「年金だけでは日常生活もまかなえない」は6割近く…年金への考え方の実態
「年金だけでは日常生活もキビシイ」5割強
加速度的な高齢化が進むにつれ、社会保障制度の一つである年金問題がクローズアップされている。受給時期にまで歳を重ねた際、支給される年金の額で日常生活をまかなうことはできるのか否か、足りないと考えている場合、その理由はどこにあるのか。金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年調査・結果の公開を行っている、家計の金融行動に関する世論調査の公開データをもとに、年金に関する心境の現状と経年推移について見ていくことにする。
まずは年金支給額について、その額(公的年金に加えて企業年金も含め、個人年金は除く。以下同)だけで老後の生活を営めるか否かを尋ねた結果が次のグラフ。単身世帯と二人以上世帯でそれぞれ区分して集計してある。
二人以上世帯で2001年に大きな変化が生じているが、これは同年から「日常生活費程度もまかなうのが難しい」の選択肢部分を変更したため。元々はより緩やかな生活をイメージさせる「年金だけではゆとりがない」だったため(「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」とまぎらわしいのが変更の理由だろう)、表現の変更により回答率に変化が生じる次第となった。
経年動向を見ると、意外にも昔から直近まで、年金と老後生活の金銭的な関係において、考え方に大きな差は生じていないことが分かる。あえていえば二人以上世帯では「不自由なく暮らせる」が微減、単身世帯では微増しているぐらいが、中長期的な変化といえるだろうか。少なくとも今調査に限れば、公的年金受給額に関する心境は、昨日今日に騒がれ始まった問題ではないことが分かる。
強い懸念の「受給開始年数の引上げ」
公的年金などだけで老後の生活をまかなえるか否かについて、「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」「日常生活費程度もまかなうのが難しい」、要は「ゆとりが無い」とする回答者に、なぜ「ゆとりがない」と考えているのか、その理由を選択肢の中から2つまで選んでもらった。その結果の直近年分及び推移をグラフ化したのが次の図となる。
まず直近年分。いずれの具体的項目でも単身世帯は二人以上世帯よりも回答値が高い。「2つまでの複数回答」であり単純な複数回答では無い以上、すべての回答者が2つの回答をしていれば、どちらかの種類世帯のみが多いことは生じ得ないのだが、実際にはこのような形になった。
回答数平均値を見ても、単身世帯では1.77個なのに対し、二人以上世帯では1.52個に留まっている。それだけ単身世帯の方が、ゆとりが無い世帯における不安要素が多岐に渡っていることになる。もっとも理由の順位に差異はほとんど無く、悩みの中身は大きな違いは無い。両種類世帯とも、最大の要因は「年金が支給される金額が引下げられる」とするもの。
経年変化でも、単身・二人以上世帯共に「支給金額の減額」を懸念する声がもっとも大きいことに違いは無い。また、以前は「高齢者への医療費用の個人負担が増える」ことを心配する人が多かったが、少しずつ減少。それに代わる形で「年金支給年齢の引上げ」を心配する意見が増加している(ただし単身世帯では2011年をピークとしてそれ以降は漸減し、代わりに介護費用の個人負担増加懸念が漸増している)。
このグラフ、状況の推移動向からは、「いくらもらえるか」「いつからもらえるか」この2点における懸念が、年金生活における不安を底上げしている現状がつかみ取れる。現実問題として支給金額の減額や、支給開始年齢の引上げが起きていることから、それらへの心配が増すのも道理ではある。
なお今件調査は「2つまでの複数回答」であり、値が低い要件に関する懸念が無いわけでは無い。例えば医療費用の負担増加に対する回答率は減少しているが、それらに対する懸念が鎮静化しつつあるのではなく、相対的に優先順位が下がっているだけの話でしかない。そのことに注意する必要はある。
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