Yahoo!ニュース

子供達の喘息事情を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自分の意志に関わらず続く咳や息切れ。体力は削られ、負担は重く……

普通なら何も気に留めずに行える呼吸の際に、息切れやせきなどを併発する疾患、「喘息(ぜんそく)」。身体の消耗は著しく、特に子供には大きな負担となる。現状における子供達の喘息状況を、文部科学省の「学校保健統計調査」から確認していく。

まずは最新2014年度における学校種別・年齢別の喘息の者の割合だが、小学生では4%近い罹患率が確認できる。

↑ 喘息の者の割合(2014年度)
↑ 喘息の者の割合(2014年度)
↑ 喘息の者の割合(2014年度)(年齢別)
↑ 喘息の者の割合(2014年度)(年齢別)

5歳から6歳に成長すると急に罹患率が高まり、10歳ぐらいまでは4%近くの高い値を示す。この年齢は小学校時代に該当する。小学校が喘息を誘発するのでは無く、「小学校に進学して身体検査などを綿密に行う」「保護者の健康意識が高まる」などの理由から、喘息が”発覚する”ものと考えられる。一方中学校へ進学するにつれて値が低下するのは、身体的な成長などが原因とされる。しかしながら高校生でも2%内外との値を示しているのも事実。これは50人に1人(2クラスに1人程度)は喘息持ちであることを意味している。

これを経年変化で見ると、概して上昇傾向にあるものの、昨今では減少の動きに転じていることが分かる。

↑ 喘息の者の割合推移
↑ 喘息の者の割合推移
↑ 喘息の者の割合推移(2001年度以降)
↑ 喘息の者の割合推移(2001年度以降)

収録されているもっとも古い1967年度分では、幼稚園0.29%・小学校0.25%・中学校0.08%・高校0.03%だったのに対し、2014度年ではそれぞれ1.85%・3.88%・3.03%・1.93%にまで増加している。

これは健康意識の高まりで診断をする人が増え、喘息持ちであることが判明した結果による上昇と考えられる。つまり喘息持ちそのものが増加したのではなく、露呈・確認数が増えたのが主要因と判断した方が自然ではある。無論高度経済成長期を中心に、工業化や自動車の普及で生じた大気汚染により、喘息を罹患する割合が増えたのも一因だろう。

一方直近の動きとしては、2010年度から2011年度を天井として、小学校や幼稚園では減少の動きも見受けられる。中学校・高校では頭打ちの状態だが、現在幼稚園や小学校の世代が進学するに連れて、今後中高校でも喘息の者が減ってくる可能性は多分にある。

喘息は他人からの見た目以上に、本人にさまざまな負担が課せられる。特に体力の消耗ぶりは想像を絶するものがある。何しろ日常絶え間なく行われる呼吸プロセスで、息苦しさと疲労が課せられるのだから。身内も含め、もし周囲に喘息持ちの人(特に子供)がいたら、十分以上の配慮を願いたい。

■関連記事:

子供達の喘息発作のサイン

新型インフルエンザに不安を持つ喘息(ぜんそく)患者は8割、されど医師と情報交換をしたのは2割に留まる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事