高齢者自身が考える「支えられるべき高齢者」の境界線
60代は少数派、年齢での判断は不可能との意見も2割
人は歳を経るに連れて各種能力が減退し、近親者、近所の人達、そして社会全体からの直接・間接的な支援が必要な状況になる。それでは高齢者自身は、何歳ぐらいから社会に支えられるべきであると考えているのだろうか。内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」(2014年12月、60歳以上の男女に対し郵送配布・郵送回収形式で実施。有効回答数は3893件)の結果から確認していく。
歳を召した人に対し、何歳ぐらいから支えるべきだと考えているか、選択肢の中から一つ選んでもらった結果が次のグラフ。設問では単に「一般的に支えられるべき高齢者」とのみ説明されており、誰が、どのような組織がなど、また支える内容についても具体的補足は無い。社会全体で、社会全体が通常の成人とは異なるように認識し、さまざまな支援を行うと読み解くのが無難か。
60代から支えられるべきとの人は少数派で、早くとも70代以降が多数意見。70代では4割強とボリュームゾーン、80代まで待つ必要があるとの意見も3割程度。他方、年齢では判断できないとの意見も2割近くに及ぶ。
性別では男性よりも女性の方が、より高齢での支え判定となる。これは自身の状態を見た上での判断が多分に働いているものと考えられる(一般的に女性の方が長生きする)。また回答者の世代別ではきれいな形で、歳を経るほど支えるべき歳の基準が高齢化していく。これもまた、回答者自身の状況を顧みた上での判断だろう。もっとも「年齢では判断できない」は世代や性別の差がほとんど無く、2割前後を維持している。
就業形態別と、単なる「高齢者」の認識と合わせて考えると
続いて回答者の現在における就業状況で仕切り分けをし直したのが次のグラフ。
就業形態別では組織の中で働く業態の人は一様に早めの支え判定を示している。特に正社員では70歳以上・75歳以上の回答が合わせて5割を超え、他の形態から突出した動きを示している。一方、個人ベースでの仕事をしている人は、やや仕切り分けとなる年齢が高くなる傾向にある。一人で仕事をこなしているとの自負が、回答に影響しているのだろう。一方で仕事をしていない人は、役員と同じような動きをしているのが興味深い。
今調査では別項目で、単純な名称としての「高齢者」を何歳から呼ぶべきかとの質問も行っている。そこで単なる「高齢者」、そして今回の「支えられるべき高齢者」双方について、具体的仕切り年齢で回答した人に限り概算平均値を算出し、それを併記したのが次のグラフ。
双方とも男性より女性、回答者自身が歳を経るほど年齢が上がっていく。そして単なる高齢者の呼称対象年齢と、支えられるべき高齢者との差異は、2年から3年の範囲に留まっている。
要は高齢者に属するような年齢に該当する層の考えとしては、「高齢者」の呼称は「社会全体から支えられるような状況、年齢」の一歩手前で、それから2年から3年で社会が支えねばならないような状態になるとの認識なのだろう。また今回の「支えられるべき高齢者」に限定すれば、大よそ70代後半で自分自身が支えられるべき存在であるとの自覚を持つようになる。社会福祉の問題を考査する際には、覚えておいても良い数字といえよう。
■関連記事: