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日本の防衛費推移を複数の視点で眺めてみる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 装備の調達だけでなく維持にも防衛費は必要(写真は87式偵察警戒車)

日本の防衛費についてはその仕切り分けや金額の見方で多様な意見が交わされている。そこで軍事研究では国際的権威として知られるストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)が認識している値を元に、その動向を確認する。

諸外国における軍事費、日本ならば防衛費に相当する額面は、どの領域までを計上するかについて見解がいくつかに分かれている。日本の場合は単純に防衛費のみを計上するのか、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)の関係費も含めるべきなのか、さらに基地周辺対策費・施設の借料、提供普通財産借上試算、基地交付金、加えて海上保安庁の予算も含めねばならないのかなど、試算の仕切りへの考え方は人それぞれ。SIPRIでは各国の基準に合わせる形で、日本の軍事費=防衛費に関しては、防衛費にSACOを加えた額を相当額としている。

次に示すのはSIPRIが把握している1988年以降の日本の防衛費推移。単純な円による計上に加え、当時の為替レートによって換算された米ドルベースでの推移も加えておく。海外からの調達品が少なからずあることや、諸国との比較においては統一基準となる米ドルが使われることが多いので、ドル換算の推移は一定の意味を有する。合わせて、防衛費の対GDP比率も掲載しておく。

↑ 日本の防衛費推移(SACO含む、暦年)
↑ 日本の防衛費推移(SACO含む、暦年)
↑ 日本の防衛費推移(SACO含む、暦年)(2001年~)
↑ 日本の防衛費推移(SACO含む、暦年)(2001年~)
↑ 軍事費(防衛費)の対GDP比(日本)
↑ 軍事費(防衛費)の対GDP比(日本)

日本円での比較の限りでは20世紀中は漸増、21世紀に入ってからは横ばいから漸増。実質的には前世紀末で頭打ち状態となっている。一方米ドルベースでは為替レートが前政権下においてダイナミックなまでに円高へと振れたことから、大きな底上げ感が生じたものの、為替の適正化に伴いその動きは鎮静化している。昨今では円ベースでは値が引き上げられているものの、ドルベースでは逆に下がる傾向まで生じている。

あくまでもSIPRIが認識した範囲での額面だが、直近の2014年における日本の防衛費は4兆8520億円、米ドル換算では458億ドル。そして対GDP比は0.99%。

無論SIPRIに関するこれまでの記事で繰り返し言及しているが、国の防衛力、軍事力は予算だけで推し量れるものでなく、物差しの一つに過ぎない。装備品の種類や質、実働力、組織力、さらには軍との認識は成されていないものの、実質的に国家権力によって軍事組織同様に運用され、対外圧力として使用されているものも含めて考察する必要がある。そして国土や人口に合わせ軍事力も相応のものが必要となるが、同時に一定量の力を有すればその柔軟的対応力に伴い、実勢力は数字上の値の数倍にも及ぶことになる。

一方で「適正な」軍事関連予算は、国際情勢、特に周辺地域の情勢により大きく変化する。他国の動向と見比べながら、色々と考える必要があるのだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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