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前年比2000円近いマイナス・2015年のサラリーマンこづかい状況

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ サラリーマン諸氏のこづかい額の実情は

若年層が増え、中堅層以降が減少

就労者全体の少なからぬ割合を占めるサラリーマンにおける生活様式は、社会の現状を知る指標の一つとなる。新生銀行が毎年調査発表している「サラリーマンのお小遣い調査」の最新版(2015年4月15日~17日実施)などから、サラリーマンのこづかい状況を確認する。

2015年も含むここ数年の年齢階層別のおこづかい推移は次の通り。

↑ サラリーマンの平均月額こづかい(単位・円)(~2015年)
↑ サラリーマンの平均月額こづかい(単位・円)(~2015年)

全体としては前年の増額傾向から転じて減額、マイナス1930円の3万7642円。調査の限りでは2011年以降はほぼ横ばいを維持し、その中でいくぶんの下げを示したことを受け、1979年の調査開始以降では1982年の3万4100円に次ぐ低い値となった。

金額そのものは20代がもっとも大きく3万8165円、次いで50代の3万7996円、ほぼ同額で30代が3万7696円、そして40代の3万6719円。去年からの増減額では30代のプラス551円、20代のプラス300円がプラス圏、40代のマイナス4451円と50代のマイナス4114円がマイナス圏。下げ幅では40代がもっとも大きいが、この世代は前年ほぼ同額の上昇額を示し、今年はその反動が表れている。一方で50代は前年は800円ほどのプラスでしかなく、それを差し引いても大きな下落。

今年だけでなく数年来続いている傾向だが、20代から50代のサラリーマンでは、給与が一番少ないはずの20代ではなく、30代から40代の中堅層が一番、おこづかいの額面では小さな値を示している。子供がいる世帯が多く、家計内でのやりくり事情が影響していると考えられる。

実際、既婚と未婚で区分すると未婚者の方が平均額は高い。未婚者全体では4万3573円、既婚で子供なし・共働きでも4万1962円、既婚で子供あり・専業主婦では2万7006円にまで額が減る。同時に付き合いも増え半ば強制的な出費もかさむこの世代には、冬の時代が継続中ではある。

昇給傾向と中長期的動向と

次のグラフは直近5年における、各世代の昇給の有無を尋ねたもの。2012年までは給与が減少しても昇給ではないので「なし」の回答項目に含めていたが、2013年からは別個「減少」の項目が設けられている。2012年までは「なし」=”「なし」と「減少」”の合算として見てほしい。

↑ 昇給の有無(2011~2015年)(「減少」は2014年から)
↑ 昇給の有無(2011~2015年)(「減少」は2014年から)

2015年は2014年から続き、昇給があった人の割合は増加。詳細グラフは省略するが、おこづかいがアップした人の約3/4は昇給があった人なのに対し、おこづかいがダウンした人では昇給があった人は2割に届いておらず、減給の人はそれぞれ3%未満・1/4近くとの結果が出ている。こづかいの上下に昇給・減給が多分に影響を与えているようだ。

一方でおこづかいがアップした人は30代では7割近くなのに対し、ダウンした人では4割強に留まっている。こづかいの全体像としては、若年層でいくぶんの昇給に伴うアップがなされ、中堅層以降で横ばい・減給に伴うダウンが発生し、合計では下落が生じたと見ることができる。

なお公開されているデータを元に、毎年のサラリーマンのこづかい状況の推移と、日経平均株価(年末の値、2015年は6月29日終値)をかぶせると次のようなグラフが完成する。

↑ サラリーマン平均こづかい(月額)と日経平均株価(年末または直近)推移(~2015年)
↑ サラリーマン平均こづかい(月額)と日経平均株価(年末または直近)推移(~2015年)

1991年以降のバブル崩壊後においては、こづかい額は日経平均株価に1年から2年遅行する形で連動する動きを示している。これはまさに景気対策・政策の実行と、その成果が民間ベースにまで浸透するタイミングと近いもので、興味深い傾向でもある。

2015年においては前年と比べて株価は上昇した(時系列上では2500円ほどのプラス)、つまり経済そのものが回復あるいはその見通しが見えてきたことになる。一方でこづかい額にはそれが反映されず、上昇の気配が感じられない。こづかい額の上下に大きな影響を与える「昇給有」の率が前年比でプラスは継続しているが、それも全体値への変化を与えるまでには至っていない。

タイミング的には今回調査分は、2014年4月からの消費税率引き上げの影響がフルで生じる初めての年となる。こづかい額の決定の際にも小さからぬ影響が生じているのかもしれない。また公開はされていないものの、今回の各値の直接対象となった男性会社員における正社員と契約社員や派遣社員との間の比率に変化が生じ、それが中堅層以降の金額を大きく下げさせた要因となっている可能性はある。次年以降の値を注視したいところだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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