主要国軍事費の推移を政府支出の総額比や人口比率で確認すると
政府支出に占める軍事費の割合、アメリカでは9.5%
国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)では毎年1回、主要国の軍事費動向を報告書の形で分析・公開ししている。またそれとは別に公開可能な範囲での主要国の軍事費動向などを、さまざまな視点で分析した上で開示している。最新の公開値によれば、2014年における各国軍事費でトップはアメリカ合衆国、次いで中国、ロシアの順となっている。
この軍事について、国毎の内情は異なるため、単純な額面比較だけでは問題であるとの指摘もなされている。そこでまずは、それぞれの国の政府支出総額、つまり国家予算に占める軍事費の比率を算出・比較する。
次に示すのは2014年時点における軍事費上位10か国の、それぞれの国の政府支出総額に占める軍事費の割合を計算した結果。例えばアメリカは9.5%だから、国家予算全体の1割近くは軍事費にあてられている。また過去のデータを用い、計上可能な範囲での過去の比率推移を折れ線グラフ化する。
それぞれの国の各年における経済状況や周辺環境にも大きく影響するため、一概にどの程度が望ましい値なのかに関する基準値は無い。一方で経済力に見合わない軍事費負担が国そのものの経済を不安定化させることも事実。安全を望むために保険に多数加入したところ、毎月の保険料で首が回らなくなってしまうようなもの。
同じ軍事費額でも政府支出全体が増加すれば比率は下がる。政府支出総額に対する比率の低下は、単に軍縮・予算不足による削減以外に、経済力の伸張を意味する場合もある。
中東諸国は概して比率が高い。そのためグラフ全体の縦軸の最高値を引き上げる必要が生じる程。それでもかつて示していた約35%と比べ、現在では25.9%にまで落ち着いている。
その他の国ではロシアは幾分増加しているが、大よそ減少傾向にある。中国も総額比率では減少しているが、これは他国とは少々事情が異なり、経済成長による総支出額に軍事費の増加が追い付いていないため。もっともこの1、2年では再び増加の動きを示している。
対人口比を算出すると
国家間比較の話でよく持ち上がる意見の一つが「人口が多ければ国の規模も大きくなるから、大国の数字が大きくなるのは不思議では無い、むしろ当然の話」とするもの。そこでそれぞれの国の軍事費を、各国の人口で除算し、国民一人当たりの軍事費額を算出したのが次のグラフ。
対政府支出総額が大きめなサウジアラビアが、対人口額でも大きな値を示している。他方それにアメリカ合衆国が続いているが、あの人口でもこれだけの高額になるほど、アメリカの軍事費が大きいことがうかがえる。
絶対額では大きな伸びを示す中国やインドだが、人口比では少額にとどまっている。日本は1人頭360ドル。
経年変化を見ると、軍事費の圧縮を続けるアメリカと、円安の影響を受けた日本でこの数年減少傾向が見られるものの、それ以外の国では概して増加傾向にある。人口が急激に増減する事象は生じていないことから、軍事費は大よそ増加傾向にあると見て良い。
なおインドや中国のように多くの人口を抱える国の動向が分かりにくいため、対人口比の額面がどのような変化を示したのか、1989年当時の値と直近の2014年の値を比較し、その増加ぶりを倍数で示したのが次のグラフ。例えばアメリカは1.5とあるので、1989年から2014年にかけて、国民一人あたりの軍事費は1.5倍に増加(50%増し)したことになる。
ロシアがむしろ減少しているのが驚き(現状維持で1.0)。ドイツはほぼ横ばい、日本は1.8倍。インドはやや大きめで3.2倍、サウジアラビアは3.4倍。そして中国は実に15倍近い値を計上している。これもまた、各国の軍事費動向を推し量る上での指針となるに違いない。
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