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夏に向けてエアコンの普及率を再確認

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ これからお世話になる機会が増えるエアコン。その普及率は…

2015年はエアコンの普及率は一般世帯で91.2%

住宅の密閉性の向上や都心部におけるヒートアイランド現象の実態化に伴い、エアコンはこれまで以上に人々の生活に欠かせない家電となりつつある。現在一般世帯におけるエアコンの普及率はどれほどなのだろうか。内閣府が2015年4月に発表した消費動向調査の公開値をもとに、実情を確認していく。なお世帯区分だが、「総世帯」=「一般世帯(2人以上世帯)」+「単身世帯(一人暮らし世帯)」である。

最初に示すのは、長期データが取得できる「一般世帯」の普及率、そして「保有世帯における」平均保有台数推移をグラフ化する。回答世帯全体における平均台数ではないことに注意。

↑ エアコン(クーラー)普及率と、保有世帯における平均保有台数(一般世帯)(3月末時点)(~2015年)
↑ エアコン(クーラー)普及率と、保有世帯における平均保有台数(一般世帯)(3月末時点)(~2015年)
↑ エアコン(クーラー)普及率と、保有世帯における平均保有台数(一般世帯)(3月末時点)(2001年~)
↑ エアコン(クーラー)普及率と、保有世帯における平均保有台数(一般世帯)(3月末時点)(2001年~)

1960年代はゼロに等しかった普及率も、1970年代から急上昇し、1990年代半ばには8割を超える。そして今世紀に入ると9割近くに達し、後はほぼ横ばいの動きを継続。この流れから、ほぼ天上・上昇限界点の状態であることが分かる。直近2015年における普及率は91.2%。前年と比べると0.6%ポイントの上昇。

一方保有台数も似たような形で上昇・横ばいの動き。2015年では保有1世帯あたり3.0台に。これはエアコンの「保有世帯」において、平均3.0台のエアコンが「有る」ことを意味する。それらをすべて同時に稼働させているのでは無く、3台設置していることになる。

世帯年収や世帯主の世代別に見ていくと…

最新の2015年分について、まずは世帯主の年収別に状況を確認する。

↑ 世帯年収別エアコン普及率(2015年3月末)
↑ 世帯年収別エアコン普及率(2015年3月末)

大よそ一般世帯・単身世帯共に、高年収ほどエアコンの普及率は高い。また一般世帯の方が単身世帯よりも高い普及率を示している。

前者はエアコンそのものが設置料も含めるとそれなりの導入コストが必要になるのに加え、ランニングコストも高いハードルとなるため。もっとも初期投資額に関しては、最近の賃貸住宅は初めからエアコンが設置されている物件も多く、あまり考慮は要らないのかもしれない。

後者は単身世帯の場合、「自分が我慢すれば無くても良い(他人への配慮が要らない)」「お財布事情」など、一人暮らしにおける普及率を押し下げる事情が想定される。なお、この「一人暮らし」には若年層だけでなく、(特に定年退職後に配偶者と死別・離別した)高齢者も含まれていることに注意しなければならない。ちなみに2015年は「単身世帯」の高年収層で75%との値が出ているが、これはそれぞれ該当回答世帯数が12世帯・8世帯と少数でしかなかったことによる、数字的なぶれの可能性が高い。

↑ 性別・世帯主世代別エアコン普及率(2015年3月末)
↑ 性別・世帯主世代別エアコン普及率(2015年3月末)
↑ 住宅所有関係別エアコン普及率(2015年3月末)
↑ 住宅所有関係別エアコン普及率(2015年3月末)

上記グラフの傾向と同じく、一般世帯よりも単身世帯の方が普及率が低く、中でも男性高齢者の単身世帯(つまり男性のお年寄り一人身世帯)では、2割近くはエアコン無しと回答しているのが気になる。さらに中堅世帯は76.6%と1/4近くがエアコンなしと回答しており、高齢層よりは体力リスクは低いものの、健康状態が不安視される。

住宅種類別では賃貸住宅、中でも単身世帯での低さが目立つ。賃貸住宅における普及率の低さは、上にある「年収と普及率の正比例関係」と浅からぬ関係があり、「単身世帯」まで合わせて考えると、「賃貸住宅住まい」「一人身の高齢者(特に男性)」といった組み合わせにおける、エアコンなし世帯の比率の高さがイメージされる。

体力の衰えや地域社会との接触の難しさから、特に定年退職後に生活環境が一変する男性高齢者は、室内に閉じこもることが多くなる。そのような環境下でエアコンが無いとなれば、室内での熱中症のリスクが懸念される。さらに万一そのような病症に陥っても、誰にも気が付かれないまま病状が悪化する可能性が高い。

夏に向けて自分自身はもちろんだが、身の回りで熱中症のリスクが高そうに見える人に対しても、十分な配慮が求められよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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