「20歳から34歳の15歳分」と「団塊世代の5歳分」は政治家からは同じに見える
投票者数の多い少ないは、政治家にとって非常に大きな関心事となる。政治家としての地位を確保し続けるには、対抗立候補者との選挙戦に勝ち抜くのが必要で、そのためにはより多くの票を確保し無ければならないからだ。選挙戦において人の出入りが多い人口密集地帯や駅前などで頻繁に演説が行われるのも、ひとえに多くの人に接し、自分への票を確保するため。誰も居ない場所で立ちすくんで演説を繰り返しても、意味はほとんど無い。
昨年末に実施された第47回衆議院議員総選挙における有権者数と実投票者数の動向は、政治家の政治施策の上で大きな指針となっているであろう、一つの現実を知らしめてくれた。次に示すのは、その衆議院選挙における5歳区切りでの有権者数と実投票者数を試算したもの。総務省発のデータを基にしているので、民間調査会社の類似調査結果と比べ精度は高い。
男性の場合、若年層の15歳分に相当する20歳~34歳の実投票者数は332万人。有権者は2倍以上いるが、投票率が低いために投票者数はこの程度に留まってしまっている。そして団塊の世代が多分に含まれる65歳~69歳の5歳分の投票者数は323万人。ほとんど差が無い。女性も状況的にはほぼ似たようなもので、それぞれ331万人と319万人となっている。
有権者数を見ると、男性の場合は20歳~34歳で合わせて992万人となり、ほぼ1000万人。65歳~69歳は461万人と半分にも満たない。しかし若年層の投票率が大きく異なるので、結果としてほぼ同じ値になってしまっている。
政治家、さらには政党における最大の報酬は、自分達に投票してくれるか否にあると見て良い。つまり政治家の視点からは、20歳~34歳の15歳分、1000万人に近い対象と、65歳~69歳の5歳分、500万人にも満たない対象は、「報酬」の観点では同じに見えてしまう。これではより効果的な「報酬」が期待できる高齢層に向けた施策に、政治家が重点を置くのも仕方がない。幅広い年齢層に向けて政策リソースを(投票していない人も含む)有権者に薄くばらまくより、比較的的を絞れる年齢層に向けて配分する方が、一人当たりの受領リソースも増えるため、より高い効果・反応が期待できる。
結局のところ政治への無関心、投票率の低さは、自分が存在することの証・自己主張をする人の少なさを意味し、それは政治を司る側から優先順位を下げられることに直結する。今回の選挙で20歳~34歳の投票率はそれぞれ5歳区切りで29.72%・35.32%・39.74%。30%足らずから40%足らずでしかない。一方で65歳~69歳の投票率は70.11%と2倍近い。
仮に20歳~34歳の投票率が今回に2倍する値を示せば、同区分の実投票者数は男性ならば664万人・女性ならば662万人となり、団塊世代層に倍する値を示す。これなら軽んじられることは無い。下手に若年層に不利不公平な政策を続ければ、その層からは嫌われ、対抗政策を打ち出す立候補者・政党に票が移るリスクが生じるからだ。また対抗する政治家・政党もその点を重要視するだろう(見方を変えれば、現在の与野党が共に、若年層を軽視すると共に、高齢者に不利な政策には及び腰なのは、この点によるところが大きい)。
自分の方を向いてもらうには、まず自分の存在感をアピールしなければならない。そのためには何よりもまず、手を挙げること。具体的には選挙における投票に参加することに他ならない。
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