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転職先は正規、それとも非正規? 転職者の就業状況

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 転職先の選択もまた個人の人生を大きく左右する。その就業形態は

自発的離職を余儀なくされる場合以外に、リストラの対象になる、定年退職や早期退職制度を活用して職を辞する、あるいは他企業からの引き抜きにあうなど、さまざまな理由で現職から離れ、新たな職に就くことを転職と呼んでいる。転職者の中には正社員だったものが再就職の中で非正規社員としてしか再就職できない場合や、逆に非正(規)社員から正社員への転職を果たす人もおり、雇用形態上の観点でも多様な人生の躍動感を垣間見ることができる。今回は総務省統計局が2016年2月に発表した、2015年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果を基に、直近1年間に離職して新たな職についた人における、正規・非正規の雇用形態況の変化の確認をしていく。

次に示すのは前職を辞してから1年以内に再就職を果たした人のうち、雇用形態、具体的には正規社員と非正規社員の地位の変化を踏まえ、その動きを示したもの。参考までに前年の動向(全体値のみ)も併記しておく。

↑ 転職者移動状況(2015年、万人)(過去1年間限定)
↑ 転職者移動状況(2015年、万人)(過去1年間限定)
↑ 転職者移動状況(2015年、万人)(過去1年間限定)(男性)
↑ 転職者移動状況(2015年、万人)(過去1年間限定)(男性)
↑ 転職者移動状況(2015年、万人)(過去1年間限定)(女性)
↑ 転職者移動状況(2015年、万人)(過去1年間限定)(女性)
↑ (参考)転職者移動状況(2014年、万人)(過去1年間限定)
↑ (参考)転職者移動状況(2014年、万人)(過去1年間限定)

2015年に転職をした人(役員以外、過去1年間に前職を辞した人。以下同)は270万人。そのうち正規社員だったのを辞した人は109万人、非正規は161万人(転職をしていない人もいるので、辞めた人が270万人では無い)。元正規社員で再び正規社員になれた人は68万人だが、残りの41万人は非正規社員として再就職している。一方非正規社員だった161万人のうち正社員になれた人は34万人で、残りの127万人は再び非正規社員の地位で再就職している。例えばスーパーでパートをしている女性がもう少し良い条件で働ける別のスーパーに転職する場合など、一概に非正規社員の地位が正規社員よりも望まれていないとは限らないが、非正規社員の人が転職をする場合も、正規社員になれる可能性は(人数的に)少数の事例となることが分かる。

男女別に確認すると、男性の正規から非正規組が、非正規から正規組を上回っているのに対し、女性では逆転現象が起きている。これは多分に男性では定年退職や早期退職者(壮齢・高齢層の離職者)が非正規として再雇用されるケースが多いこと、女性は雇用市場の改善に伴い人材確保のための待遇改善の一環として正規雇用化された、正規雇用として他の職場で雇用された例が多数に登るものと考えられる。

この転職における正規・非正規の雇用状況の移転について、正規社員から非正規社員、非正規社員から正規社員、つまり就業状況の変化が生じた人に限り、さらに男女別に動向を経年変化で見たのが次のグラフ。

↑ 正規・非正規間を移動した転職者の推移(万人、2008年-2015年)(過去1年間)
↑ 正規・非正規間を移動した転職者の推移(万人、2008年-2015年)(過去1年間)

大よそ非正規社員は女性の方が圧倒的に多く、求人も非正規社員の職は女性が適している場合が多いこともあり、非正規社員から正規社員になれた人の数は男性よりも女性の方が多い。逆に正社員の数は男性の方が多いことから、正社員から非正規社員となる人の数は男性の方が多くなる。一方、2013年、そして直近の2015年において男性の正規社員から非正規社員への転職者が急増しているが、これは55~64歳の正規社員が早期退職・定年退職などで退職し、非正規社員として再就職した事例が少なくない。

かつては専門誌やテレビCMなどで盛んに「転職で収入アップ」などのキャッチコピーを用いてで喧伝し、転職を推し進める動きがあった。しかし最近ではそのような動きはあまり見られない。

ここ数年は男女ともに非正規から正規に転職がかなう事例が増加している。それが元々本人の希望によるものであれば、喜ばしい話には違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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