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日中印韓でもっとも好かれているのは日本、好意的意見は7割を超える

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 太平洋・アジア諸国の主要国でもっとも好感度のあるのは……

太平洋・アジア方面で大きな発言力を有する日本や中国、インド、韓国。これらの国々への好感度調査が、アメリカ合衆国の民間調査会社PewResearchCenterによって行われ、同地域や米国からは日本がもっとも好かれていることが分かった。

今調査は2015年3月から4月に対面調査あるいは電話インタビュー形式で各国18歳以上の国民に対して行われたもの。有効回答数は原則一か国につき1000件強、中国のみ約3600件(チベット、上海、香港、マカオはのぞく)。各国それぞれの状況に応じたウェイトバックが行われている。調査そのものはアメリカ合衆国以外は東南アジア諸国に対して行われているが、設問対象の対象国は日本・中国・インド・韓国の4か国となっている。

まずは全体的な好感度。設問は設問対象国をそれぞれ挙げ、その国が好きか嫌いかを大好き・好き・嫌い・大嫌いの4選択肢(それに加えて「分からない」)を提示し、1つを答えてもらったもの。そのうち前者2つを「好き派」とし、後者2つを「嫌い派」と、カウントしている。なお全体的な中央値の算出時には、回答国と対象国が同一の場合、高めの値が出てしまうので除外して計算している。

↑ 全体的な好感度(中央値、該当国はのぞいて算出、2015年春)
↑ 全体的な好感度(中央値、該当国はのぞいて算出、2015年春)

もっとも好感度=好き派が多いのは日本で71%。嫌い派は13%のみ。次いで好感度が高いのは中国で57%だが、嫌い派も33%と4か国の中ではもっとも高く、好き嫌いが分かれている。その次にインドが51%、最後に韓国が47%。

この好き嫌いに関して詳細を確認したのが次のグラフ。青系統は好き派、赤系統は嫌い派でまとめてある。

↑ 日本の事をどう思うか(2015年春)
↑ 日本の事をどう思うか(2015年春)
↑ 中国の事をどう思うか(2015年春)
↑ 中国の事をどう思うか(2015年春)
↑ インドの事をどう思うか(2015年春)
↑ インドの事をどう思うか(2015年春)
↑ 韓国の事をどう思うか(2015年春)
↑ 韓国の事をどう思うか(2015年春)

まず日本に対する心境。中国や韓国、特に中国からの嫌悪感の強さが一目瞭然。他方インドやパキスタンは日本との距離感もあり、感情的には留保の意見が4割近くを占めている。それ以外は大よそ好感的。赤系統の色も少なめ。

続いて中国に対する感情。自尊心の強さが強く現れている。完全否定派がゼロ、単なる嫌い派も3%でしかない。また歴史的背景を受けて親中国のパキスタンやマレーシアでも高めの値。他は大よそ中庸だが、アメリカ合衆国やインドでは両国間の関係悪化を反映したような低めの値。そして何よりも日本とベトナムが大いに強い反発を示している。中でも日本の嫌悪感はひときわ高く、好感触を有している人は1割にも満たない。調査対象国ではもっとも中国を嫌っている国となる。

インドは中国同様に、自尊心が極めて強い。大好き派だけで8割を超えており、むしろ中国以上。それ以外は歴史的背景から対立状態にある中国やパキスタンからの嫌悪感が強いが、それ以外は中庸からやや良好といった程度。

最後に韓国。中国ほどではないが日本からの嫌悪感は強め。嫌い派の値は調査対象国でもっとも多い。好き派の値はパキスタンの方が少ないが、同国では2/3近くが「分からない・無回答」で占められており、要は「良く知らない」状況。似たようなパターンはインドやインドネシアでも確認できる。

これをシンプル化した上で、調査対象国毎に日中印韓4か国への好感度=好き派を算出したのが次のグラフ。

↑ 主要国の4か国に対する好感度(2015年春)
↑ 主要国の4か国に対する好感度(2015年春)

今グラフでは各国の、4か国に対する思惑の違いが見えてきて興味深い。アメリカは中国を嫌がり、それ以外には相応の好感触を抱いているし、オーストラリアは日本へとびきりの好意を有している。インドネシアもオーストラリアに近い。他方、マレーシアの日本への好意はひときわ高いが、中国への想いも同じ程度となっている。多方面の好意的外交との観点では、対象4か国に限れば、インドネシアやオーストラリア、フィリピン、マレーシアなどが該当するだろうか。

対日共同戦線を張っているように見える中国と韓国だが、それぞれの国の日本への好意度は最低レベルだが、韓国が中国に6割超の好意を示しているのに対し、中国による韓国へ好意は5割にも届いておらず、一方方向の恋心的な感もある。

今件はあくまでも民間ベースの感情論の話で、国家レベルでの政策とはまた別のもの。他方、国民感情がその国のかじ取りに影響を与えることは多々あり、また逆に決定された政策が国民感情に変化をもたらすことは少なくないことから、今件の値が実情、国家間の関係に無関係とは言い難い。何らかの形で参考になる、納得ができる事案に遭遇することも多いはずだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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