が少なくなる。収入の面ではプラスとなるが、その分、愛情が注がれる機会が減ってしまう」というものだろう。この考えに全体的な傾向として賛意を示す国はタイ、エジプト、香港、ポーランド、ブラジル、そして韓国。強い反意を見せる国はオランダ、オーストラリア、台湾、アメリカ合衆国など。日本はやや反対派。
各国の兼業主婦の現状や社会福祉体制、宗教観、家事の実態などは別々のため、一概にくくるのは難しいが、国ごとの母子の愛情や兼業主婦のとらえ方などの違いが垣間見えて興味深い。
最後は政治的な問題。女性よりも男性の方が政治指導者として優れているか否かとの意見への賛否。
エジプトは強い同意感を示しており、男性による政治主導を強く求めている。これは上記の通り、宗教的な問題が主な理由。それ以外ではフィリピン、ロシア、タイ、ウクライナ、そして中国が女性による政治指導者に対し、否定的な状態。
反対派、つまり女性でも良い政治指導者になることは十分可能であるとの意見は、スウェーデンやオランダ、スペイン、ドイツなど西ヨーロッパ諸国に多い。特にドイツは実例が現在も活躍中であることが影響しているのだろう。
日本は反対派。ただし主張の度合いは小さめ。詳細を見ると、やはり「分からない」とする回答事例が35.0%と1/3を超えており、これが値の伸びを押しとどめている。いかにも日本らしい、といえばそれまでなのだが。
男女間における仕切りも国や地域の文化特性などによって常識やしきたりが定められる場合が多く、唯一無比の正解は存在しない。今件もまた、国ごとの傾向、姿勢を示したに過ぎないもので、どの国の考えが正しく、また間違っているという話では無いことを、改めて記しておく。
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