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若者自身に聞いた「投票率を上げる秘策」トップはネット投票

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 若者の選挙離れは「たかが自分の一票ぐらいで」と考える人が多いからなのか……

若者の選挙離れが懸念される中、さまざまな施策による投票率のアップが模索されている。それでは若者自身の視点では、いかなる切り口ならば投票率が上がると考えているのだろうか。連合が2015年8月に発表した、若者の関心と政治や選挙に対する意識に関する調査(インターネット経由、有効回答数1000件、男女比1対1、15歳~23歳対象)の結果から確認していく。

昨今の日本では国政選挙・地方選挙を問わず、若年層ほど低く、高齢層ほど高い投票率を示しているのはご承知の通り。投票行動に必要となる時間に対するウェイトの違いだけでなく、投票行動への認識、政治参加への諦め度合の違いが具体的数字となって表れているとの解釈もある。

↑ 第47回衆議院総選挙・年齢階層別投票状況(概算総数、万人)(性別・年齢階層別有権者数と投票数、投票状況調査地区における結果)
↑ 第47回衆議院総選挙・年齢階層別投票状況(概算総数、万人)(性別・年齢階層別有権者数と投票数、投票状況調査地区における結果)

それでは若年層はどのような施策が実現すれば、若者自身の投票率が上がると考えているのだろうか。質問文は「選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか」となっており、回答者自身の意見か、それとも若年層全体としての状況を考えてもらったのかまでの判断はできないものの、多分に回答者自身の意見が反映されているものと考えて良い。

↑ 選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか(複数回答、2015年7月、15~23歳)
↑ 選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか(複数回答、2015年7月、15~23歳)

群を抜く形で上位にあるのは「インターネットで投票ができたら」で54.6%。すでにインターネット上での選挙活動は事実上解禁されているが、インターネットを用いた投票そのものはまだ不可能。確定申告や先日の国勢調査のように、公的機関が絡んだ提出活動でもインターネット経由で可能な事例が増えていることもあり、期待はさらに高まりを見せている。

次いで高い値を示したのは「もっと候補者の比較がしやすければ」で26.7%。「もっと政治について知れる・学べる機会があれば」の25.7%が続いている。インターネットによる選挙活動が解禁されて以降、さまざまなサービスが展開され、これらの需要に応える情報・機能提供を行っているが、まだまだ望みのレベルには達していないようだ。もっとも候補者の「比較」に関しては、家電製品や食品などのように、単純に数字化して比較できる要素が少ないこともあり、比較機能を提供する際の工夫が難しいのも事実(ゲームのように内部的な数字パラメータがあるわけでは無い。また数量化できる面のみでの判断はリスクが高い)。

候補者を選びにくい、自分が投票すべき候補者が見つからないとの視点で選択肢を見直すと、「もっと候補者の比較がしやすければ」以外に「もっと候補者を知れる機会があれば」「もっと自分と似た考えの候補者が見つけやすければ」なども事実上は同じ趣旨と見ても良い。

選挙の現状、制度に不満を持つ人も少なからずいる。「インターネットで投票ができれば」以外」でも「期日前投票が今よりも簡単にできたら」「一票の格差が改善されたら」「出先で投票ができたら」「深夜や早朝などの投票が今よりも簡単にできたら」などがそこそこの同意率を示している。

選挙制度そのものの大変革が前提となるが、選択肢には「マイナス一票など、落選させたい候補者が選べたら」も確認できる。こちらの同意率は15.0%。少なくとも現状では落選行動的な意図に同意を示す人はさほど多くは無い。

これを回答者の立ち位置別で仕切り分けしたのが次のグラフ。

↑ 選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか(複数回答、2015年7月、15~23歳)(学校種類別)
↑ 選挙がどのように変わったら「投票しよう」と思う気持ちが(今よりも)強くなると思うか(複数回答、2015年7月、15~23歳)(学校種類別)

大学生の意欲高さが見受けられる一方、一票の格差是正や候補者を知る機会の増加、自分と似た考えの候補者が容易に検索できるようになるなど、複数項目で高校生が最多回答率を示している項目も確認できる。8月の公職選挙法改正により、今後の選挙で投票権を得る年齢の下限が20歳から18歳に引き下げられることで新たに生じる「高校生の有権者」が、どのような政治的関心を抱いているか、投票の際に何を求めているかが透けて見えるようでもある。

若年層、特に新たな有権者となる18歳・19歳の人達に対し、どのような施策を打てば投票率を高めることができるか。今からその需要を探る必要は極めて高い。今件調査からはその一端を垣間見ることができるに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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