Yahoo!ニュース

数は減る、比率は増える高齢者…年齢層別・交通事故死者数動向

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 年々減少する交通事故死者。しかし高齢化に伴い高齢者の該当者比率は……

事故死亡者数は減る、増えるシニア層比率

交通事故による死者は年々減少傾向にあるが、同時に社会の高齢化に伴い高齢層の該当者比率も増加している。その現状を警察庁の公開データ「交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について」から確認していく。

まずは年齢階層別事故死亡者の推移。これは「事故発生から24時間以内の死亡者」に限定している。なお今グラフも含め、今記事で生成したグラフについては、過去の値も後日発表された修正値を確認した上で反映している。

↑ 年齢層別死者数の推移(各年12月末、人)(-2014年)(積み上げグラフ)
↑ 年齢層別死者数の推移(各年12月末、人)(-2014年)(積み上げグラフ)

全体数は減少の傾向を示している。一方、茶色が濃い層、つまり右側の2つ分の階層にあたる高齢者(65歳以上)の部分が他の世代と比べると縮み方が緩やか(=人数があまり減っていない)ように見える。実際、前年の2013年では65歳から74歳層に限れば前年比で大幅な増加すら示した。

これは高齢者人口そのものが増加しているのに加え、高齢者の対人口比死者数が高い値を示しているのが(要は高齢者の方が交通事故による死亡率が高い)、この高齢者の逓減率が緩やかな原因。もっとも直近となる2014年では全年齢区分において、前年比で減少を示している。

そこで今度はこれらの動向について、各年毎の交通事故死者数全体に占める割合でグラフにしたのが次の図。

↑ 年齢層別死者数の推移(各年12月末)(各年合計に占める各年齢層の割合)(-2014年)
↑ 年齢層別死者数の推移(各年12月末)(各年合計に占める各年齢層の割合)(-2014年)

ここ数年の傾向として、死者「数」は各年齢層で減少しているが、75歳以上がやや横ばい、65~74歳の減少率が低いため、全体に対する比率では逆に増えてしまっている。2011年ではイレギュラーな減少の動きが生じたが、2012年は再び高齢者が占める比率が増加、その傾向は2013年以降においても継続している。

2014年における全死者のうち65歳以上の比率は53.3%。これまでの公開データの中では昨年に続き最大値を更新(2013年は52.7%)してしまっている。

65歳以上の交通事故死者、その内情は

比率増大が今後も継続するであろう65歳以上の死亡事故者の状況は、どのような傾向を見せているのか。該当者の交通事故死亡状態別人数推移を調べた結果が次の折れ線グラフ。例えば「自転車運転中」なら、当事者(高齢者)が自転車を運転している際に事故に遭遇し、亡くなった事例である。

↑ 高齢者(65歳以上)の年齢層別状態別死者数の推移(各年12月末、人)(-2014年)
↑ 高齢者(65歳以上)の年齢層別状態別死者数の推移(各年12月末、人)(-2014年)

世間一般におけるイメージとしては「交通事故」なら、当事者が自動車、あるいは自転車運転中の状態が最上位につくように思える。しかし実際には「歩行中」による事故を起因とするものがもっとも多い。次いで「自動車乗車中」、そして「自転車乗車中」が上位。

2014年の動きを見ると、大よそ減少の動きを示しているが、「自動車運転中」はほぼ横ばい(613人→600人)に留まっている。詳細を見ると65~74歳では増加しており、これが65歳以上の「自動車運転中」全体値の下げ幅を最小限に押しとどめた原因であることが分かる。

高齢者に限って死亡事故数が多い、そして全体における交通事故死者数の比率増加の要因の一つとされる「歩行中の死亡事故」「自転車乗車中の死亡事故」の法令違反別区分を見ると、「安全不確認」「走行車両の前直後横断違反」など、「自分自身の身体能力への過信、思い違い」が死亡事故の引き金の主要因であることが分かる。

彼ら・彼女らは、「かつて交通量が少なかった時代と同じように(「渡り切るまで車など来ない」)」「以前の若い頃の自分のように素早く」渡れると判断している、または「自動車が来ても人間が歩いているのだから、止まってくれるに違いない」などと判断を下し、横断している場合が多いと考えざるを得ない。あるいは単に「面倒だから近道をしてしまえ」との思いだけで突っ切ろうとしている可能性もある。

しかし横断中の人間を視界にとらえたドライバーが瞬時にブレーキを踏み込んでも、自動車はすぐに停止できない。結果として上記グラフに「カウント」されるような事態におちいった場合、本人はもちろん家族も、そして半ば巻き添えとなった自動車運転手にも大きな不幸、負担が襲い掛かることになる。

高齢化により高齢者の人口が増加するにつれ、事故対象者の絶対数、そして全体に占める割合でも高齢者が増えてしまうのは、統計学上仕方ない。警察庁の各種事故関連の報告書でも高齢者の死者「数」の減少が緩やかな理由として、高齢者人口の増加と高齢者の死亡率の高さを要因として挙げている。

次に示すのは「それぞれの」年齢階層における交通事故死者率。たとえば75歳以上は8.94と出ているので(全人口では無く)75歳以上の10万人のうち、2014年では8.94人が交通事故で亡くなったことを意味する。

↑ 年齢階層別・人口10万人当たりの交通事故死者数(2014年、人)
↑ 年齢階層別・人口10万人当たりの交通事故死者数(2014年、人)

しかし一方で「絶対数」の増加を「統計学上、仕方ないで良い」で諦めてよいのか、との考え方もある。

高齢者の場合、「カウントされるような事故」の発生起因は上記のようにある程度特定されている。今後はこれらの対策への「これまで以上の」注力も必要となる。まずは徹底した啓蒙活動と、その成果が望める工夫、そして周囲の注意が求められよう。

■関連記事:

死亡事故率2.5倍、89%は「対策強化必要」…高齢運転者の実情

戦後の交通事故・負傷者・死亡者をグラフ化してみる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事