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意外か納得か、小学生までの子供に情報通信端末を利用させるその理由

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ スマホも今や子供にとっては当たり前の「身近な存在」に違いない

今や日常生活上に満ちあふれる存在となったスマホやパソコンなどの情報通信端末。子供を持つ親たちはどのような思惑で、自分の子供をその端末に触れさせているのだろうか。情報通信政策研究所が2015年7月末に発表した「未就学児等のICT利活用に係る保護者の意識に関する調査報告書」(未就学児や小学生の子供を持つ保護者を対象とするウェブアンケートによって2015年3月上旬に実施)から確認していく。

なお今件記事項目は何らかの情報通信端末(スマートフォンやタブレット型端末、ノート・デスクトップパソコン、従来型携帯電話、PHS、通信機能のある家庭用ゲーム機、通信機能のある音楽プレイヤー)を子供が利用している人を該当母集団としている。やや蛇足ではあるが、子供が情報通信端末を利用している回答者は次の通りで、子供の年齢が上になるほど高い値を示している。

↑ 子供が情報通信端末を利用しているか(保護者が使わせている場合も含む)(2015年)
↑ 子供が情報通信端末を利用しているか(保護者が使わせている場合も含む)(2015年)

今回の項目ではこの回答者に限った状況確認となる。

まず最初は保護者がどのような時に、情報通信端末を子供に使わせているかを複数回答で尋ねたもの。

↑ 子供にはどのような時に情報通信端末を使わせているか(2015年、複数回答、情報通信端末を子供に使わせている人限定)
↑ 子供にはどのような時に情報通信端末を使わせているか(2015年、複数回答、情報通信端末を子供に使わせている人限定)

未就学児(ゼロ歳児から6歳児の子供)に対しては、保護者の手が離せない時に与える事例が多く6割近く。具体的には保護者が食事中などの場合を意味する。次いで遊ぶときだが、これは一人遊びの他に、保護者と一緒に、あるいは兄弟姉妹や友達と遊ぶ時が該当する。要は遊具としての利用。続いて外出中、最後に学習してほしい時の順。

これが小学生となると遊ぶ時の場合が7割強となりもっとも高い値を示し、次いで外出中、保護者の手が離せない時となる。未就学児では子守アイテム的な意味合いが強かった、保護者都合が大きかった情報通信端末も、子供の成長と共に自発的な遊びのツールへと立ち位置がシフトしていく。

なおこの類の道具で大義名分として使われることが多い学習ツールとしての利用だが、保護者の観点でも未就学児は13.6%、小学生でも22.3%でしかない。学習は二の次、三の次的な扱いとなっている。

それでは場面で無く、どのような理由で使わせているのか。

↑ 子供に情報通信端末を使わせている理由(2015年、複数回答、情報通信端末を子供に使わせている人限定)
↑ 子供に情報通信端末を使わせている理由(2015年、複数回答、情報通信端末を子供に使わせている人限定)

場面の回答動向で大よそ保護者の思惑がつかめるが、それを裏付ける結果となっている。「保護者の手を離れる時間ができる」「子供の機嫌がよくなる」「端末に子供が触りたがる」は子供が幼い頃ほど高い値を示しているが、「利用をきっかけにしたコミュニケーション」「端末操作を覚えられる」「友達が持っている」などは年上の方が値が高い。

興味深いのは「学習ができる」は子供の歳に関わらず相応の値を示していること。調査報告書に目を通すと、端末に触れさせることで子供の好奇心が底上げされたり、自ら情報を検索する技術を有するようになったり、学習そのものができたとの効果を認める声が、少なからず出ている。それら学習方面でポジティブな結果も、子供の歳と共に増える傾向があることから、それなりの効果は出ているようだ。

もっとも今件はあくまでも保護者の感想でしかなく、「平均点が何点違う」的な数量上の変化では無い。また、最初のグラフにある通り、情報通信端末の子供における利用率はまだ低めで、各年齢階層における全体としての利用・期待率は、実際にはもっと低いものとなる。

今後さらにスマートフォンやタブレット型端末が普及し、子供にさまざまな思惑で利用させることが浸透し、当たり前のような状況となった時、保護者はいかなる思惑を持ち、そして保護者と子供自身のライフスタイルはいかなる変化を遂げるのだろうか。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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