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20代が求める結婚と出産に関する年収水準

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 相手が居なければとの問題はさておき、経済面も大きな要素となる結婚

「年収500万円で結婚」は2/3

結婚しない、あるいは結婚しても子供をもうけない若年層が増えているとの指摘がある。大きな理由の一つとして挙げられるのが可処分所得の減少。では世帯年収でどれほどの額面が確保できれば、結婚や出産を考えるようになるだろうか。SMBCコンシューマーファイナンスが2015年12月に発表した20代男女に対する調査「20代の金銭感覚についての意識調査2015」の結果から、その実情を確認していく。

なお今件における「年収」の定義は特に設問中で説明がされていないため、世間一般に認識されている通り、手取り(所得)では無くサラリーマンなどなら天引きされている税金や社会保険料を含めた金額を意味するものとする。また、世帯主年収ではなく、世帯年収であることに注意。回答者が世帯持ちだった場合、配偶者の収入も合わせて計上される。

まずは年収(収入総額。税金や社会保険料込みの値)でいくらぐらいあれば、結婚や出産・子育てを考えるだろうかについて。次に示すのは択一で答えてもらった「年収がこれぐらいなら結婚を考えても良い」とする額。棒グラフはそれぞれの回答率、折れ線グラフは累積回答率。後者はその額面なら結局どれだけの人が考えるかとするもので、例えば「300万円」と答えた人そのものは15.0%しかいないが、「年収300万円を提示されれば結婚をしようと考える人」の総計は「300万円」回答者以外に「200万円」「年収問わず」も含まれるため、累計の33.4%となる。

↑ しようと思える世帯年収は(結婚、円)(2015年)
↑ しようと思える世帯年収は(結婚、円)(2015年)

具体的金額区分別回答率では400万円と500万円がほぼ横並び。300万円がそれに続く。この「300万円から500万円」の層で46.7%に達することになる。

一方累積回答率では、500万円で66.7%に達している。相手の存在も含め、結婚ができる否かは他の条件も多分に絡んでくるのだが、年収だけで勘案すれば、500万円が確保できれば2/3が結婚を検討する。600万円・74.5%がほぼ上昇のピークで、あとは上昇率は非常に穏やかなものとなる。また年収がいくら上がっても結婚したいとは思わない人も1割強存在する。

子育て一人、そして二人

結婚に続いて出産・子育て。結婚以上に金銭的な負担も大きくなり、しかも出産前後に女性は就業できなくなることに加え、子供が成長するに連れて養育費など出費もかさむため、年収に関しても慎重な値が示されるようになる。当然、子供の数が多い方が、世帯年収のハードルは上がる。

↑ しようと思える世帯年収は(出産・子育て1人、円)(2015年)
↑ しようと思える世帯年収は(出産・子育て1人、円)(2015年)
↑ しようと思える世帯年収は(出産・子育て2人、円)(2015年)
↑ しようと思える世帯年収は(出産・子育て2人、円)(2015年)

カーブの上昇具合が1人の場合は500万円前後まで急勾配なのに対し、2人の方は緩やかなまま。子育て2人の方が年収の上での試算で一層慎重になっている結果といえる。さらに2人の方が「したいと思えない」が多く、「年収問わずにしたい」が少ないことも、人数が増えることによる金銭負担の上昇ぶりへの懸念が見て取れる。

結婚における累積回答率2/3超えは年収500万円。同じように2/3を出産・子育てで得ようとすると、1人の場合は600万円(0.1%ポイント足りないが)、2人の場合は900万円となる。年収ベースで300万円の上乗せがないと、若年層への追加の子供育成期待は難しそうだ。

余談となるが、結婚、子育て1人・子育て2人それぞれの累積回答率をまとめたのが次のグラフ。

↑ 世帯年収と結婚、出産・子育ての動機づけの関係(累積)(2015年)
↑ 世帯年収と結婚、出産・子育ての動機づけの関係(累積)(2015年)

結婚と出産・子育て1人との間には年収100万円、1人と2人との間には100万円から200万円ほどの差異が生じている。もっとも1000万円以上となると差異はあまり無くなる。

同一調査対象母集団における自動車所有の2/3の目安となる年収は500万円との結果が出ている。その年収では結婚7割強、子供1人が6割近く、2人は1/3強となる。まずは20代世代における年収500万円が果たせるよう、若年層の結婚や子供に関して憂いている方面は施策を練ってみてはいかがだろうか。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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